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32話 耽る



それからその日は継人との接点はとくになくクラブ見学は終わった

帰り道わたしたちは高校見学についていろいろ話し合った

ユミはことのほか県立神城南ここのことが気に入ったみたいで 勉強がんばる!と言ってたのが印象的だった

サッチも仲良しみんなで同じ高校に行きたいと言ってたけど 正直勉強ができるサッチにはもったいない気もした まだまだこの時代は親が圧倒的に強い

その反動なのか わたしたちの世代では周りも子どもの意見を尊重するってなってきてたっけ…

あ、いけない、また一人で考え込んじゃってる

それでもやっぱり…考えちゃうよね…



その夜家族揃っての夕飯の際にわたしは進学校について話した もちろん県立神城南けんなん

両親は揃って『がんばれ』と応援してくれ晴れてわたしは県立神城南けんなんを目指すこととなった

ここまではなんだかんだ順調に来てるはず…

お味噌汁を飲みながらわたしは一人頷いた


夕飯が終わってテレビを囲み家族の団欒タイム

テレビも居間に1台しかなく未来のように一人に1台なんてまだまだ先な時代

まだテレビがコミュニケーションツールの役割の中心だった

テレビを観ながら笑う両親に合わせるようわたしも笑う… 正直懐かしくはあってもおもしろいとは思えなかった 自分が歳を取ってるからなのだろうか…

この時わたしは初めて孤独を感じた

全てわたしの知ってる世界、両親や友だち、なにもかも知ってる世界に居ても、孤独を感じる

自然と涙が出ちゃうのを 笑いすぎて出た涙と偽った


きっとこの先もこうして孤独を感じることはあるのかもしれない まだまだわたしの知らない感情を味わうことだってあるかもしれない

わたしは都度それらを一人で乗り越えなきゃいけないんだ そう思うとなぜだかまた涙が出た


部屋に戻りわたしは子どもや孫たちの似顔絵を描いた

思い出せるだけ思い出して、下手でもわたしなりに納得できるだけの絵を描いた

何時間費やしたかわからないけど、完成した似顔絵をわたしは勉強机のデスクマットの下に入れた

透明のデスクマット越しに見える似顔絵はきっとわたしに勇気をくれる… そう信じた

だってホントはわたしは一人じゃないんだから…

未来にも現在いまにもわたしの愛すべき人達がいるんだから




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