3話 運魂?
ー かしこまりました 美紗緒さま…
美紗緒さまは2025年10月02日に享年61歳でその人生を終えました ここ最近の傾向ですと少しお早く感じます
へぇ、わたしが死んだのって10月02日だったんだ
二週間くらい入院してたのね…わかんなかった…
わたしも早いって思うけど 病気だったからね、
なにも死にたくて死んだわけじゃないし
ー 実のところ、美紗緒さまはわたしが運ぶ魂の一億魂目になりました!!
あぁ、わたしのこの状態は〈魂〉なんだ…
そっか、なんか納得…
ー つきましては わたしの運魂一億魂記念に美紗緒さまの望みを叶えてさしあげようと思いまして… なにがお望みでしょうか?
え? いきなりなに? この展開?? そんなのすぐに思いつくハズもないし… そもそも望みってなに? 美味しいもん食べたいとか魂の状態じゃ意味ないし!
今のこの状態で望みもなんもないよ?
まあ、心残りならあるけど…
孫の智くん… ううん智くんだけじゃない、孫たちの成長をもう少し見たかった
わたしのこと大好きって言ってくれた智くん…
まだ小さな みゆちゃん、りんちゃんたち
夫や子どもだって気になるけど もうそれぞれ大人なんだし 自分たちでがんばれるだろうけど…
孫たちはね…
ー なるほど、そういうことでございますか…
かしこまりました もちろん叶えることは可能ですが…
わたしが天使に話しかけようが思っていようが関係ないのね… なんもかんも筒抜けなんだ 魂ってそういうもんなのね…
(孫に会わせてくれるの? どうやって?)
ー お孫さんが誕生するのに最低限必要な分岐点までお連れすることができます そこで美紗緒さまの努力でお孫さんたちと再会することが可能になります
わたしの努力で‥‥‥? どういうことだろ
ー はい、さようでございます いかがなされますか?
もう一度あのかわいらしさを愛でれるのならどんな努力も惜しまない!
(それって孫を見るだけじゃなく 抱っこしたり、抱きしめたりもできるの?)
ー もちろんでございます
だったら断る理由はわたしにあるわけなかった!
智くん、みゆちゃんたち、おばあちゃんはあなた達を抱きしめるためならなんだってやるぞ!!
(でも 孫たちを抱きしめられる肉体がないよ…)
ー もちろん肉体は必要です ちゃんと美紗緒さまの肉体はございます ご安心を
まあ なんか考えてんでしょ… 天使なんだし
でも生き返ったりしたらなんか怖くない?
あんなにみんな泣いてお別れしたのに… お医者さんもびっくりするだろうな…
なんて言って生き返ろうかな‥‥?
『ただいまー!』とか、『うそだよーん!』とか?
どっちにしてもびっくりさせちゃうだろうな…
ー なにを考えてるのか知りませんが美紗緒さまが想像しているような事態にはなりませんのでご安心を
(だったら迷いはないわ! かわいい孫たちをもう一度抱きしめられるなら一億魂目の特典甘んじて受けます!!)
ー かしこまりました それではわたしが運ぶ魂の一億魂目の記念特典としての美紗緒さまのお望み、しかと承りました!!
なにがどうなってるのかわからなかったけど おそらくわたしはついていたってことだろう
天使がわたしなんかを担ぐとは到底思えなかったし わたしなんかを担いだところで無意味だ
あとは どういった手段か?ってことだった
ー そちらにつきましては先程も申し上げましたように お孫さんたちが誕生するのに最低限必要な分岐点まで美紗緒さまをお連れ致します
いまいち意味がわからないんだよね、大丈夫かな? この天使…?
ー きっと経験のないことなので意味がわからなくても当然です 目が覚めた時点で全てを把握することになるでしょう
話しかけていようが思っていようが筒抜けなの本当にめんどくさい… って思っているこれも筒抜けなんだよね…
ー ただし、いくつか注意点があります これを守られない場合は お孫さん達にに会えないだけではなく 人類の未来に関わる恐れがありますのでご注意ください
ちょっと…もっと意味わからないこと言ってるよ…
孫に会いたいからちょちょいって生き返らせくれるだけじゃないの?
ー そんな簡単なわけありません 物事には順序ってものがございます 美紗緒さまが気づいていようがいまいが美紗緒さまの人生が他人の人生に影響を与えている場合も多々あるのです
美紗緒さまの望みを叶えるにあたってきっちりと認識してもらわないといけない点がございます
だったら早くそれを言いなさいよ! わたしはさっきも言ったように孫ちゃんたちに会うためには迷いはないんだって!
ー わかりました それではまずご確認を…
美紗緒さまはお孫さんたちにもう一度会いたい、抱きしめたい、と言うお望みでお間違いないでしょうか?
(間違いない! 間違いない!! 何度も言ってるでしょ!)
ー これからわたしが美紗緒さまをお連れするのは お孫さんたちが誕生するのに最低限必要な分岐点までです そこから美紗緒さまはお孫さんたちに会うために生きて行ってもらうわけですが、ここで更に大切な注意点がございます…
もうめちゃくちゃめんどくさく感じてきた…
どんな試練があってもかわいい智くんたちに会えるんだからがんばるって言ってんじゃん!
あ、でも試練って痛いのとか苦しいのとかは困るんだけど…
ー 大丈夫です、痛みは伴いません 肉体的には…
なにを考えても筒抜けってのは説明しなくていいのは楽だけど なんかやりにくいな
(で? その注意点は?)
ー 美紗緒さまが本来の望みを叶えようとしない行動に出てしまった場合に少々やっかいなことになります
ん? どう言うことなんだろ…?
ー つまり、お孫さんが誕生しない世界線へと導こうとした時のことです そうなってしまいますと世界の秩序が崩壊するだけでなく お孫さんたちもお生まれにならないことになってしまいます
それはない、いったいどういうことなのかわからないけどそんなことあり得ないし、あってほしくない!
(具体的にどうすればいいのか教えてくれないの? あれしちゃだめ、これしちゃだめ!とか?)
ー それはわたくしからは申し上げることはできません… 望みを叶えるためのルールですから… 美紗緒さまはご自身で考え、行動することが求められます
ほんと、なにさせられるんだろ…? 痛くないって言ってるからそれだけは信じておこう
ー それともう一つ…
まだあるの…?