29話 クラブ体験
「じゃあ 部室へ移動しまーす!! 僕について来てくださいねー!」
文芸部の部員とおぼしき男子が右手を高くあげてアピールをする ぞろぞろとその後に着いていくわたしたち 2つ3つしか年齢変わらないのに当時は随分お兄さんに見えてたのを思い出す…
今のわたしからしたら子どもみたいなもんだったけど…
久しぶりでもカラダが覚えてる感覚…
こっちの世界に戻ってきてから幾度となく経験してるんで なんとなく慣れてきてた
ピロティから部室に向かう順路も全部思い出せる
「はーい、ここが『文芸部』の部室になります! 中に入って展示物等ゆっくりご覧になってください」
見学に来てる中学生が次々と部室の中へ入る
中には文芸部在籍の部員の作品がところ狭しと並べられたり掲示されていたりする
詩や短歌、俳句に私小説、イラストやマンガまで
みんな楽しそうに創作活動に勤しんでるのが伺えた
部員とおぼしき人たちは壁際に並んでわたし達を迎えてくれていた
しばらく展示された文芸部部員の作品を見ていると、
「じゃあせっかくなんで空いてる席に座って なにか一つでも作品を作ってみてくださーい!」
わたしはユミとサッチと固まって手近な席に座った
机には真っ白い紙とエンピツが置いてある
「ねぇねぇなにするの? わたしこんなの苦手なんだけど…」
キョロキョロしながらサッチが話す
「詩とか川柳でも言いじゃん! わたしはせっかくだし絵を描こうーっと!」
ユミは前向きに楽しんでた 元々絵を描くのが好きだったしね
わたしも取り敢えず文字を書くよりは絵を描く派だ
とは言えマンガみたいな絵なんだけどね
小学生の頃はみんなに『描いて!描いて!』とちやほやされた記憶もある
こう見えても昔描いてた絵ってのは案外描けるもんなのよ、と悩むサッチを横目にエンピツを走らせてた




