20話 坂道より
チラチラと足下と坂の上を交互に見ながら上ってく
もう三分の二くらいまで上って来たかなって時に…
それは起こった!!
ー カラカラカラッ!!!
聞こえてきた音にふと顔を上げる
視界には坂の上からカラカラと音を立てながらベビーカーが降りてくるのが見えたっ!
えっ!? その後ろには異変に気づいてまさにこの瞬間ベビーカーを追いかけようとしている母親らしき人影!!
とっさにわたしのカラダは動いてた!
ベビーカーに向かって走り出し そのスピードが乗り切る前にベビーカーを止めることができた!!
ベビーカーの中を見ると何事もなかったかのようにスヤスヤと眠っている赤ちゃん…
なんてかわいいんだろう… いま置かれた状況を忘れ、その見覚えのある無垢な表情にキュンとなる
交通量が段々と増え始める時間帯の坂の下の幹線道路に目をやりホッと胸を撫でおろす
やはり中学生のカラダの反応力は大したものだと感心したし、わたし自身の判断力にも満足した
母親は泣きながらわたしにお礼を言っていたけど、わたしは 何事もなくて良かったです、とだけ母親に伝えるとその場を立ち去った
あんなかわいい赤ちゃんになにかあるなんて考えたくもなかった… と同時にその赤ちゃんに孫ちゃんたちを重ねていたのかもしれない
ん?待てよ?あまりに昔のことなので忘れてたけど、確かこんなこと以前にもあったような気がする
わたしもベビーカーに娘を乗せて継人と散歩に行ったときにさっきみたいなこと話してたことあったっけ⋯
そっか、それって中2の時だったんだ…
出来事は覚えていたとしても年齢や時期なんてハッキリとは覚えていないもんだと理解した
坂を上っての帰り道、家に着くまでさっきのわたしの行動の大胆さと、起きてた出来事の大きさに今さらながらドキドキしていた…




