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15話 友だち ユミ



坂を下って幹線道路の信号を渡ると中学校へと続く上り坂が始まる

住宅街を抜けたこの幹線道路沿いがこの辺りでは一番賑やかだ

チラホラと通学途中の学生の姿も見える

たくさんの学生の姿を見てるとさっきの不安、つまり名前問題が頭によぎる

とりあえずは名札を確認することと、ここに来るまでに必死で思い出して数人は名前を思い出せたけど、それでも顔と一致するかといったら未知数だ…

そりゃそうだ、わたしにとって40年以上も前の記憶になるんだから… それでもなんとかなるって自身はあった これからなにが起こるかわかんないんだし それらに比べたら大した問題じゃないはずだ!


「ほら、青なってるよ? 渡らんの?」


はっ!! サッチに言われて信号が青に変わってたのに気づいた いつの間にか考えこんじゃってた…


「あ、ごめんごめん! ボーッとしてた…」


一歩出遅れたことで走って横断歩道を渡ることになった サッチはわたしより足が速くひょいひょいと先に渡っていった


「ミサぁーーーー!! おはよー!!」


横断歩道を渡りきった辺りでまた声をかけられた

声のする方を見たわたしは思わずほくそ笑んだ

だって、知ってる! この子は知ってる!!

なんなら一番会いたかった子だから!!


「おはよ~!! ユミーーー!!」


手を振りながらこっちへ走って来る彼女は

竹井たけい由美ゆみ』…通称『ユミ』だ

わたしが覚えていて当然と言えるくらい大の仲良しだ

ユミとはこの後高校まで同じだった

中高を通じて一番の仲良しだったとも言える!

なんなら、その後も大切な友人だ!


「サッチもおはよ!」


「なーによ、ミサのおまけみたいにー」


アハハッ!! そうだ、いつもこんな感じで通学してた! だからこの坂道も苦にならなかったんだ

中学校に入った頃は毎朝この坂道に苦しめられた

小学校の時の友だちもいたにはいたけど、朝一緒にってなると中々都合が合わなかった

だけど、ユミと友だちになると世界が変わった!

おしゃべりなユミはいろんな話しをしてくれて、おかげでわたしは朝の登校の時間さえも楽しく過ごせてた


「ユミ聞いてー? ミサったら体操服忘れてんだよー」


「えー!? かわいそー!! どーすんの?」


早速盛り上がる会話! 『三人寄ればなんとやら…』とはよく言ったもんだと思う

話題の中心はわたしの忘れ物だったけど楽しく話してるうちにあっという間に学校へ着いた

あんなに憂鬱だった坂道も歩いて上って来たなんて信じられなかった


わたしは二人に「トイレー」といってその場を離れてそのまま保健室へと直行した

案の定体操服の予備は置かれていて、ちゃんと理由を説明することで借りることができた

きちんと洗濯するようにと釘を刺されはしたけど、そのくらい『いのせん』の罰に比べると どーってことないと思った


懐かしい校舎… 懐かしい顔ぶれ… 

あっという間に感じた中学での3年間…

楽しかった思い出だけが甦ってくるかのようだ

ほんとはきっとやなこともあったはずなんだけど、それでもやっぱり思い出しちゃうのは楽しかった思い出だけだった


これから始まる2度目の人生?

不安よりも、もしかしたらわたし『わくわく』しているのかもしれない⋯





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