119話 聞きたかったこと
いまの状況ってあなたから見てどうなの? 結構過去と違ってるとこもあると思うんだけど?
ー どう、とは?
このままじゃ過去の世界に繋がらないとか、そういうこと!
ー それに関してはまだどうとも言えません
どういうこと? そこも話せないってこと?
ー そうではありません、ただ… ただ、まだ美紗緒さまは大切なお方との関係が進展しておりませんので…
(なるほど、そういうことか… わたしが継人と一緒になるってことは最重要課題ってことで間違いないわけだ…)
ー そういうことになります
(ほら、またそうやって心の中読む…)
つまり、そこは絶対外せないってことだよね?
ー そういうことになります
(そりゃそっか、継人と結婚しなきゃなんにも始まらないんだから…)
と、言うことはここまでの状況は許容範囲と思ってもいいってこと?
ー なに基準で考えるか?と言うことになりますが、今のところ許容範囲でございます
ただ…
ん? ただ?
ー 今日わたくしがこうして美紗緒さまの前に表れたのは、ほんの少し忠告までにと思ったからでして
(あぁ、きっと土井くんのことね…)
ー はい、察しがいい… そのルートを選ぶことはないとは思いますがほんの少しでも頭をよぎったのであれば、と思いまして
(結構わたしのこと気にしてくれてるんだ? ってかいちいち見てるってこと?)
ー わたしにも今回の件、つまり美紗緒さまの望みを叶える件につきましても やはり責任と言うものがございますので…
まぁ天使の責任がなんなのか知らないけど、心配されるようなことにはならないから…
わたしには なにがあっても孫ちゃん達に会うって望みがあるんだからっ!!
ー 人とは遷ろいやすい生き物です… 美紗緒さまのお考えも美紗緒さまの強い想いがあればこそです
そのお気持ちが少しでも薄れてしまえば 直ぐさま美紗緒さまの想いは実年齢まで飛んでしまいます
実年齢? どっちの?
ー もちろん現在のでございます…
なるほど、現在なら身も心も17歳になっちゃうってことか… 確かに…だから少しでもあんなこと考えちゃったのかな…
あり得ない!って思ってても わたしの意識のどこかにほんの少しだとしても現在を楽しもうとする意識が出てきてたとしても否定できないから…
ー 美紗緒さま? 決して現在を楽しんではいけないという意味ではありませんから わたしは何度も美紗緒さまには『楽しんでください』と申し上げていると思っております
楽しいにもいろいろあるの! もう、いちいち心の中読まないで!!!
わかってるから!! わたしがわたしの望みを忘れさえしなければいいんだから!!
ー はい、そういうことでございます… 他にはなにか…
⋯⋯リ⋯リリ⋯⋯リリリリ⋯ジリリ⋯⋯
ん? なになに?
リリリリ⋯ジリリリリ⋯ジリリリリリ⋯リリリリ
え? ま、まさか…
ー ジリリリリリリリリリリリリリリリリリ
ー カチャ ー
⋯⋯⋯もう朝だったんだ…
止めた目覚ましを寝ぼけ眼目で確認する
窓の外に視線を移すと 少し明るくなってた
日が昇るのも日に日に早くなってるんだな…
今まで以上に天使?との会話を覚えてた
まだまだ聞きたいことはあったけど いまはわたしのルートは逸れてないってことがわかっただけでも収穫だった
注意しなきゃいけないことも確認できた…
んん~…まだ眠い… なんだか寝起きなのに頭が疲れてる気がする…
朦朧とする意識のままベッドの上で半身を起こす
辺りを見回すといつもの光景が目に入る
ぶるっと身震いしそうな感覚を覚えて立ち上がる
トイレ、トイレ⋯
おもむろにベッドから降りた際にハラリと床になにか落ちた…
ひろいあげたそれはわたしが描いた子どもたちの似顔絵だった…
わたしはそれをデスクマットの下にいれるとトイレへと急いだ⋯




