116話 マキと土井くん
◇
「美紗緒ーーー!!」
後ろから聞こえた声と足音…
振り返らなくてもわかるこの声はとても間の悪いものに感じた…
その足音は勢いよくわたしの方へ近づいて来たかと思うと、パンッ!と軽くわたしの肩をはたく!
「いてっ!」
「なぁによぉー! 聞こえなかったの??」
その声の主はもちろんマキだ
茶道部へ向かう方向とテニス部に向かう方向は同じだった よりによってこのタイミングでマキに見つかるとは…
わたしたちの前に回り込んだマキは土井くんの顔を覗き込む
その威圧に少したじろいでいるのがわかる
ペコリとマキに頭を下げ わたしの方を見る土井くん
ジロジロと見回すマキの視線に戸惑っていた
「ど、どうも一年生C組の土井明です…」
わけがわからないなりに自己紹介をしてる土井くん
「知ってるー! わたしマキ! 美紗緒の友だち!」
そう言うと少し離れて大袈裟にお辞儀をしてみせる
まるでテニスのユニフォーム姿を披露してるかのようにも見えた
「はい、知ってます! 重命先輩とよく一緒に帰ってますよね!!」
マキの陽気な挨拶で少し緊張がほぐれたのか土井くんも嬉しそうにマキに話しかける
マキは土井くんにではなく わたしに笑顔を見せる
絶対勘違いしてるな…もう今は言い訳なんてしないけど、部活が終わってからなに言われるか…
「ほら、マキは急がないと後輩たちに示しがつかないよ!!」
わたしはしっしっと追い払うようなジェスチャーでマキを急かす
「おっと、おじゃま虫は去りますよー! 土井くんだっけ? 美紗緒を頼んだよ〜!!」
もうなにも言う気がしなかった
とりあえず今は話してる余裕も気力もない
そんなわたしとマキのやり取りを土井くんはニコニコしなが見ていた
「仲、いいんですね」
「ま、まぁね…」
「重命先輩の友だちなんだから 絶対いい人ですよね!!」
基準がわたしとか、おかしくない?
なんて思いながらも この素直さがとてもかわいらしく思えた
土井くんの基準で言うんなら 土井くん、キミもいい人ってことになっちゃうよ??




