113話 気にしすぎる
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土井くんが部活に来た時も部活の最中もマキにあんなこと言われてからいちいち気になってた
別に今までどうとも思ってなかったけど、土井くんはわたしがあげたお土産の青いシーサーをカバンにつけてた
でも、ただつけてたってだけでそれ以上はない
確かになんでもわたしのところへ聞きに来るけど それだって上級生ってだけ
わたしの彼への接し方も特別ってわけでもなく みんなと同じように接してる
わたしだけが意識し過ぎてしまってなんか妙に恥ずかしい気持ちになった
そう、すべてはマキの悪い冗談⋯
「重命先輩って確か6月10日がお誕生日でしたよね?」
部活の後片付けのとき土井くんがわたしの側へやってきて聞いてきた
「う、うん…そうだけど?」
不覚にもちょっとドギマギしてしまった
土井くんを見る目がなぜだか泳ぐ
「この間いただいたお土産のお返しなにかしたいな〜と思いまして!」
「えっ? そんなのいいから! お土産なんだしいちいちお返しなんてするもんじゃないのよ?」
なんだ、そういうことか! わたしはホッと胸を撫でおろす お土産にお返しとか『かわいいかよ』なんて思う
「でも…」
「ん?でも?」
「そんな理由でもつけないと重命先輩に贈り物できないから⋯」
!? そう言ってわたしを上目遣いで見る土井くん…
なになに!? どういうこと??
じーっとわたしを見つめる土井くん… なんか変な空気が漂ってる気がして妙に気まずい…
わたしが意識し過ぎちゃってるのか、それともホントに土井くんがわたしを意識しているのか…
なんて話しかけていいのかたじろいでいると…
「土井くーん! ちょっとこれ持って〜」
「あ、はーい! 今いきまーす!!」
渡りに船とはこのこと、その船はまるでわたしへの助け舟のように感じた
他の部員に呼ばれた土井くんはいつものようにスッと手伝いに行く腰の軽さを発揮する
と、同時に不思議な空気から解放されたわたしはホッとしていた
土井くんの何気ない一言一言を意識してしまう…
ううっ…マキ、あんたのせいだ…




