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111話 繋がれ未来



新一年生の入学式を終えて一週間が過ぎた

今日から部活への体験入部が始まる期間だ

三年生になったわたしは茶道部へ体験入部に来てくれた一年生をもてなすため奮闘していた

同じ三年生として部長や副部長にだけ任せっきりってわけにもいかないしね!

去年は5人の新入部員があった

先輩たち去年の三年生のおもてなしが功を奏していたのは見ていて明らかだった

アットホームな雰囲気づくり、楽しい茶道部での三年間を想像させるためにいろんな趣向を凝らしていた

わたしたち現三年生も先輩達から学んだことを体験入部に来てくれる一年生達に見せて一人でも多くの部員を迎え入れようと必死だった


不思議なことだけど、茶道部はまるで示し合わせたかのように毎年5人程しか入部がなかった

確かに他の部活に比べてマイナー感は否めなかったけど、茶道部の部員たちの満足度は高かった

なのでみんな少しでも茶道部の良さを伝えようとアピールに努めた


その甲斐もあってか、今年も5人の新入部員が入ってきてくれた(でもやっぱり5人…)

しかも森下先輩以来の男子が一人いた

こうして新一年生を見るとなんだか幼く見える

そりゃそうか、ついこの間まで中学生だったんだもんね! わたしからすればみんな幼いんですけど⋯


受験生でもあるけど、わたしは過去いぜんはできなかった部活動に一学期の間は全力で取り組もうと考えていた

卒部までの時間も短い、部長たちのフォローも目一杯して過去いぜんにはできなかった茶道部での青春を送ろうと思っていた



重命しげなが先輩! これはどこに片付けておきますか?」


「わっ!? 大丈夫? それちょっと重いよ?」


「大丈夫です! こう見えても男なんですよ? これくらい平気です!」


女子の多い茶道部の中にあって唯一の男子である

土井どいあきら」くん

結構気が利いてマメに動いてくれるので重宝されている彼はなんでも進んで手伝ってくれる

少し線の細い体型から思いもよらぬ力を発揮する辺り、さすが男子と唸らされる


「土井くん、無理しないでね!」


「はいっ!」


わたしたちも力仕事ではつい土井くんを頼っていた

彼は嫌な顔一つしないどころか自ら手伝えることはないか?といつも聞いてくる

ホントによく出来た一年生男子だ


進学組が殆どの茶道部では三年生は休みがちだったけどわたしは休むことがなかったので意外と部員たちを仕切る機会が多かった

まぁ頼りにされるのは慣れてるからね…

自然と下級生たちと接する時間が多くなってた


そんな、ある日…


うちの学校ではゴールデンウィーク明けに三年生の修学旅行がある

案の定どこに行っても目立つマキと一緒で賑やかな修学旅行になってた

(賑やか過ぎるのも考えものだったが…)

まぁその話しは機会があればいずれ⋯


修学旅行先の沖縄で、わたしは茶道部の部員全員にお土産を買ってきていた


「はい、これは宮下さんに、これは穂乃果ほのかちゃん…」


「重命先輩ありがとうございまーす!」


後輩一人一人にお土産を渡す

結構お土産やプレゼント系の買い物は好きだったのでわたしは自分が楽しんでるつもりだった

なによりもみんなの笑顔を見るのが好きなのよね〜


「はい、じゃあこれは土井どいくん!」


「え? ぼくにも?」


わたしに差し出されたプレゼントを受け取っていいものかどうか、戸惑ってるように見える土井くん

まぁ確かにこんな青いシーサーのキーホルダーなんて貰っても困るかもだけど…


「うん、そうだよ? みんなに買ってきてるのに土井くんにないとか ないでしょ?」


「あ、ありがとうございます!!」


さっきまで不安気ふあんげだった顔がパッと明るくなるように感じた

喜んでくれてよかった、お土産たちだって喜んでるよ


「重命先輩にプレゼント貰えるなんて、嬉しいです! ずっと大切にします!!」


「うん、みんなにあげてるやつだから気にしないで!」


(もう渡してない部員はいないな…)


わたしは部室を見回しながら心の中でつぶやく

もうこの状況は過去いぜんにはなかったもの

だけど現在いまのわたしには大切な場所

わいわいと賑やかな部室や部員たちを見ているとどうして以前のわたしはこんな世界を見なかったのだろうと思う… 同じわたしなんだけど現在いまのわたしだからこそ気づけるものがある

二度目の現在いまだからこそ感じることがある

時折不安に押しつぶされそうになる自分もあるけど、この瞬間いまを生きているからこそ かけがえのないものに気づける時もある


だからこそ、信じてる

現在いまのわたしの未来が継人や子どもたち、そして孫ちゃん達の待ってる未来に通じてることを…



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