109話 時間はあるけどないみたいなもん
わたしのことなのに わたしは蚊帳の外な感覚
なまじ賢くて勉強できちゃう子ってこんなことあるのかもね… なんて他人事のような考えが浮かぶ
「はい、ありがとうございました」
あれ、なんとなく聴いてたつもりがいつの間にか考え込んじゃってて話しが終わってた
「あ、ありがとうございました」
わたしは母に続いて先生に挨拶をする
「よく、考えてみるんだぞ おかあさんは重命のこと真剣に考えてくれてるから」
ニコリ微笑んでわたしに語りかけてくる林先生
その言葉の意味も内容もしっかり理解はできてます
事情が事情なだけ…
母は立ち上がり わたしにも立ち上がるよう促してる
わたしと母は先生に頭を下げて部屋を出た…
(ふぅ、とりあえず終わった…)
廊下を母と並んで歩く
数人知ってる子とすれ違い挨拶をされたりしながら廊下を進む
なんかわたしの母をみんなが見ていてるような感覚にちょっぴり気恥ずかしい⋯
ちらりと母の顔を見ると、なんだか考え込んでるように見えた
しばらく二人とも無言で歩いていた
それから家に帰るまでなにを母に言われても空返事をしていた
こういう態度って親からするとムカつくのは重々承知の上だけど、どうせ帰ったら同じ話しを父ともしなきゃいけないかと思うと 今答えるのが面倒くさく感じたから…
こうして俯瞰して考えることができると、きっとうちの子達もあの時は⋯なんて思うことがないこともない
バスを降りてからの上り坂の足取りの重さに自分の今の心情が反映されていた…
◇
やっぱり夜は父からも母や先生と同じことを言われた
わたしも必死で説明したけど『よく考えてみなさい』と通り一辺倒な答えしか返ってこなかった
両親の言ってることもわかるだけに心苦しかった
一人娘を心配する親の気持ちもわかるんだよなぁ…
過去に来てからこんなに両親に反抗?したことなんてなかったし、する気もなかったのに…
あぁー…わたしの人生こんなに大変だっけ!?
◇
結局、まだ受験までは時間があるから『よく考えてみなさい』で終わった…
同じ結果なんだし話す意味なかったようにも思えるけどわたしの言いたいこともちゃんと話しておかないとだしね… 正直わたしの言ってることは実際に起きたことだったとしても説得力もなければ、ホントのこと言ったところで信じてもらえるわけもないしね…
なんてベッドの上で考えてたら
いつの間にか、寝てた…




