10話 朝食〜いってきます
「いただきまーす」
とりあえずわたしは何十年ぶりかに母の手料理を口にした
朝食を済ませたわたしは部屋に戻って学校へ行く準備をする!
時間的に余裕がなかったので時間割を探してる暇すらなく とりあえず殆どの教科書を鞄に詰め込んだ
鞄は必然的に重くなったけど 若さでなんとかなるっしょっ!!!
時計を見ると7時45分をまわっていた
確かいつも50分くらいに出てたな?と中学生の頃の行動を思い出す わたしはどっちかって言うと早目に学校に行く子だった まだまだ人けの少ない教室が好きだったから
トントントン⋯
さっきとは違って落ち着いて階段を降りてく
母が作ってくれたお弁当がテーブルの上に置かれてる
「お弁当ありがと!!」
ずっとこうして母はお弁当作ってくれていたのよね、と思い出す そのありがたさ、大変さがいまのわたしにはわかるし 身に染みる…
わたしも子どもたちには母を倣ってお弁当作ってたっけ⋯ 母は専業主婦だったけど わたしは違ったから朝のバタバタさじゃわたしのが上手だったかもね その分 母のお弁当は手が込んでたっけ…
お弁当ひとつとってもいちいち想いが溢れてくる
「なにしてんの? お弁当入らないの?」
あんまり耽ってると母にいちいちつっこまれる
朝からボヤっとしてるように見えちゃうんだろうな
それでもわたしは若い母の姿にいちいち驚いて見いってしまう
「おかしな子ね、おかあさんの顔になにかついてる?」
「まさか! おかあさん若いなぁって!!」
ここは冗談まじりにかわしておこう
本心だったとしても冗談にしか聞こえないだろうし
「バカ言ってないで… あ、そうそう!もしかしたら美紗緒が帰ってくる時間にかあさんお友達と会ってて帰ってないかもだから鍵持って行ってくれる? なるべく早く帰るようにはするけど…」
「うん!わかった!あんま遅くなるようだったらLINEしといて!!」
「らいん⋯? なにそれ?」
うわっ!? やばっ!! そうだ、この時代に携帯電話どころかスマートフォンもなかったんだ…
思い起こせば当たり前なんだけど、当たり前に使ってただけに携帯のないことの不便さをこれから実感しそうで怖くなる
「あ、あはは… なんだろ…? こないだ読んだ本でそういう意思を伝える魔法みたいの出てきてたから〜… 呪文?みたいなもんかなー…」
苦しいながらにシラを切る
とにかくごまかすしかないんだし!!
「マンガばかり読んでるからだよ… ほどほどにして勉強もなさいよ」
ふぅー、だいたいなんかあったらテレビとマンガのせいなんよね、今は助かったけど
この後文句の対象がゲームとかインターネットとかスマートフォンになってくんだよね
いつの時代も本質的には変わらないんだな
「あれ?おとうさんは?」
「いつものように新聞持ってトイレよ」
そうだった!毎朝父はごはん食べた後、新聞持ってトイレに立て籠もってるんだった
「そっか! んじゃおかあさんいってきます! お弁当ありがとね!!」
そう言って部屋を出るわたしの背中越しに
「気をつけて行くのよー! 鍵忘れないでね!」
その声に はーい!と応えて部屋を出る
トイレの前まで行って今度は父に声をかける!
「いってきまーす!!」
「おう、いってらっしゃい」
父のくぐもった声が聞こえ わたしは安心して家を出ていく!




