狂気的な執念は運をも喰らい自身への勝利へと導くことを俺は知っている。
この世界には以前俺が求めた世界を変えられる程の力、魔法が存在する。
だが問題なのは俺が今、その能力を持っていないということだ。
赤ん坊という状態故、たとえそういう魔法を持っていたとしてもどうしようもならなっかたのではあるが、そんな考えではまた以前と同じような結果しか生まない。
だからこそしっかり意識がある赤ん坊という特別な立場を利用し、今からでも世界を変えられる魔法とやらを習得しなければならない。
魔法の使用というのは親が雇った自衛ギルドの兵士たちの訓練で見ていた。
厳密には一般人が使用するのは魔術であり、魔術は自然から発現した魔法を人でも扱えるように研究されたのもののことを言うらしい。
俺はその時、世界を変えるには一般人が使う魔術ではなく魔法が必要だと齢1歳で気づいた。だが魔法は自然に宿るものであり、そもそも今の俺は自分でまともに歩くことすらできない状態だ。
まさに八方塞がりだ。
一体どうすれば魔法を取得することができるのか幼児用のベッドで考えていたところ、急に屋敷内が慌ただしくなった。
普段は屋敷の者達は廊下を走るといったことはないのにその日は領主である父親らしき人物ですら慌てて走っている。
そんな中母親らしき人物が俺の目の前までやってきて、まるで何かから逃げるように俺を抱きあげて屋敷から出ようとしていた。
どうやらこの屋敷近くで突発的な魔法の発動を検知したと探索者から報告がきたとのことだ。魔法というのは自然が災害のように唐突に発動させるらしい。
報告からは屋敷には近づく可能性は低いらしいのだが魔法の災害は初めてらしく、念のため近くの街の別荘で魔法がなりを潜めるまで避難するらしい。
非難するため俺は自動車の後部座席に乗せられた瞬間、屋敷の方を見るとこの世界を焼き尽くせるほど大火を纏った嵐が屋敷より遥か遠くにあるのにはっきりと見える。
俺はその時俺が求めているものとは少し違うが、これこそ世界を変えられる程の力だと実感した。
屋敷周辺で起きた魔法は屋敷に近づくことなく、1週間ほどで無事に収まった。
自然が起こした魔法は、魔法の解除も自然が行う。まるで自然という意思が人間に対して行う罰と言わんばかりであった。
つまり自然の意思がこの世界に存在する魔力を経由することで世界を変えられる力、即ち魔法が発動するというのなら人間でも魔法が可能なのじゃないのか?
と思っていたが、屋敷の者や自衛ギルドの連中の話を聞くに人が魔法を発動したという話は聞かない。あれほどの力を人間が手に入れたというのならばこんな田舎の屋敷にも噂程度に入ってくるかもしれないと思ったが、そんな話は一切聞かない。
だがこの先日の魔法災害のイメージを俺の純愛への思いを合わせることで魔法に繋がることができるはず。
しかしかなり不安はあった。せっかくこのような魔法や魔術といった超常的な能力がある世界にきて幼児姿でちゃんと意識があるという実質チートみたいな状態で俺は今からそのような環境を腐らせるか、純愛を守る強大な力へと昇華させるかという第二の人生を賭けたイチかバチかの賭けを行う。わずか一歳にして。
賢い者ならそんなほぼ負けが確定しているような賭けはせずにだれでも使用できる魔術を極め目的を実行するだろう。
だがそれで俺は満足か?いや満足ではない。
誰でも使用できる力は所詮天才といった特別な人間に淘汰される。それにここは世界を変えられる力が存在する世界だ。仮にそのような力を持った人間が不純、NTRを行ったとするのならばこの世界は最早汚され、壊されるていくのを待つことしかできない。
賢者は愚者に殺され、愚者は純愛の心を持つ俺によって消滅する。
そうだ。NTRを殺すことができるのはNTRを上回る力しかない。
その力こそがこの世界の魔法なのだ。
だからこそ俺はこの賭けをするしかない。いやそれしか選択肢はなく、勝利以外の選択を許されない。
だが狂気的な執念は運をも喰らい自身への勝利へと導くことを俺は知っている。
俺が感じているのは純愛への思い、そして不純NTRをこの世から駆逐するという執念だけだ。だから俺はなにも心配していない。