能ある鷹は小判鮫
それがどうしてそうなったのか、何故かは特に気にもしないが、私は昔からそうなのだ。
大概の事は可もなく不可もなく往々にして他の者より早々に終了している。事が済んでいる様を見つけた仲間は目を皿の様に丸くしている。はじめの頃は尊敬の眼差しとして向けられたソレは、興味と研究の対象を見つめる為に細く絞られ、真似のできる代物では無いと理解されると、その絞られた瞳は正面を向く事は無く、黒く歪んだ嫉妬という邪な情に彩られた瞳孔が私をなじる。
耐え難いのは慣れるまで、慣れれば互いにどうもこうもない。飲み込みが早いぶん消化は遅いのだから……
私と違い、咀嚼した者達は順当に、著しい成長と共に私を追い越してゆく。私に向けられる彼等の視線は憐れみに変貌を遂げ、そんな彼等を尻目に私はまた何かを成し遂げる。勿論、可もなく不可もなく。
かくして私は出過ぎた真似をしなくなる。たかだか頭一つ抜きん出ても得する事など何一つ無いどころか出る杭は打たれるのだ。集団生活では格好の餌食。だから、集団に紛れ馴染む為には平均値と中央値を察知する事と流行りを知る事は死活問題なのである。
人畜無害な不特定多数。小判鮫よろしく主役の周りを黒子の様に。