39.王都凱旋 戦いは終わり戦争が始まる!
テレレ↑ジゾエンマ紋⇔アサッシ紋レー↓ヒェッ↑
一方!アサッシ伯の船では!
「まだ報せは来ぬか!あの忌々しいジゾエンマと王都を落とした報せは!」
「何もありません」
「餓鬼共の部隊はどうしたか!」
「それも何も」
「恐らく寄り子子女部隊も殲滅されたものかと」
「役立たずの寄り子貴族共の人質を殺せえ!寄り子共を奮起させるのだ!」
「それはむしろ反発を産むのでは?」
「構わぬ!殺せ!この王国は不浄だー!焼けー!!」
横浜警備隊長?
あ~あ。頭が狼狽えちゃったから部下一同ドン引き。
そしてナイスタイミングで。
「伝令!東方海上に謎の光!」
「謎の?」
「光?」
「洋上に赤い火がチラチラ見えるとの事です」
一同が疑問に思っているその時、爆音が轟いた!
続いて船室の天井が崩れ、その上にはマストが幾重にも砕けて崩れていた!
そして船が激しく揺れた。
「何が!何が起きたのだー!!」
周囲には、さっきまでああだこうだ言っていた部下の…
部下だった者の、寸断され血にまみれた肉片。
「ひ!ひっひー!」
そしてアサッシ伯爵が見たのは、穿ち尽くされた貴賓室の壁の向こう。
真っ二つに引き裂かれてV字状に沈む僚艦と、そこに巻き込まれ水に飲まれる士官に船員。
「ふ!船をシャクレーヌへ!シャクレーヌへー!」
アサッシ伯爵が叫ぶが、応える者は誰もいない。
茫然自失の中アサッシ伯爵は甲板に上がると、朝日を背にした、帆を持たず、赤い火と煙を吐く数隻の船。
そして、朝日に照らされる港にまで響くように、ピートの艦隊からの声が。
「愚かなる反逆者、アサッシ伯爵に対しゴリア王国トリヒキーナ王女が告ぐ!
領都は既に陥落した。
そしてアサッシ伯爵個人が美人局に唆されて作った借金のカタに!
王国の秘密をシャクレーヌ王国に売った事実も!
お前達が肉の壁に使った寄り子子女達の献身的な努力で確保した!
最早逃げる道は無い!
直ちに投降し、裁きを受けよ!
それだけがお前達の家を残す唯一の道と知れ!!」
トリッキ、株爆上げ。
「に、逃げろ!シャクレーヌへ!シャクレーヌこそ我らの祖国だ!
ゴリアは駄目だ!こんな国は未来が無いんだ!シャクレーヌへー!」
応える者は誰もいない。舵輪も甲板毎穿たれ、操舵士だった血痕が僅かに残る程度だ。
遠い港町では、列車砲がアサッシ伯爵の艦隊を砲撃している。
王家の旗を掲げた列車だけでなく、ピート伯爵家の旗も見える。
事前の協定の通り、列車を出して王国騎士団を輸送してくれたんだな。
「誰か船を持てー!ゴリアをくれてやる!船をぶびゅろ!」
船じゃなくてキックを呉れてやる。キックの鬼だあ!
「ばびゅべろぼろ!げぼるお!」
殺さない程度に今だチャンスだ!真空飛び膝片手駒!
「びゃんびゃんびんびゃびゃん!!ぶぼぉりゃああ!」
後は任せよう。
この後、コイツにどう死ぬより辛い苦行を体験頂くか。早く決めよう。
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テレレ↑アサッシ紋⇔王紋レー↓ヒェッ↑
数日後の王都では!
開通式典から日も浅いのに、再び王城駅に西からジゾエンマの旗、サンズーノの旗、そして元トレイタ領統治に協力したマモレーヌの旗を掲げた列車が。
東からピートの旗を掲げた列車が集結した。
下車したのは、実際の戦闘に動員された兵、船員、機関士達。
無論、各領主を先頭に頂いて。
駅から王城まで、軍楽隊を先頭に行進する。
王都民は旗を振って、声を上げて歓迎する。
突然降って湧いた恐怖を消し去ってくれた恩人への感謝だ。
その末尾に、折に入れられ、自殺防止のために猿轡を噛まされたトレイタ、アサッシ両伯爵と、その妻子。
それに続き、騎乗は無く徒歩ではあるものの、正装のアサッシ子女が続いた。
アサッシ家の罪状の証拠であるシャクレーヌ国との契約書を掲げながら。
この子達を警護するのは、これも正装、ジゾエンマで定めた軍服の特殊部隊。
彼女達もまた元はアサッシやトレイタ始め大陸派貴族の手駒だった。
しかし今やジゾエンマに欠かせない戦力だ。
王都中心部の大聖堂で、女王参列の上、この日のために総本山から招いた大司教の手で戦勝の礼拝が行われた。
王都の大司教は、歓迎や接待に追われ、この礼拝に参加出来なかった。
これは今後、都度総本山から司教を招いて重要な礼拝を行う女王の采配に対し、その祭礼に参加もしていないゴリア教区の大司教達が異端認定させないためである。
無論、大陸への情報連携も機先を制して行っている。
印刷済の「新聞」で、事の仔細を伝えている。
シャクレーヌ王国に借金を背負わされた有力貴族が反乱を起こした。
鉄道で派遣された大砲で奇襲は失敗した。
寄り子子女による非人道的な攻撃を行った。
船で逃げたが、鉄道と蒸気船で挟撃された。
兵や武器を鉄道が数100歩移動させたが事故は何ひとつなかった
戦勝を総本山の司教が祝福した。
これを、絵を入れた印刷物に記し、断続的に大陸沿岸部へ配布した。
紙は貴重品だ。人々が読んだ紙は売られて梱包材等に転用され、時間はかかるが大陸にシャクレーヌの迷惑さを伝えてくれるだろう。
「はっはっは!これは傑作だ!
あのクソ顎野郎が地団駄踏む姿が目に見えるわ!」
「てか…こりゃ鉄砲の弾より恐っそろしい武器や…ですわね!」
流石商人トリッキ。情報そのものの力と、それを伝えるメディアの力を理解している。
「なあ、ザイトはん。ウチと結婚せえへん?」
「王家が断絶します」
「世の中上手くいかんもんやなあ」
「上手く出来てるんですよ」
私は権力を持っちゃマズいんですよ。
今でも充分マズいんですけどね。
「いけずう~」
これでいいんだよ、未来の女王陛下。
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テレレ↑王紋⇔ジゾエンマ紋レー↓ヒェッ↑
シャクレーヌ内通反乱、そう命名されたこの戦いは、結局僅か1週間以内で終結しました。
それも、王国側の死者0という圧勝であり、敵軍も動員数6000に対し死者500、1割弱の犠牲での鎮圧という結末でした。
それでも、働き手を失った家、家長を失った家は悲しみを抱えた上で逆賊の誹りを抱え、冬を越さなければなりません。
目の前にいる、アサッシの子女達もまた同様です。
私は二の丸御殿で宣言しました。
「貴女達は、この何も生まなかった戦いの終わった今こそ、命の危険に晒されている人々を救う戦争のために全力を尽くして下さい。
女王陛下始め、私も、戦いに参加した領主も一緒に働きます。
飢えて死ぬ人、凍えて死ぬ人を一人でも減らす様働きましょう。
戦いは終わりました、しかし戦争が正に始まったのです!
それは私達が春を無事に迎える日まで続くのです!!」
「「「ハッ!!!」」」
この子達は私預かりとなり、飢餓救済の働きによっては爵位剥奪の上放免される予定です。
でも、皆自分の使命、家を守る事に必死です。
爵位が剥奪されても、その実力を買って我が領で活躍してもらい、いずれ爵位復活に向けて私も努力しましょう。
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戦いを前に計画した飢餓救済計画は王都に奏上した上で、更なる諸侯の協力の上強化されました。
無論、戦時に延長されたサンズーノ・トレイタ間鉄道、ピート・アサッシ間鉄道も計画に編入され、各領から地方の村々へ輸送する馬車まで動員計画が組まれました。
街道を塞ぐ形で仮設された鉄道ですが、大雪の間に動けるのは大きな力となるのです。
「うわー!来年に輸出する計画だったのにー!まだ充分な数が無いんだ!!」
「待て!冬を前に売れる物が増えたんだ!雪が降る前の最期の稼ぎだ!好機と思え!」
「魚は売るぞ!石炭をくれ!」
「山菜が!」「猪が!」「毛皮は無いか?」「ワインは?」「それ急ぎか?」
そこに場を仕切っていた王都商工組合のトレーダ様が一括しました!
「待てい!この黒板に書いた地図に、各地の売り物、買い物を書いて行け!」
流石強面、皆が言葉に従います。
「お嬢様あ、強面は傷つくなあ。せめて渋いとか何とかカッコよく言ってくれよ」
「じゃあゴリガンで」
「なんだそれ?」
「いえなんだか知らないけど天下取った気分でしょ?」
「なんか納得行かねえな。センスがあのヤローっぽいなあ」
心外ですわ!
王都では商工組合も、貴族達が押し寄せた王城でも、冬前とは思えない商談ラッシュに包まれました。
「ドヒー!まいどありっちゅーにゃ手が回らんー!」
流石のトリッキ殿下も天手古舞の様です。
収穫祭で行われた物産展、あれが予行演習になったのか、てんでばらばらに提示された需要と共有はトリッキ商会だけでなく、王都商工組合やアサッシ公爵家参加の暗部商会までも動員して流通計画が立てられました。
今、ゴリア王国鉄道は…
東岸は元アサッシ港からピート領クレタ港へ。
東西本線はクレタ港から王都・ジゾエンマ経由サンズーノへ。
西部縦断線は北端のドースガナからマモレーヌ・サンズーノ経由元トレイタ領都へ。
小文字のhをひっくり返した様に延伸し、人の背丈を越える積雪すら除雪しながら物資を、食料を東西に流通させる道となりました。
収穫祭の物産展では結構な産物が不充分ながら各地で貯えられ、消費されず廃棄されている物すらある事も解りました。
この食料流通計画を、各領地と王都商工組合、関係する貴族陣でまとめ上げ、雪も降りつつある王城の貴族会で裁可を待つばかり…
「お待ちくださ…」
「命を懸けるか?」
恒例の各地貴族からの形式的なイチャモンというものがある様ですが、それを女王陛下は一蹴しました。
「各貴族にとって致命的な損失が認められない場合、不要な抗弁で国民の命を脅かした愚昧な者は爵位剥奪の上逆賊と見做されると思え!」
「畏れながら女王陛下!我らは助言すべきを…」
「だから助言に命を懸けろ、そう言っている。
すでに本日の議題は諸侯に書面にて配布しておる。
よもや目を通しておらぬ愚か者はおるまいな?!」
返事がありません。屍の様です。
女王陛下や王女殿下、各家の役人や商人さん達、そして供給する側の各家が必死になっているのに、この愚か者達は何をやっているのでしょうか?
「意見すべき事があれば明日正午までに書面にて各担当部署へ質問せよ!
明後日に第一次回答を行う!」
この2日の時間が無駄になれば、失われる命も増えるかもしれない!
「もし無駄な問答で失われる命があれば、質問者には相応の沙汰を下す。
逆に新たな気づきにより救われる命があれば、それは褒美を与える。
吟味に費やす時間は1日のみ!
知恵を巡らせ頭を使い、悩みぬくのじゃ貴族なら!」
「「「…は…」」」
結局、翌日新たな質問が無く、決断を1日伸ばしただけに終わりました。
「ゲド公爵。そなたの余計な進言で救える者を1日分救えなかった。
公爵家の責務じゃ。分かって居ろうな」
「陛下!私は貴族の矜持を…」
「わかっておろうな!!」
ゲド公爵は譲位しました。
この人物、実は大陸派と女王派の均衡を図っていた、女王陛下にとっては獅子身中の虫だったそうです。その排除も狙っていた、と後でトリッキに聞きました。
尚その子は王家の外戚でしたので、ゲド家は伯爵家に降爵となり、お家縮小により多くの失業者を出す事となりました。
しかし多大な戦力を持っていた筈のアサッシ・トレイタ両家の滅亡を見た今では、ゲド公爵家もその一門も反乱を起こす事も出来ず仕舞でした。
まあ、皆貯えのある者達です。一冬はしのげるでしょう。
******
高位な貴族が不用意な一言で破滅する一方、命を懸けてでもアサッシ伯爵家に対して誠意を尽くさんとした若い子達は頭を駆使していました。
商人達の要望、各地の貴族の供給要望、反対に支援要望、更に関税計算。
一つの荷物が求められる地に向かうまでどれほどの計算を重ねたらよいのでしょう?
「あの子達は商人に弟子入りしてもやってける算術や感覚を養われています。
やり遂げますよ」
「印刷」によって各地の輸送計画を見やすく纏めさせる縦横の桝が予め書き記された紙を皆に配りながらザイト様が言いました。
そーゆーのすぐ作りますよねこの人。
私、なーんにもしてませんけどー。
「あー。あなたがそーゆーんならそーでしょーね」
なんか取り残された感じがするー。
得意分野でもない商いに首を突っ込むのも皆の邪魔にしかなりませんものね。
「え?ふてくされてます?」
「だって私やる事ないんだもーん」
「駄目じゃん。ちゃんとみんなが無理してないか、煮詰まったりしてないか、見て下さいよ」
「えー?あんたがやりゃー…駄目だ!アンタ全く他人を理解してないし!」
「そうそう。
お嬢様が皆を元気づけなきゃ。
あの子達がブチ切れて、やっぱシャクレ顎に付くー!とか言い出す事がない様にお願いします」
「シャクレ顎ねえ…」
一抹の不安を抱えながら、越冬計画の具体化に極力顔を出したものの、口を出す機会はなかったのです。
敢えて言うなら
「列車の運転は2時間で交代させて」
「信号所の確認は二人で、字を見て声を張り上げて」
「天気が悪かったら、進もうじゃなくて安全な駅で止まろうを優先して」
「無理しないで。必ず日が変わる前に食事も入浴も済ませて、勇気を持って眠ってね」
「あなたに何かあったらその後の全てを止めます」
って当たり前の事を繰り返してそらんじた程度でした。
******
「私達を除雪部隊へ」
「却下」
「何故!」
「絶対無理して死ぬから」
ザイト様と元アサッシ少女隊がまた問答してますわ。
「君達には越冬計画の需給状況の監視を頼んだ筈なんだけど?」
「そんなもの実際の罪滅ぼしにならないじゃないですか!」
あ…周りの特殊部隊が殺気を!
「君達は任務の途中で死んで逃げたいのか?」
「え?!なんで…逃げるなんて言うんですか?!」
「そう言ってるのは君達だ。
経験も無い危険な任務を志願して成功させる算段も無い。
今まで君達を許して成長を願っていた皆に対する裏切りじゃないか?」
「私達はそんな事は!」
「言ってるんだよ馬鹿垂れ!!」
ザイト様が怒りました。
しかし、彼女の肩を抱いて言葉を続けます。
「慣れた仕事は、慣れた人を信じて任せなさい。
君達は、学んだ知識を駆使して、多くの人を助ける使命がある。
安全な仕事に甘んじるなんて思うな、安全である事を恐れるな。
怖いと思った時こそ、逃げるな!戦え!」
「…はい」
彼女達にも葛藤はあるのでしょう。
「日夜計算に明け暮れて一杯々々の男子達の世話も頼むよ」
「は?…あ!は!はい…」
え?何か空気変わった?
…アサッシ一門。血が濃くなりそうでそれはそれで心配です。
まあ、肉体労働組と机上計画組のタッグが上手くいき、
「後は天気予報を出来ればなあ」
神様じゃあるまいし、この人何言ってんですの?
「あのねお嬢様。雨にしろ雪にしろ、降らせるのは空の上の雲。
例えばこのサイノッカから周り全部に細かい粒を飛ばす。
真直ぐ飛んで行って、何かにぶつかったら帰ってくる、そんな小さい礫を飛ばす。
帰って来た礫を絵にして、沢山帰って来た先にあるのが雲、即ちそっちは雨だ」
ほお。
「それを何度か飛ばして、雲の流れ、動く方向や速さが分かれば、そろそろ雨が降る、当分雨が降らない。それが分かるでしょ?」
ふむ。
「それをゴリア全域で行えば、明日何処に雨が降るとか解るでしょ?」
えー!!それができたら畑仕事大助かりだよー!
そんなカンタンに出来るものなの?
「もっと言えば、雨って熱い空気がある場所と、寒い空気のある場所の間。
気圧の谷間っていう所に振る。
それも解ればもっと先々も見通せる」
…もう神様じゃん。
「やっぱザイトが王になんなよ」
「なんか投げやり!敬称も丁寧語も無しですか?!」
「いらねーでしょーが、もー!」
「ひでー!」
そーゆー力あるんなら私らなんか要らんでしょー。
私、この人なんでこんなヘンピなトコにいるのか全く理解できませんわー!
「お嬢様も大概ですけどね」
「ねえー」
何言ってんですのマッコー!ナゴミー!
元アサッシ組が凄く変な物を見てる顔してこっち見てますのよ?!
あ!メイスン様が何か凄く目を輝かせて興奮してるし!
「よっしゃザイト!早速ソイツ作るぞ!」
…出来るんですのアレ?!




