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13.私達の鉱山始動 仕事の終わりは乾杯!

 城の仲間達が大広間に集まった。

「それじゃあ、仕事の希望を募ります」


 炭鉱は何だかんだと力仕事。毎日畑を耕す様なものです。

 力のある女達が希望して、当面の人手による石炭掘りに。


 馬を扱える女は少人数が馬車組に。


 非力であっても子供の面倒を見るのが得意な女は子育て組に。


 料理上手は170人を食べさせる食事組に。


 他にも掃除洗濯、運ばれてきた石炭を良し悪しを見分ける水桶に入れて選り分ける選炭組、市で商人の相手をするのは勘定が出来る騎士娘による商い組、等々。


 魔導士殿は最初は全員が怪我なく危険なく安全に働ける様、駆け回ってくれるそうです。


「いずれ鉄道が増便した時には安全な運行システムを専門に守ってくれる人も育てないとね」

 何ですのそれは?


 食事や寝起きは、サンズーノ城とほぼ同じ。世帯ごとに家が割り与えられ多分良くなったのですが。

 中には「今までアタシが寝てる間に誰かが子供の夜泣きをあやしてくれたんだけどさあ」

とか、

「なんだか一人だと落ち着かなくてさ、みんながいると落ち着くし」

とか。


 最初は1世帯1住宅だった割り当てが色々と変わって行きました。

 中には3世帯同居とかまで出来たりしまして…。

 みんなが暮らしやすいのが一番ですわ。


******


 炭鉱志願者が鉄道馬車で炭鉱に向かいます。

 頭にヘルム…目立つ様にでしょうか、黄色く塗られています。

 そして白い手袋。

 服も水色の丈夫そうな厚手の服。


 栄養係が作った肉と野菜を挟んだパンを包んだ弁当を持ってみんな鉄道馬車にのって出発です。

「「「いってらっしゃーい!」」」

 領都で仕事する組が、炭鉱女を見送ります。


「速ーい!」「すごいわすごいわ!」

 最初の仕事という事もあって領主…もとい王国の代官である私も同行します。

 騎士数人を連れて。

 魔導士殿は、御者の娘に、速過ぎず遅過ぎない様に注意し、途中で馬車を止める練習をさせています。


******


 炭鉱では、石炭があるという「地層」?ですか?

 その左右に階段が掘られ…もう驚きません事よ!


 女達には、口を覆う皮?布?が配られました。

「石炭を掘る時、細かい粉が口や鼻に入るのを防ぎます。

 仕事の時は必ずこのマスクを着用する事!

 そして着用後、二人一組でこれを確認する事!」


 階段の下には、ヘルム、マスク、手袋等の絵が描かれ、上から順に読み上げて、二人一組で漏れがない様に指をさし、声を上げて確認していきます。

「ヘルム、よし!マスク、よし!手袋、よし!」

 よく考えていますわね。


 石炭の脇の階段を昇って、崖の斜面の上部へ。

 あちこちに杭が建てられ、綱を結ぶ穴が開けられています。


「転落防止の命綱です」

 これも杭に命綱の絵が描かれ、二人一組でゆるみが無い様確認する様書いています。


 ホントよく考えていますわね。


 魔導士殿が力自慢の女達の手や腰に触りながら掘り出す要領を推してています。

 間違って鶴嘴で自分の足や他の女を怪我させないためなんでしょうけど、不純な気配を感じますわ!


 要領を得た女達が崖を掘って石炭を下へ転がして行きます。

 鉄道が石炭の地層の下に延びていて、下では落ちた石炭をスコップで馬車に積んでいます。

 鉄道の上に石炭を目一杯乗せた貨車。とても重そうですが、スコップ係がスイスイ手で押して次の貨車を押し出します。

 鉄と鉄の摩擦の少なさ、というものは凄いのですね…


 線路から離れた所に馬小屋があって、そこでは馬たちが飼い葉を食べていました。

 お馬さん達、帰りも宜しくお願いしますわ。


******


 割と早めに貨車5両分の石炭が乗せられました。

「初日としてはまあ、これくらいでいいかな?みんな、疲れた?」

「ああ。ちょっと疲れたよ」

「アタシはまだやれるよ?」

 騎士娘達は「「「ご命令とあらば!」」」と答えます。


「毎日も仕事するんだ。

 今日はこのくらいにしよう。

 明日の朝には、体の節々が痛くなる」

 そう魔導士殿が言うと、皆畑仕事を思い出したのか、辛そうな顔になりましたわ。


「今日は初日だ、後は明日!みんな、お疲れ様ー!」

「「「おつかれさまー!!!」」」

 女達がちょっと疲れながら、笑顔で応えた。


「それではお昼を食べて領都へ戻りましょう。

 食事の前は、作業小屋の手洗い所で必ず石鹸で手を洗って下さーい」

「「「はーい!!!」」」


 例によっていつの間にか、手洗い場が作られていました。

 ちょっと立派な小屋、いや家も作られています。

 石鹸も!

 いえいえ、この魔導士殿が来てからトイレにも温泉にも必ず石鹸がありましたわ?

 王都でも贅沢品だという、石鹸が!

 この野原にまでその貴重品が!


「この肉おいしー!」「スパイスで香りがついてる!」「贅沢よー!」

 割と大柄で逞しい女達ですもの、一杯のパンと肉をバリバリ食べて行きます。

「すごい食べっぷりだなー」

「え~?ザイト様は大食いの女は嫌い?」

「いやいや。沢山料理作って沢山食べて貰うのは誰だって嬉しいじゃないか」

「「「キャー!!!」」」


 ちょっと。中には子持ちのオッカチャンもいるのに何黄色い声上げてんですの?!


******


「あ!帰って来たー!」

 選炭組、というんですの?その娘の声が聞こえました。

 馬車は領都駅の南のはずれにある選炭場に着きました。そこだけ線路が上り坂になっていて、一際高いところに馬車の列が止まりました。

 駅の、貨車に乗り込む台「ホームと言います」ホームには、何か小さいカタパルトみたいな道具が並んでいます。

 炭鉱夫の女達が疲れ気味に列車を降り、替りに選炭組が昇って来て、道具に昇って…

「そーれ!!」

 カタパルト状の棒の先の台に乗った選炭組が足に力を入れると、女達の乗っている台が沈んで、貨車がひっくり返りました!

 中の石炭はホームの反対側に転がり出され、高台の様に嵩上げされた線路から、駅の南に建てられた選炭場へと坂道を転がり落ちて行きます。


 5両の貨車をひっくり返し…ひっくり返ったのは荷台だけで、車輪は線路に付いたままでした。

 そういう仕掛けの荷車だったのですね。

 もう驚かない、と思っててもやっぱり驚きますわ。


「それじゃあ、選炭組のみなさん、選炭場へ」「「「はーい!」」」

 魔導士殿が声をかけると、今度はみんなが選炭場に下りて行きます。


「それ1、2!」「「「1、2」」」

 何か不思議な、大きな天秤の両端に代が付いた様な道具の上に2人づつ2組、四人で踏み込んだり飛び上がったり、天秤を右に左に上下させると、石炭を転がした斜面、実は長い板を敷き詰めた斜面がゆっくり下に向かって動き始めます。

 小石や小さい石炭はその板の隙間から落ちて行きます。


 斜面は選炭小屋の中まで入って来て、その先では他の女達が石と石炭を選り分けています。

 最後は分けられた石炭は大きな水槽に落ちて行き、その中で浮いた石炭だけが斜面と反対側の壁にある貨車に投げ入れられます。


 また稼働し度のが説明してくれます。

「途中で落ちたり選り分けられて外され、最後に水槽に沈んだ石炭は、石が混じって居たり不純物が多くて重い物で売り物にならない。

 ここで使うか再利用するか、です」


 1時半の間に、貨車5両だった石炭が貨車4両に減りました。

 1両分が売れない石炭、ですか。

「いや、これ凄い確率ですよ?思った以上に良質の炭鉱だ。

 みんな!お疲れ様ー!」

「「「おつかれさまー!!!」」」


「では、お嬢様、皆さんに解散の命令を」

 そうでした。

「みんな、初めての炭鉱での仕事、お疲れ様。

 市への移動は明日にして、今日は汚れを洗い流して食事にしましょう!」

「「「やったー!!!」」」

 まだ元気が余っているみたいですわね。

「その位じゃないと毎日は働けませんよ」

 その通りだと思います。


******


 城内中郭の温泉は、既に入浴を済ませた炭鉱組が湯気を立てつつ清潔で軽い服に着替えて寛いでいました。

「お嬢様!さ、先に寛いじゃってすみません!」

「いえ、これからもそうして下さい。そうしないと私が寛げませんし、みんなの疲れも取れないでしょう?」

「ありがとうございます!」


 などと健気なやり取りの後で、私達も体を洗って湯に浸ります。

 は~、天国ですわ~。

 選炭組も、それは湯に溶けんばかりの満足気な顔で湯に浸かっていました。


「しかしお嬢様。普通鉱山というものは一生の刑を受けた重罪人や戦争奴隷が働かされる場所の筈ですが、こんな程度で済む物なんでしょうか?」

 マッコーが真剣な顔で聞いてきました。

「何を今更。あの魔導士殿の仕業です。

 そんな厳しい働きを私達に求めるのであれば、もうとっくに私達を売女にでも堕として売っているでしょう」

「な?あの慈悲深いお方がそんな!」

「だから大丈夫。貴女だってそう思っているでしょう?」

「お嬢様だって!」

「なな!何を!」

 そう言われてしまえばそうですわ!

 私も随分気を許してしまったものです。


「あー!お嬢様が赤くなってる!」「やっぱり魔導士様には勝てなかったよ!」

「「「あははは!!!」」」

 何を言うんですのみんなして!もう!もう!!


******


「お嬢様ぁ~、みんなぁ~、お疲れ様ぁ~」

 ああ。ナゴミーだけが癒しですわあ~。

「みんなでおいしいご飯作ったんですよぉ~」

 籠城戦以来、豊かになった食材でナゴミーがおいしい食事を仕切ってくれてますわ。

 美食は正義!ですわー!


 中郭の屋敷、大広間で、みんな揃って夕食です。

 あら、またワインを頂けますの?嬉しいですわ!

「みんな!炭鉱という初めての仕事、体を使った厳しい仕事の初日を良く頑張った!

 明日はみんなの苦労を王都に売るため、私は商い組と市へ行く。

 炭鉱組、選炭組、城を預かる栄養組、そして子供が怪我をしない様世話してくれる子育て組。

 みんな引き続きよろしく頼む。

 明日も頑張ろう、乾杯!」

「「「乾杯!!!」」」

「一人三盃までだぜー!」


 それから皆が今日の仕事の話で盛り上がった。

「そんな力が要る訳じゃないんだけど、あれ朝から晩までずっとはキツイなあ!」

「その内魔導士様がドカーン!って一発で石炭を粉々にしてくれますよ」

「石炭にも色々あるんだね」

「まさか水に浮くのがいい石炭だなんてね!」


「そうそう、子供が字を覚えたのよ」

「「「「え???!!!」」」

 何だか皆が一斉に子育て組の方を見ました。え?字を覚えた?


「魔導士様が作ってくれた、絵と字を合わせる木の札の遊びで…」

「「「そんなものがー!!!」」」

「いやあ~私またなんかやっちゃいましたかあ」

「何をスっトボけていますの?貴方ここの子供達を貴族にでも嫁がせるおつもり?」

「それはない。それ以上を狙うよ」

 全員、茫然。


「これからこの領は多くの商品や金貨を扱う。

 その時必要になるのは、商人や他領の役人と渡り合える、知識や計算能力、そして駆け引きが出来る人だ。

 この子達には得手不得手をそれぞれ生かした、この地を廻していける大人になって欲しい」


 気が遠くなりそうな事を…。

「アタシの子は、働くんじゃないのかい?」

 パンをほおばる子を抱きながら母親が言います。

「働いてもらいたい。王宮の役人より、余程優れた働きが出来る様にしたい」

 母親は、やっぱり茫然とする。それしかないですわよね。


「ウチの子は数えるのが上手なんだよ。王都の商人に弟子入りできるかね?!」

 他の母が言う。

「その子はもっと難しい勘定も出来そうだ。弟子入りじゃなくて王都に商店を持てる位にしたいね」

「キャーッ!あんた商人になれるって!王都にだよ!」

「しょうにん?」

 4、5歳位の子がぼんやり答える。


 その場の母達は、明日に、未来に夢を見た様でした。

 厳しいはずの鉱山の仕事を終えてなお夢を。


 そんな不思議な夕食が済み、皆が食器を洗い場に運んでいる最中に。


「お嬢様!市に来客が!!」


 鉄道の終点、市に泊まり込みだった見張りの騎士娘が駆け付けました。


「こんな時間に?」

「王都のトリッキ商会長、トリッキと名乗っています!」

「取ったどー!」

 へ?なんですの魔導士殿!


「よし、迎えに行きます。

 お嬢様は対面所で応接の用意をお願いします。

 マッコーは付いて来て。

 ナゴミーは、お茶とお菓子、もしかしたら食事に酒も要るかもしれないから10人分を用意して下さい。

 宜しいでしょうかお嬢様?」


 こんな時間です。

 相手は何とか今日中に森を抜けるつもりで無理をしてきたのでしょう。

「マッコー、ナゴミー。お願いできるかしら」

「解りました!」

「すぐ用意しますう~」


 さあ!戦いだ!


******


テレレ↑令嬢紋⇔トリッキ商会章レー↓ヒェッ↑


 一方、半時前の領境。森のはずれでは!


「な、何やありゃー!!」

 トリッキは護衛数人と馬車数両を引きつれて、夕陽に輝く市…

 というか城みたくしちゃったんだけど、市を見上げて絶叫していた。

 ま、こんなコトにあんなモノがあるとか思わないだろうから仕方がない。


 これからも精々仰天し続けてくれ給え、はっはっは。

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