第二話 Day1AM①
ジリジリジリジリ
ガチャン
朝6時の鐘が鳴るとK-2監獄室の大扉が開き看守らしき人が現れた。
鐘の音と同時に一斉にDiver達が鉄格子の前に現れる直立している。
「さあ、点呼を取るコン! 全員、牢屋の中で見えやすいところに立つコン!」
キツネの顔をした看守の命令で、DIVERが並び始めた。鉄格子ごしでしか見えないが、顔や形が整っていて可愛い子がたくさん。
今でこそ白と黒の横ボーダーシャツを着ているが、Vtuberであった頃はすごく煌びやかだったんだろうなと私は思った。
ちなみにDIVER達の容姿やら化粧はシステム的に常に最高の状態になっている。
化粧の時間や保湿の時間を取らないと言うのは良いことだ。
ヘヤアクセに関しては脱獄を避ける為に簡素なものが用意されていたが、そんな安物ヘアゴムでも身につけている元Vtuberは非常に可愛かったのだ。
え? 可愛いDIVERなら看守の気を引いて脱獄できるって?
いや、それはない。
だって看守さんはみんな動物なんです。人間に興味はありません……残念。
「点呼は最初の人から数字を言っていくコン! あ、僕の名前は天狐、てんこさんって呼んでねー」
コツコツとキツネの看守は鉄檻の中を見て異常がないから確認していった。
(て、てんこさん……)
点呼だから天狐さん、誰だよネーミング考えた人! ってツッコミたかったけれど囚人である私たちにそんな権利はない。
私たちは良い囚人となりデリートされたくない。看守達には嫌われないようにする為には従順なふりをする事が大切だと。
「全20名! 今日も異常なし! それでは! 朝食時間まで待機だコン!」
キツネの天狐さんはK-3室の方へ進んで行った。
このK-2室は檻の空席がまだまだ沢山ある。きっとコレから入獄するのだろう。
私は再びベットに腰掛け、看守からもらったリボンを洗面の上にある少し錆びた鏡を見ながら身に付けた。
乙女として身だしなみはNo.1だ。特に髪は命と同等の価値を持つ、私のチャームポイントである。
しばらくすると、K-1室の入り口から小さなシロクマのコックさん達が3人現れてそれぞれの檻の中に食事を配膳して行った。
(コレが私の朝ごはん……)
配膳されたのはご飯に大根の漬物、芋の煮付け、鶏そぼろ、味噌汁だ。
一般的? 少し昔な日本食のようでこれこれで美味しそうである。
あれ? お箸はがない、コレじゃあご飯が食べられない。
「すみませんー! 箸はありませんか?」
シロクマ達を呼ぶと台車を押している一番小さなシロクマが対応してくれた。
「箸はないよ! だって箸をあげたら脱獄する道具を渡してしまうってことだよね?」
ポカーンとする私、シロクマ達は当たり前の顔をして去っていった。
箸でどうやって脱獄するんだっての!
仕方がない……手で食べよう。
行儀は悪いが仕方がない。私は手を使い朝ごはんを食べる。微妙にぬるいご飯のおかげで無事に食べ切ることができた。その後、水洗の蛇口から水を手尺ですくい飲む。
まったく朝からこんなことされるなんて、酷いところだよアルバトロスは。
こう見えても私、元Vtuberだよ? 超絶美少女にこんな事、させても良いの?……って良いからさせてるのか。