妹の友達のおっぱいを揉んだ。なぜか付き合うことになった
高校二年生の夏休み。
俺、篠原春人は惰眠を貪っていた。
「――きて、お――さい」
「お――い、――さん」
「あ、んー?」
するとかすかに声が聞こえてきた。
それに寝ぼけながら答える。
時間は朝。
やけに部屋が明くて、寝起きの俺には眩しい。
いや、朝は明るくなるものだが、部屋にはカーテンがかかっているからうす暗いはずだ。
誰かが電気をつけたのか。
今俺に話しかけている奴が付けたのだろう。
今は夏休みで学校はない。
だから、親もわざわざ起こしに来ないはずだ。
なら電気をつけたのは誰か?
きっと妹の夏葉だな。
休みの日にはときどき、寝ている俺を起こすということをしたがるのだ、あいつは。
たぶんどこかの漫画に出てきた妹キャラの真似をしているだけだろう。
ふだんは俺と同じくらい寝ているのにな。
今回もその一環か。
めんどくさい。
無視してこのまま寝てよう。
別にいいさ。
今日は何の用事もないし。
昼前まで寝ていても構わないだろう。
夏休みなんだし。
「あ、あの。起きて――」
かすかに聞こえてくる声を無視して、俺は目をつむって寝ることを続ける。
部屋の電気を消しに行くのもめんどいからこのままにしておく。
あと、さっきから何か言っているけど俺にはかすかにしか聞こえてきていない。
耳にイヤホンをしてあるからな。
そうやらイヤホンをしたまま眠ってしまったらしいが、今はちょうど耳栓代わりになってくれている。
無視しているのに、なんども声をかけてくるのがわかる。
しつこい。
ああもう。
なんで今日はそんなにしつこいんだ。
いいかげん邪魔になって来た。
夏葉をどかせるため、俺は手を彼女がいるであろう方向へ持っていき、手で押す。
電気が眩しいから目をつむったままだが、だいたいの位置はわかる。
「どきなさい夏葉。兄はまだ寝ていたいんだ」
どん、と彼女に触れる。
予定だった。
しかし。
むにゅ、と。
なんか、妙に柔らかい感触が手に届いた。
うん?
なんだこれ?
なんか初めての感触。
やけに柔らかい。
しかしながら弾力もあるこの感じ。
「ひゃっ……!」
次いで短い悲鳴が届いた。
どっか変なところにでも触れたか?
あ。
わかった。
これ、あれか。
夏葉の腹か。
まったくいつの間にこんなに柔らかくなっちまったんだ。
夏休みだからといってダラダラしすぎた結果だな。
お仕置きとしてもう少し揉んでやるか。
もみもみ。
もみもみ。
「ふ、ふぁぁ……」
声が漏れてくる。
まったく。兄の快眠を邪魔するからこうなる。
そのまま夏葉の腹を揉んでいく。
しかしやけに柔らかい。
手のひらで覆えないほど大きいが、しかし指が沈み込むほど柔らかくて――。
……ん?
いやちょっと待て。
いくらなんでも柔らかすぎないか?
ていうか感触も少しおかしい。
腹って、一応筋肉あるよな?
こんなに沈み込むようにもめるわけがない。
ていうか、腹にしてはやけに小さいような……。
なにか。
なにか不審なものを感じた俺は、そーっと目を開ける。
目を開けて確認してみたところ――。
そこにいたのは、妹ではなかった。
そして、俺が触っていたのは腹でもなかった。
そこにいたのは妹の友人の三島留美ちゃん。
俺が触っていたのは、彼女の胸だった。
自分が何をしていたのかを理解して、さーっと血の気が引いた。
「あ、あの。お兄さん」
留美ちゃんが、震えた声で俺に話しかけた。
「わ、私。その。初めてなので。優しくお願いします」
「…………」
俺は無言で手を離した。
そしてイヤホンを耳から抜き、布団の上で正座をして、そこから背を丸めて手をついて頭を下げた。
それはいわゆる、土下座だった。
「申し訳ありませんでしたー!」
そして、その十分後。
「午前八時三十分。犯人逮捕」
「おい待て夏葉。シャレにならんからやめろ」
「シャレにならんことしたからな、クソ兄貴」
ベッドの上で土下座して謝った後、俺は夏葉と留美ちゃんと一緒にリビングに来ていた。
ちなみに、俺は正座だ。
床に。
理由はもちろん、先ほどの愚行によるものである。
「で、どうすんの? 警察行く?」
椅子に座って俺を見下ろす夏葉。
「夏葉ちゃん、いいよもう」
そしてほんな夏葉をどうどう、と留美ちゃんが抑える。
「お兄さんも寝ぼけていたんだから。仕方ないよ」
「いや寝ぼけてたとしてもおっぱいを触ることはしないでしょ」
「そ、それは……。でも、そういうこともあるかもしれないし」
わたわた、と慌てながら留美ちゃんがフォローしてくれる。
「それに、私が悪いの。固まっちゃって動けなかったから……」
「い、いや。留美ちゃんは悪くない」
俺は慌てて言葉を発する。
「寝ぼけて胸を触ってしまった俺の責任だ」
「うんまあ、それはそう。兄貴のせいだよ」
くそっ!
いったいなぜあんなことをしてしまったんだ俺は。
悔やんでも悔やみきれない。
冷静になっていれば、おっぱいとお腹を間違えるはずがないのに。
「誠に申し訳ございませんでした」
俺は再度、留美ちゃんに向かって土下座をする。
その様子を見て、夏葉が口を開く。
「あーあ。兄貴におっぱい揉まれちゃって、留美ちゃんもうお嫁に行けないなー」
「えっ……? 夏葉ちゃん?」
「まあまあちょっと黙ってて」
そして、何やら小さい声で会話をする二人。
数十秒後、話し終わった夏葉は再度俺に話しかける。
「兄貴、顔上げて」
「はい」
顔をあげ、正座に戻る。
「兄貴はさ、留美ちゃんのおっぱい揉んだわけだよね?」
「はい」
「おかげで留美ちゃんはお嫁にいけない体になってしまいました」
「はい」
「それじゃ、責任をとるしかないよね」
「え? 責任?」
いきなり現れた単語に面食らう。
「責任ていうのは」
「もちろん。男としての責任を取るってことよ」
男としての責任。
それはつまり――。
「お嫁に行けなくなった留美ちゃんのために。兄貴、責任とって留美ちゃんの彼氏になりなさい」
だいぶ暴論ではある。
しかし留美ちゃんも「よろしくお願いいたします……!」とこちらに頭を下げてきて、乗り気であるようだった。
被害者である彼女が責任としてそれを望んでいるのなら、加害者の俺としては受け入れるべきだ。
「わかった。よろしくお願いします」
そういうわけで、俺と留美ちゃんは付き合うことになった。
妹の友達のおっぱいを揉んだら、なぜか付き合うことになってしまった……!
俺と留美ちゃんが付き合って、十分後。
俺が交際を了承すると、夏葉は「それじゃーあとはお二人に任せて私は外に行ってきます」と言ってどこかに出かけて行った。
あいつ自由人過ぎる。
それに出かける際に、俺たちに向かって
「夕方までは帰らないからね。それまでは好きにしていていいから、ね」
と念押ししていたのも気になる。
何を期待しているのだ、あいつは。
うちは両親が共働きだから今は親もいない。
つまり、俺と留美ちゃんの二人きりの状況というわけだ。
「……」
「……」
俺たちは放置される形となって、二人でリビングにいた。
互いに話さない微妙な時間が流れる。
ええっと、どうしよう。
女子と付き合うのなんて初めてで、何をしたらいいのかわからない。
しかも経緯が経緯なだけに、余計に何をすべきなのかわからなくなる。
外にデートにでも行くか?
それとも家で遊ぶ?
とはいえ家で何をすればいいのか……。
「あ、あの。お兄さん」
一人悩んでいたら、留美ちゃんが話しかけてきた。
「あの、私、またお兄さんのお部屋に行ってもいいですか?」
「部屋?」
「はい。お部屋で、その――」
「何かしたいことでもあるの?」
「……はい」
こくん、と留美ちゃんはうなずく。
「じゃあ、行こうか」
二人で俺の部屋に行く。
しかし、何をしたいのだろうか。
別に面白い物なんて何もないのに。
ゲームはあるけど、複数人プレイする類のものではない。
一人用か、あってもオンラインプレイ用だ。
「お兄さん。いえ、春人さん」
部屋に来て、意を決したかのように、留美ちゃんは口を開く。
名前で呼ばれる。
付き合ってるわけだから、お兄さんじゃなくて名前で呼ぶことにしたらしい。
ちょっと、気恥ずかしいな。
「留美ちゃん。何?」
若干照れながらも、こちらも名前で呼んで返事をする。
そして――。
「春人さん。胸を触ってください」
と、留美ちゃんはそう言った。
「……え? 胸?」
「はい。お、おっぱいを……触ってください」
「はい!?」
何を言っているんだ!?
ていうか、なにをやっているんだ!?
「だって私たち、付き合ってるんですから」
「いや確かに付き合うことになったけど!」
「えへへ……。じゃあ、問題ないですよね」
「そういうわけじゃないと思うけど!?」
「さっきは寝ぼけて触ってもらいましたけど、今からは堂々と触っていただいて大丈夫です」
堂々と宣言する留美ちゃん。
大丈夫、なのか?
そんなわけないだろう。
「ま、まあ確かに付き合っているから触っても問題はないかもしれない。でもだからといって、触る必要があるわけじゃないから」
「え? 男の人は皆さん触りたいんですよね?」
留美ちゃんが不思議そうにそう尋ねてくる。
いや、まあ。
触りたくないと言ったら嘘になる。
嘘になるけども!
正直、めっちゃ触りたいけども!
「俺も男だ。触りたいという気持ちはある」
「でしたら」
「でもその、留美ちゃんはまだ中学生だから」
俺は留美ちゃんの申し出を断る。
いや、中学生のおっぱいを揉むとか。
バレたらそれこそ警察沙汰というか、やばい。
「私が子供だから、ダメなんですか?」
「そういうこと」
まあ、中学生とはいえ彼女は中三。
俺と二つしか離れていない。
彼女を子供と断ずるほど俺も大人な訳ではないが、ここは大人ぶることにしよう。
「……春人さん。私、年齢はまだ子供かもしれないですけど。でも」
留美ちゃんは自分の胸を掴んで、強調する。
その中学生とは思えないほど大きい胸を。
「胸だけは、大人だってよく言われますから。春人さんも満足していただけると思います」
「そういうことじゃない。体型の問題じゃない」
「あ、あと。その、けっこう柔らかいので、そこもアピールポイントです……」
「うん。知ってる」
さっき触ったからな!
今思い出してみると、めっちゃ柔らかくて気持ち良かった!
ていうか俺、さっき留美ちゃんのおっぱい触ってんじゃん!
なに理性的な男を演じてるんだ。
ここは自分の欲望に正直になっても見に行くべきじゃないか?
い、いや。ダメだ。
大切なのは、そう。彼女の気持ちだ。
きっと留美ちゃんは怒涛の展開に混乱しているだけなのだ。
俺に胸を触られて、その上付き合うことになって。
混乱するなという方が無理がある。
混乱して、突拍子もない行動をとっているに違いない。
「留美ちゃんはいいのか?」
「え? 何がですか?」
「俺なんかと付き合って、そのうえ体をさわられるってことだ」
「大丈夫ですよ?」
「……え?」
「私、春人さんのこと。好きですから」
「ええ!?」
驚きのあまり、大きい声を出してしまう。
「え、俺のこと好きだったの?」
「あ、当たり前ですよっ!」
「好きじゃなきゃあんな、胸を触ってもらうなんて。そんな恥ずかしいことできません……!」
留美ちゃんは、顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに口を手で覆いながら言う。
「それに、好きじゃなきゃ交際を申し込むこともしません」
そう、留美ちゃんは続けて言う。
ま、まあそりゃそうか。
「……」
しかし、そうか。
留美ちゃん俺のこと好きなのか。
気づかなかった。
「やっぱり。ダメですか?」
俺が呆気に取られて何も言わないでいると、留美ちゃんが不安そうに目を細めて泣きそうな表情になって訊いてくる。
「ダメって」
「体を触った責任を取れなんて。そんな卑怯な手段で付き合ってもらうことなんて、ダメですよね」
「あ、いや。そこら辺に関しては俺も了承したことだし」
「でも、春人さんは私なんかのことを好きなわけじゃないのに……」
留美ちゃんはそう言って下を向く。
「なんか、って。そんな卑下することないよ」
「でも」
「留美ちゃんは魅力的な女の子だよ。可愛いし、優しいし」
おっぱいも大きいし。
と、言いそうになったのを我慢する。
「とにかく、自信をもってくれ」
そう俺が言うと。
「じゃあ、春人さんは私のことが好きなんですか?」
上目づかいで留美ちゃんが訊いてきた。
「え」
俺が留美ちゃんのことを好きか?
それは……。
俺は戸惑いながらも、留美ちゃんを見る。
彼女は不安げにこちらを見ながら、瞳を潤わせている。
うん。
可愛い。
可愛すぎる。
正直――
「大好きだ」
「だ、だいす……!」
思わず声に出して言ってしまっていた。
「俺も、留美ちゃんのことが好きだ」
「えっ、じゃ、じゃあ」
ずいっと彼女がこちらに顔を寄せてくる。
「正式にお付き合いする、ということでいいんですよね?」
「もちろん」
そして、俺たちは責任云々が原因などではなく、互いに好きだということで付き合うことにした。
心機一転。
これからは普通の恋人として、節度ある付き合いを――
「じゃあ、おっぱいを触ってください」
「なんで!?」
驚きと共に、俺はまたツッコんでしまった。
え、あれ?
もう普通の付き合いをしていいんだよ?
なんでまた胸を揉むとかそういう話になっているんだよ。
「え? だって。付き合っているならおっぱいを触るものなんですよね?」
こてん、と首を傾けながら、留美ちゃんは不思議そうにする。
「……それ、誰から聞いたの?」
「夏葉ちゃんからお聞きしました」
あの妹のせいか。
俺は留美ちゃんに男女の正しい付き合い方を力説しようと思ったが。
よく考えると、互いに好き同士で付き合っているのだから。
別に何の問題もないことに気づいた。
というわけで、俺は留美ちゃんのおっぱいを触ることにした。
「大きい。そしてすっごい柔らかい……」
「こ、声に出して言わないでください。恥ずかしいですっ……!」
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