第7ターン『未来の種』
目を覚まし、いつものように顔を洗う。それからしばらくボーッと太陽を眺め、デッキを確認する。
毎度の如く行われるルーティーン。それをただ無心でこなしていた。
「ぼぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
ただずっとそう呟き続けていた。
その声に紛れ、電話の音が鳴る。
「ん?天崎か」
眠たい目を擦りながら携帯を手に取り、電話に出る。
「もしもし」
「巫、明日の正午にまたカードショップに来てくれ」
「竜王とかいう男が見つかったのか?」
「いや。赤月十夜の修行に付き合って欲しくてな。私はあまりこのカードゲームの相手は容易くはしないからな」
「分かりました。ですが俺が教えられることはあまりありませんよ」
「いいや。君は意外とこのカードゲームについて理解しているんだよ。それも無意識に。だから絶対に来てくれよ。あと遅刻はするな」
「それだけは約束する」
「じゃ」
電話は切られた。
ひとまず明日までにこのカードゲームについてもっと詳しく知っておく必要がある。
そう思った俺はいつも言っているカードショップとはまた別のカードショップへと訪れた。いつもより二駅分離れている場所だ。
「さて、強いカードでもあれば良いが」
七千円という金銭を握り、カードショップに並べられているカードを拝見する。しかしその中で欲しいと思えるものは高い。
買えるものはないかと店を徘徊していると、あるガチャガチャを見つけた。そのガチャガチャの説明書きを見て、俺は驚きに駆られる。
このガチャガチャにはあらゆるカードが入っています。そして中には序列上の召喚獣や魔法も入っています。
「100円でこれが引けるのか!?」
100円で1枚、なら2000円くらい使えば20枚。それなら一枚くらい序列上の召喚獣を手に入れられるのではないか?
そう確信した俺は100円を入れ、ガチャガチャを回す。
「さあ来い。序列上の何か」
そう強く願って出てきたカードをとる。
「『ヒノコ』……」
『ヒノコ』
火属性、序列下
攻撃力:2000、防御力:2000
「まあまあ一枚目だ。これからだ」
それから二十枚引いた。結果は惨敗。序列上のカードは一枚も手に入らなかった。
「まあそりゃそんな美味しい話はないか」
俺は頭をかきながら、カードショップを後にしようとした。だが俺の袖を掴み、一人の少女が俺を止める。
「お兄さん、カード落としたよ」
「あ、すまないな」
俺は少女からカードを受け取った。そのカードは『リザードマン』。
そういえばこのカードは既に家に五枚以上あるカードだったっけ。
俺は帰ろうとする少女を引き留めると、そのカードを少女へ向けて渡す。
「なあ少女よ。このカード、いるか?」
「良いの!じゃあ大切にするね」
少女はカードを受け取って嬉しそうにしていた。
「空崎さん。こっち来て。面白いカードあったよ」
少女を呼んでいるのか、三人ほどの少女が今俺の目の前にいる少女を大声で呼んでいる。
「それじゃお兄さん、ありがとね」
「ああ。強くなれよ」
「うん。世界ランキングにのるくらい強くなるよ」
「たくましいな」
そんな会話を交えた後、少女は去っていった。
俺は十九枚のカードをポケットにしまい、カードショップを後にする。
「さて、まあ後はネットで調べるか」
俺は明日に備え、カードゲームの準備をする。
後日、俺は正午きっかりにカードショップへと向かった。そこには既に天崎と赤月十夜が待っていた。
「相変わらず早いな」
「巫、相変わらず一番最後だな。十夜はもう戦う準備はできているぞ。早くしろ」
俺は急いでデッキを取り出して、十夜の前に座る。
「それじゃあ始めようか。二度目の戦いを」