第6ターン『赤月家の刺客』
「へえ。君、強いね。さすがは世界一位の天崎となぜか仲が良いだけはあるね」
そう少年は俺をおだてるものの、この勝負はほぼギリギリの戦いだった。負けていてもおかしくはなかった。
「なあ、もし俺が負けていたら何をするつもりだったんだ?」
「もし君が負けていたら、そこにいる十夜を連れて帰ろうと思ったんだけど、この僕が負けてしまったんだ。連れ戻すのはまた今度にするよ」
「また来るってことか」
「そうだよ。でも次来るのは僕じゃないかもね。僕は赤月家の中ではあまり強い方ではないんだ。だから僕よりもっと強い人が来ると思うよ」
この少年よりも強い人がいるのか。
この少年との戦いでギリギリだったのに、その人が来たら俺は恐らく勝てるだろうか。
「それじゃ最後に名乗っておくよ。僕は赤月九尾。そこにいる赤月十夜と同じ一族さ。それじゃあね。十夜、そしてお兄さん」
少年はこの場から去っていく。
赤月家、聞きたいことは色々あるけれど、その話は俺が遅刻している間にしてしまったのだろう。
「天崎、これからも来るとか言っていたが、その時はまた俺が戦うのか」
「十夜、彼が戦えないというのなら、君が戦ってくれ。私が戦うことはほぼないと思ってもらっても構わない」
「そ、そうか。それより聞きたいんだが、赤月家って何のために十夜を狙っている?それくらいは聞かせてくれ」
「話はしないとーー」
「ーーいや、やっぱ話すよ。師匠には言わないといけない。なぜ俺が狙われているのか」
その重い口を、彼はゆっくり開いた。
「俺は赤月家が保有しているとあるカードを盗んだ。そしてそのカードを取り返すために赤月家は俺を狙っている」
「そんな貴重なカードなのか?」
「貴重どころの話じゃないさ。世界でたった一枚しかない超レアなカードだ」
「つまりそれを取り返そうとってことか」
「ああ。でも、そのカードを持っているのは俺じゃない。そのカードを俺は奪われたんだ」
「世界でたった一枚のカードを、奪われた!?」
さすがに驚きが隠せず、俺は声を大にしてそう口にしていた。
「誰にだ」
「確かその男は自分を"竜王"と名乗っていた。俺はそいつにカードゲームを挑み、そして奪われた」
「だが赤月家にそれを話せば狙われずに済むんじゃないのか」
「それだけは駄目だ。もしそんなことが知られたら、俺はどんな目に遭わされるか分からない。だから俺はその男を見つけ出してカードを奪い返さなきゃいけない」
「そういうことか。色々と話は見えてきたけど、随分と厄介な仕事だね。だってこの広い世界からその"竜王"とか言う男を見つけなきゃいけないんだろ」
「それでも取り戻さなきゃいけない」
十夜は必死に話している。
だがなぜ天崎がこの事に協力的なのか、いまいち理解しがたい。やはり天崎は良い奴なのか?それとも他の狙いがあったりするのか?
「何だ?私をじろじろと見て」
「いや、なんでもない」
「まあその男については私やこいつが調べておく。だから巫はデッキの構築やら色々して戦いに備えておけ」
「分かった」
「それじゃあ今日はこれで解散だ。次集まる日程については電話するから。絶対出ろよ。巫」
「分かってるって」
そしてそこで解散し、俺は電車に乗って家に帰っていた。
家に帰り、ふと携帯を眺める。
着信履歴が何件かあるらしい。そういえば天崎が電話したとか言っていたな。
その着信履歴を開く。そこで画面にはこう表示された。
『着信履歴が28件あります』
「かけすぎだろ」