第36ターン『竜王前戦(クリスマス・イブ)』
クリスマスイブ。
その日まで、巫一色は死ぬ気で姉の神原メアリーみぞれから『Summoned Beast and Magic』について教わってきた。
そして今日、その成果をぶつける相手と、巨大なクリスマスツリーの下で、巫は向かい合っていた。
公式戦。
それは世界ランキングの変動をかけた大勝負。
もしその勝負に勝ったとすれば、勝者の順位は敗者の順位よりも上に繰り上がる。
「巫。逃げずに来たか」
「それはこっちの台詞です。天崎」
二人は向かい合い、見つめ合う。
「では始めよう。巫」
「はい」
ーーこれが、多分最後の勝負になる。
「先攻はお前からで良いぞ。巫」
「はい」
1ターン目
巫のターン。
「戦場魔法『炎上網』を設置。次に『ヒノコ』を召喚。タイムエンド」
『ヒノコ』
序列下、火属性
攻撃力2000、防御力2000
2ターン目
天崎のターン。
「『ラビット』を二体召喚」
『ラビット』
序列下、光属性
攻撃力2000、防御力2000
「戦場魔法『トリックルーム』を設置」
『トリックルーム』
序列上、無属性
効果:バトルタイム時、召喚獣同士のバトルは攻撃力、防御力の小さい方が強いとする。
「バトルタイム。『ラビット』で攻撃」
「攻撃魔法『ネオファイアー』」
『ネオファイアー』
序列下、火属性
効果:攻撃力3000以下の召喚獣一体破壊する。
「現在攻撃している『ラビット』を破壊」
「もう一体の『ラビット』で攻撃」
「直接受ける」
「タイムエンド」
現在、天崎、一回の直接攻撃を受ける。
3ターン目
巫のターン。
「『リザードマン』と『フレイムタウロス』を召喚」
『リザードマン』
序列中、火属性
攻撃力6000、防御力5000
『フレイムタウロス』
序列中、火属性
攻撃力7000、防御力4000
「ここに来て攻撃力の高い召喚獣の量産?」
「『ファイアードロー』」
『ファイアードロー』
序列下、火属性
効果:自分の火属性の召喚獣の数だけ、デッキから一枚ドローする。
「俺の火属性召喚獣は三体。よって三枚ドロー」
一枚まで減った手札は、その魔法によって四枚まで補充される。
それにより巫の手数は増える。
「バトルタイム。『フレイムタウロス』で攻撃」
「防御魔法『対火炎陣』」
『対火炎陣』
序列中、火属性
効果:このターンの間、火属性召喚獣の攻撃を無効化する。
「そう来たか。タイムエンド」
このターン、巫は一度の直接攻撃でもできず、ターンを終えた。
五回の直接攻撃をしなくてはいけないため、このターンで一度は直接攻撃をしたかった巫は焦る。
4ターン目
天崎のターン。
「『フォックス』を召喚」
『フォックス』
序列下、光属性
攻撃力3000、防御力4000
「タイムエンド」
5ターン目
巫のターン。
「『赤甲獣カッコウ』を召喚」
『赤甲獣カッコウ』
序列中、火属性
攻撃力8000、防御力5000
特殊効果:この召喚獣を召喚したターン、自分の召喚獣の攻撃力を+2000する。
「続いて『ドロー3』」
『ドロー3』
序列中、無属性
効果:デッキから三枚ドローする。
「バトルタイム。『赤甲獣カッコウ』で攻撃」
「何か企んでいるな。だが受けてやる。『ラビット』で防御」
『ラビット』の防御力は2000。
『赤甲獣カッコウ』の攻撃力は8000+2000+4000で14000。
戦場魔法『トリックルーム』により、攻撃力の低い方が強い方となっているため、破壊されるのは『赤甲獣カッコウ』。
だがーー
「攻撃魔法『エクストラフレイム』」
『エクストラフレイム』
序列中、火属性
効果:相手の戦場魔法をひとつ破壊する。
「この魔法により、『トリックルーム』を破壊する」
「なるほど」
『赤甲獣カッコウ』の攻撃により、『ラビット』は破壊される。
「続けて『リザードマン』で攻撃」
「攻撃魔法『ネオファイアー』」
『ネオファイアー』
序列下、火属性
効果:攻撃力3000以下の相手の召喚獣一体を破壊する。
「この魔法により『ヒノコ』を破壊」
「『リザードマン』の攻撃はどうする」
天崎にはまだ『フォックス』という召喚獣がいる。
だが俺はまだ『フレイムタウロス』がいる。
「直接受ける」
「『フレイムタウロス』も続け」
「『フォックス』で防御」
『フォックス』は破壊される。
これにより天崎の戦場には召喚獣はいなくなった。
「タイムエンド」
6ターン目
まだ両者ともに一回のみの直接攻撃を受けている。
それほどまでに、この戦いは強者同士、頂上決戦と言っても過言ではないほどの戦いであった。
「そろそろ仕掛けるか。『ホーリーナイト』を召喚」
『ホーリーナイト』
序列中、光属性
攻撃力7000、防御力3000
「戦場魔法『聖殿』を設置」
『聖殿』
序列中、光属性
効果1:自分のターン終了時、自分の光属性の召喚獣を一体回復させる。
効果2:バトルタイム時、自分の光の召喚獣の攻撃力、防御力を+2000する。
「厄介な戦場魔法だな」
「ああ。だけどこれで私のターンは終わらない。『聖女リリシア・フリーゼ』を召喚」
『聖女リリシア・フリーゼ』
序列上、光属性
召喚条件:戦場に戦場魔法『聖殿』がある時
攻撃力6000、防御力8000
特殊効果(聖女の加護):この召喚獣と同じ属性の召喚獣は常に攻撃力、防御力ともに+1000。
必殺技:???
「バトルタイム。『ホーリーナイト』で攻撃」
巫には防御できる召喚獣がいない。
「借りるよ、メアリー姉さんの魔法。『フリーズアウト』」
『フリーズアウト』
序列中、氷属性
効果:相手の召喚獣一体をこのターンの間、行動不能にする。
「『聖女リリシア・フリーゼ』を指定。そして『ホーリーナイト』の攻撃は直接受ける」
これにより、巫は二度目の直接攻撃を受けることになった。
「タイムエンド」
タイムエンド時、『聖殿』の効果発動。
効果1:自分のターン終了時、自分の光の召喚獣を一体回復させる。
「『ホーリーナイト』を回復」
7ターン目
巫にとって、現在の状況は惜しい状況であることに間違いはなかった。
「ここで攻める。『赤甲火獣グレンカッコウ』を召喚」
『赤甲火獣グレンカッコウ』
火属性、序列上
召喚条件:自分の火属性の召喚獣が戦場に1体以上いる時
攻撃力:12000、防御力:9000
特殊効果1:この召喚獣を召喚したターン、自分の召喚獣全てを攻撃力+3000する。
特殊効果2(紅蓮):この召喚獣の攻撃で相手の召喚獣を破壊した時、その召喚獣と序列が同じ召喚獣を破壊する。
必殺技(発動可能時:バトルタイム)
紅蓮灼熱砲:攻撃力18000以下の相手の召喚獣を破壊する。
「もう来たか。早いな」
「バトルタイム」
巫の召喚獣は『赤甲火獣グレンカッコウ』『赤甲獣カッコウ』『リザードマン』『フレイムタウロス』の四体。
天崎の召喚獣は『ホーリーナイト』と『聖女リリシア・フリーゼ』の二体のみ。
「『赤甲火獣グレンカッコウ』で攻撃」
攻撃力は12000+3000+4000で19000。
「直接受ける」
「続いて『リザードマン』で攻撃」
「『ホーリーナイト』で防御」
『リザードマン』の攻撃力は6000+3000+4000で13000。
対して『ホーリーナイト』の防御力は3000。
『ホーリーナイト』は破壊される。
「まだ終わらない。『フレイムタウロス』で攻撃」
「直接受ける」
「『赤甲獣カッコウ』で攻撃」
「直接受ける」
このターンで二回の直接攻撃をし、これで合計三回の直接攻撃を行った。
だが、次のターン、防御できる召喚獣はいない。
「タイムエンド」
8ターン目
天崎のターン。
「『ホーリーナイト』を二体召喚」
『ホーリーナイト』
序列中、光属性
攻撃力7000、防御力3000
「バトルタイム。『ホーリーナイト』でーー」
「ーー防御魔法『フリーズドライ』」
『フリーズドライ』
序列上、氷属性
効果:このターンを終了させる。
「すべての召喚獣で攻撃したということは、その魔法を持っていると、確信していたよ。巫」
天崎は手札から一枚の魔法を取り出した。
その魔法は『サクリファイス』。
『サクリファイス』
序列上、光属性
効果:自分の召喚獣一体を破壊することで相手の魔法を無効化する。この効果で魔法を無効化した時、破壊した召喚獣で攻撃をし、その後その召喚獣は墓地に送る。
「このターンで終わらせるぞ。巫」
「ーーいえ、まだですよ」
巫は手札から一枚、カードを取り出した。
それはまるでーー
「『サクリファイス』」
「何!?」
天崎の『サクリファイス』を、更に『サクリファイス』でかき消した。
「天崎、俺はあなたを越える。だからこの勝負、勝つ」
巫は『リザードマン』を破壊することで天崎の『サクリファイス』を無効化し、その上『リザードマン』で直接攻撃をした。
これで直接攻撃をした回数は四回。
「残り一回か……」
天崎の『サクリファイス』が巫の『サクリファイス』で無効化されたことにより、『フリーズドライ』の効果は消えない。
つまりこのターンは終了する。
9ターン目
巫のターン。
「まさか本当に師匠を越えてくるとはな。巫」
現在、天崎の手札は一枚。
召喚獣は『ホーリーナイト』二体と『聖女リリシア・フリーゼ』の三体。
巫は『赤甲火獣グレンカッコウ』『赤甲獣カッコウ』『フレイムタウロス』の三体。
「攻撃魔法『手札クラッシュ』」
『手札クラッシュ』
序列中、無属性
効果:相手は手札から二枚墓地に送らなければいけない。
これで天崎の手札はゼロ枚に。
「天崎、行きます」
「ああ。来い」
「『赤甲火獣グレンカッコウ』で攻撃」
「『聖女リリシア・フリーゼ』で防御する」
『赤甲火獣グレンカッコウ』の攻撃力は12000+3000で15000。
『聖女リリシア・フリーゼ』の防御力は8000+1000+2000で11000。
「敵わないか……」
『聖女リリシア・フリーゼ』は破壊される。
「続けて『フレイムタウロス』、『赤甲獣カッコウ』で攻撃」
「『ホーリーナイト』二体で防御」
『ホーリーナイト』は二体とも破壊される。
これで天崎の召喚獣は再びゼロに。
だが巫の召喚獣は全て仮眠状態にーー
「回復魔法『回復』。自分の召喚獣一体を回復させる。この魔法により『赤甲火獣グレンカッコウ』を回復させ、攻撃」
「本当に越えたか……。直接受ける」
これで五回目の直接攻撃。
つまり勝者はーー巫一色。
全ては終わる。
やがてクリスマスイブが終わるように……