第27ターン『呪う者』
巫一色VS黒魔導呪言
1ターン目
黒魔導呪言のターン
「我から参ろう。『呪言師』を二体召喚」
『呪言師』
序列下、闇属性
攻撃力:5000、防御力0
「防御力0か。面白い召喚獣だな」
「それが闇属性であるからして」
「もう一体ぐらい召喚しないのか」
「初手で無駄に召喚獣は出さないよ。魔法は警戒している。あなたの戦い方は黒島との勝負で見ている。火属性は召喚獣破壊のカードが多い」
それが火属性の得意分野。
「だからここは、タイムエンドです」
2ターン目
この勝負は、必ずしも先攻か後攻、どちらかが有利ということはない。
勝敗はほぼ運によって決まる。
当然デッキの構築が上手ければ上手いほど、その運も引き寄せやすくはなる。
「まずはドロータイム。そしてサモンズタイム」
俺の手札には既に序列上の召喚獣『赤甲火獣グレンカッコウ』がある。
最初から手札にあるというのは運が良い。
「『ヒノコ』、『フレイムタウロス』を一体ずつ召喚」
『ヒノコ』
序列下、火属性
攻撃力2000、防御力2000
『フレイムタウロス』
序列中、火属性
攻撃力7000、防御力4000
敵の防御力は0。
攻撃し放題ということか。
「バトルタイム。『フレイムタウロス』で攻撃」
「直接受ける」
「続けて『ヒノコ』」
「直接受けよう」
これで直接攻撃二回。
しかしおかげで俺の召喚獣は全て仮眠状態。
「タイムエンド」
3ターン目
「まずは戦場魔法『呪言の墓』を設置」
『呪言の墓』
序列上、闇属性
効果1(呪命):自分の『呪言』とつく召喚獣が破壊された時、破壊した召喚獣を破壊する。
効果2(逆呪命):自分の『呪言』とつく召喚獣が相手の召喚獣を破壊した時、墓地から『呪言』とつく召喚獣を戦場に回復状態で復活させる。
「それでは行きますよ。このターンであなたの命を少し削りましょうか」
黒魔導は一体も召喚することなく、バトルタイムへと移行した。
「バトルタイム、『呪言師』で攻撃」
「直接受ける」
「続けて『呪言師』で攻撃」
「直接受ける」
お互いに二回の直接攻撃を受けた。
これで互いに一進一退の状況。
「タイムエンドです」
4ターン目
そろそろ『グレンカッコウ』を出すべきか。
いや、まだ闇属性がどのようなカードがあるのか分からない以上、ここでむやみに召喚獣を出すわけにはいかない。
ここは、軽く攻める。
「まずは戦場魔法『炎上網』を配置」
『炎上網』
火属性、序列中
効果:戦場にいる火属性の召喚獣一体につき、火属性の召喚獣の攻撃力を+1000する
これで俺の残り手札は四枚。
「続いて二体目の『フレイムタウロス』を召喚」
ここは防御できる召喚獣を残すべきか。
いや、火属性召喚獣は防御力に乏しい。攻められる内に攻めなきゃ。
「バトルタイム」
「来ますか」
「『フレイムタウロス』で攻撃」
「直接受けましょう」
「続けてもう一体の『フレイムタウロス』で攻撃」
「それも直接です」
残り一回直接攻撃をすれば俺の勝ち。
だが奴の手札はまだ四枚ある。ここでとどめを刺せなければ、次のターンで直接攻撃を多く受ける。
手札に攻撃魔法はあるものの、用心しなくてはいけない。
闇属性は未だ、未知なのだから。
「タイムエンド」
5ターン目
「来ないのですか。詰まらないですね」
黒魔導はドローしながら、退屈そうに呟いた。
「あなたが本当に黒島を倒したとは思えません」
黒魔導は召喚獣を召喚した。
「出でよ。我が盟約に従いし呪言の王。『呪言冥命師』を召喚する」
『呪言冥命師』
序列上、闇属性
攻撃力8000、防御力0
特殊効果(呪殺):この召喚獣が防御した召喚獣を破壊する
必殺技:???
「それでは始めましょう。呪言の呪いを」
俺は察した。
今戦場には呪言に関する魔法がいくつもある。
そして現在、自分の首にはナイフが突きつけられているように、追い詰められている。
このデッキはまるでーー死神だ。
「バトルタイム。『呪言師』で攻撃」
「まずいーー」
ーーーー巫、私を必ず倒してくれよ
「天崎……」
ふと天崎の声が俺の脳裏には響いた。
そうだ。俺はこんなところで負けてはいられない。
俺は冷静に戦場を見渡す。
一度でも選択を間違えれば、相手の復活の連鎖により、ここでとどめを刺される可能性が高い。
もしくは、相手が自ら自分の召喚獣を破壊する、という行動をとる可能性がある。その前に一体でも沈める。
「攻撃魔法『ダブルフレイム』。攻撃力6000以下の召喚獣二体を破壊する。つまりは、『呪言師』二体を破壊」
魔法での破壊の場合、俺の召喚獣は破壊されない。
次に相手の戦場魔法を破壊したいが……
手札を眺め、そのカードを見つける。
「『エクストラフレイム』」
『エクストラフレイム』
序列中、火属性
効果:相手の戦場魔法をひとつ破壊する
「この魔法により、『呪言の墓』を破壊する」
これで呪言の連鎖が来ることはなくなった。
ーーはずなのに、黒魔導は平生と保ったまま手札を見ていた。それも残り一枚となった俺の手札を。
「仕方ない。これを使おう。特殊魔法『バキューム』」
ここに来て、何の魔法だ?
「『バキューム』の効果。相手の手札から一枚取り、もし召喚獣だった場合は自分の召喚獣として戦場に召喚する。それ以外の場合、相手の墓地に送る」
「は!?」
「一枚だけ取らせてもらいますよ。とはいっても、あなたの手札は残り一枚ですか」
待て、待て……。
俺の手札は残り一枚。
そしてそのカードは、『赤甲火獣グレンカッコウ』のカード。
つまり、この召喚獣を奪われる!?
「貰いますよ」
黒魔導は俺のカードを手に取り、微笑んだ。
そしてそのカードを自分のカードのように戦場に召喚した。
「『赤甲火獣グレンカッコウ』を召喚」
ーー奪われた
俺の召喚獣を。
『赤甲火獣グレンカッコウ』
火属性、序列上
召喚条件:自分の火属性の召喚獣が戦場に1体以上いる時
攻撃力:12000、防御力:9000
特殊効果1:この召喚獣を召喚したターン、自分の召喚獣全てを攻撃力+3000する。
特殊効果2(紅蓮):この召喚獣の攻撃で相手の召喚獣を破壊した時、その召喚獣と序列が同じ召喚獣を破壊する。
必殺技(発動可能時:バトルタイム)
紅蓮灼熱砲:攻撃力18000以下の相手の召喚獣を破壊する。
「そう悲しまないでくださいよ」
運を引き寄せるためにはカードをどのようにして使うか、それが問われる。
恐らくこの男は最初から狙っていたんだ。このターンで魔法を使わせ、残った一枚が召喚獣であることに賭け、この魔法を使った。
「タイムエンド。次はあなたのターンですよ」
「これが……お前の戦い方か……」
「ええ。これが我の闇属性。闇は全てを飲み込むのデス」
6ターン目
ここで反撃を。
だがそれは『赤甲火獣グレンカッコウ』を倒す、ということになる。
生憎、俺のデッキには序列上の召喚獣は一体のみ。
それでこの状況を挽回できるか。
「あーあ。もう終わりですか」
「……ドロータイム」
引いたカードは、『ドロー2』。
それを使用し、デッキから二枚ドローする。
「あなたの手札はその二枚ですか。追い込まれましたか」
「いいや。そうでもないさ」
俺は残り一枚のカードを手にし、それを戦場に召喚する。
「良く来てくれたな。『赤甲獣カッコウ』」
『赤甲獣カッコウ』
火属性、序列中
攻撃力8000、防御力5000
特殊効果:この召喚獣を召喚したターン、自分の召喚獣全ての攻撃力を+2000する。
「へえ。まだ希望があると?」
「希望ならある。ここで押しきる」
「来てください」
俺の召喚獣は全て『赤甲獣カッコウ』の効果により+2000。
その上戦場魔法により、攻撃力は+4000。
つまり、全召喚獣が攻撃力+6000。
「ここで決めなきゃ、俺はもっと上には行けないんだ」
「上を目指しますか」
「だからお前につまずいている暇は、ない」
俺は『赤甲獣カッコウ』に触れる。
「攻撃だ。『赤甲獣カッコウ』」
「残念ですが、あなたのターンはここで終わりです」
「何!?」
「防御魔法『フリーズドライ』。このターンを終了させる」
「そんな……」
「その攻撃は『呪言冥命師』で防御しましょう」
『呪言冥命師』の防御は0。当然『呪言冥命師』は破壊される。
しかし『呪言冥命師』が持つ特殊効果により、『赤甲獣カッコウ』も犠牲になる。
そして、俺のターンは終わったーー
7ターン目
「戦場魔法『暗黒四天王山』を設置」
それは一度目にしたことのある光景。
その戦場魔法が出たということは、あの召喚獣が出るということ。
「では半魔様より頂いたいこの召喚獣の降臨の時間だ。宵闇の中を掻き分けて、悪夢に更なる悪夢を重ねて現れよ。暗黒の蛇帝『暗黒四天王ゴルゴオン・ピュア』を召喚」
『暗黒四天王ゴルゴオン・ピュア』
序列上、闇属性
召喚条件:戦場に『暗黒四天王山』が設置されている時
攻撃力14000、防御力9000
特殊効果1(暗黒の冠):この召喚獣が相手の召喚獣を破壊した時、相手に直接攻撃をする。
特殊効果2:この召喚獣が相手に直接攻撃した時、墓地から一枚序列中以下の召喚獣を戦場に復活させ、相手の召喚獣一体を指定して2ターン動けなくする。
「まだ序列上の召喚獣を持っていたというのか……」
「二枚じゃない。序列上の召喚獣は最低三枚は入れておかないとね。でないと強者には敵わない」
俺のデッキには序列上の召喚獣は一体しかいない。
そしてそれは今奪われている。
「ではバトルタイム。行け、『赤甲火獣グレンカッコウ』」
この召喚獣の恐ろしさは自分が一番知っている。
だからこそこの召喚獣の攻撃は、恐ろしいーー
「『ヒノコ』で防御する」
大きな差がそこにはあった。
ーーだからこそ、その召喚獣を知り尽くしている俺だからこそ、何で防御すべきかはよく分かる。
「これでは特殊効果が発動できないです。やっぱ効果の内容は熟知しているのですね」
「当たり前だ」
「タイムエンドです」
8ターン目
俺は何もせず、ターンを終える。
9ターン目
黒魔導は『呪言師』を一体召喚し、タイムエンド。
10ターン目
俺はカードをドローする。
「来た。ようやくお前を倒せる」
「何が来たというんだ」
「出でよ。『グレンカッコウ』を討つに相応しき召喚獣ーー『赤甲獣カッコウ』を召喚」
『赤甲獣カッコウ』
火属性、序列中
攻撃力8000、防御力5000
特殊効果:この召喚獣を召喚したターン、自分の召喚獣全ての攻撃力を+2000する。
「リベンジマッチだ。『フリーズドライ』は序列上の魔法。つまりデッキには一枚しか入れられない。俺を止めることができるかな」
「来るが良い」
「バトルタイム。『赤甲獣カッコウ』で攻撃だ」
「『呪言師』でーー」
「させない。特殊魔法『チェインバトル』。この魔法により、この召喚獣の相手を指定することができる。相手は『赤甲火獣グレンカッコウ』、お前だ」
「まずい……」
『赤甲火獣グレンカッコウ』の防御力は9000。
対して『赤甲獣カッコウ』の攻撃力は8000+2000+4000の14000。
「倒せ。『グレンカッコウ』を」
『赤甲火獣グレンカッコウ』の防御力を『赤甲獣カッコウ』が上回ったために、『赤甲火獣グレンカッコウ』は俺の墓地へと送られる。
「ようやく戻ってきたな。『グレンカッコウ』」
俺は今、闘志に満ち溢れていた。
だってようやく、ここでとどめを刺せるのだから。
「続けて『フレイムタウロス』で攻撃」
「『呪言師』で防御」
『呪言師』は破壊される。
「続けて『フレイムタウロス』」
「『ゴルゴオン・ピュア』で防御」
『ゴルゴオン・ピュア』も同じく破壊される。
これで黒魔導を護る召喚獣は一体もいなくなり、そして俺の召喚獣は一体残っていた。
「とどめを刺せ。『ヒノコ』」
「ここまでか……。直接受ける」
五回目の直接攻撃が炸裂する。
それによる、この勝負は俺の勝利で終わった。
今回のピックアップカード
『バキューム』
序列上、闇属性
相手の手札から一枚取り、もし召喚獣だった場合は自分の召喚獣として戦場に召喚する。それ以外の場合、相手の墓地に送る。