第24ターン『伝説の激突』
「天崎、俺、勝ったよ」
「ああ。さすがは私の弟子だ」
接戦の末、俺は黒島美麗に勝利した。
相手は強かった。何かひとつでも選択を間違えていたら、勝利することはなかっただろう。
苦戦からの解放、勝利への安堵に浸る。
「巫の勝負も終わったし、私はそろそろ行くとするよ」
「見ていっても良いですか。是非見させてください。天崎の戦い方を」
「ああ良いよ。映像越しでしか見られないが、九階に行けば見られる。だからそこで私のことを応援してくれよな」
「はい」
天崎は早々に会場へと向かっていく。
「メアリー姉さん、九階に行こ」
「ああ。それよりも一色、彼女とは知り合いなのか?」
「天崎は俺の師匠です」
「師匠か。なるほど。まさか世界ランキング1位の彼女に弟子入りするとは、お前も相当なプレイボーイになったじゃないか」
メアリー姉さんは俺の頭をポンポンと叩いた。
「いえ。偶然ですよ」
ふと弟子になった日のことを思い出す。
あの日のことは今でも覚えている。
どうして俺が選ばれたのだろう。
あの日あの時、もしあの場所にいなかったら、俺は今頃世界ランキングに載ることもなく静かにこのカードゲームで遊んでいただろう。
それが今では、俺は上を目指して進んでいる。
天崎には、返せないほどの恩がある。だから俺はあの人の戦い方を見てみたい。
あの人はどんな戦い方をするのか、少し気になっている。
「ならその師匠の戦い方を見ておこうか」
「はい」
俺はメアリー姉さんと一緒に九階へ上がっていた。
そこには既に何百人と人が集まっていた。
「たくさん集まってますね」
「一色、私は君に世界1位の戦いを見たかったからここへ来たんだ。きっとここに集まっている人も同じだろう。世界1位に君臨できる程の逸材がどれほどの運と実力を持っているのか、皆気になっているんだ」
メアリー姉さんもワクワクしているようだった
「もうすぐ始まる。席につこう」
椅子に座り、俺はモニターに映っている天崎を見ていた。
対戦相手は知らない男の人だ。
「メアリー姉さん。天崎の相手は誰なんですか?」
「彼は世界ランキング5位半魔紫咲」
「半魔?そういえばさっき戦った黒島という女性も半魔という名前を言っていましたね」
「同一人物だ。闇属性、それは最近彼によって生み出されたものであり、その上闇属性を扱えるのは彼だけだ。そのため、闇属性は半魔紫咲だけのために作られたといっても過言ではないな」
たった一人のために属性が作られるとは、このカードゲームはどうかしてしまったのだろうか。
黒島の闇属性デッキと戦って思ったことがある。
倒せない、というほどにぶっ飛んだ能力はなかった。ただ強い能力の代わりに、弱点が必ずあった。
これなら天崎も勝てるのではないか。
「天崎、頑張れよ。俺なんかに応援されるほど弱くはないだろうけど」
俺は勝負が始まるのを静かに待っていた。
ただ楽しみだった。
多分、初めて見る。
師匠が他の人と戦っている姿を。
現在モニターの向こう側では、天崎と半魔が向かい合って座っていた。
お互いにデッキを戦場に起き、デッキから五枚カードをドローする。
世界ランキング1位VS世界ランキング5位の戦い。
一体どのような戦いが繰り広げられるのだろうか。
「天崎召部。今回こそはお前に勝つ。この闇火デッキで」
「私のためだけに闇属性を用意してくれたんだろ。楽しみだよ。そのデッキが私を倒すことができるのか」
天崎は相変わらず堂々としていた。
「では始めようか。世界ランキング変動をかけた公式戦を」
今始まる。
強者同士の圧倒的な戦いが。
運も、実力も兼ね備えた最強の二人が今ぶつかる。