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Summoned Beast and Magic  作者: 総督琉
赤月プロローガー
12/38

第11ターン『仇討ちの代行者』

 師匠が一輝とのバトルを始めてしまった。

 赤月一輝、彼は世界ランキング13位。世界ランキングに載るだけでも凄いが、13位という順位まで上り詰めるのには相当な実力と運が必要だ。

 一輝にはそれがある。


「師匠……」



 1ターン目、師匠のターン。

『リザードマン』と『火の鳥』、『ヒノコ』を一体ずつ召喚。そしてタイムエンド。


 2ターン目、一輝のターン。

『リザードマン』を二体召喚。

 そして二体で攻撃。師匠はどちらの攻撃も直接受けた。


「へえ。いきなり直接攻撃を二回も受けて大丈夫?」


「へっちゃらさこのくらい」


「タイムエンド。楽しみだよ。次の君の攻撃が」



 3ターン目

 師匠はデッキから一枚ドローし、そのカードを長らく眺めていた。


 良いカードを引いたのか、それとも悪いカード?

 真相は分からないまま、師匠は召喚獣を一体も召喚せずバトルタイムに移った。


「『ヒノコ』、攻撃せよ」


「攻撃魔法『ネオファイアー』。攻撃力3000以下の召喚獣を破壊する。よって攻撃力2000の『ヒノコ』を破壊する」


「タイムエンド」


 師匠は一回も直接攻撃できなかった。

 やはり一輝は強い。


 4ターン目


 一輝はカードをドローし、微笑んだ。

 そのカードを眺めながら、一輝は話し始める。


「このカードゲームは大きく分けて二種類の人間がいる。ひとつは召喚獣を多く入れて速攻で勝負を決めようとする戦術。もうひとつは魔法を多く入れ、トリッキーな攻撃を重視する戦術のふたつ」


「で、俺はどっちなんだ?」


「君は三番目。最も理解できないタイプだ」


「というと?」


「魔法も召喚獣も均等に入れている。たった4ターンでお前の戦術くらいは見抜けるさ。だがその戦術は最も無意味なものだ。バランス型が一点突破型に勝てるはずがない」


 そう言って、一輝は手札からカードを一枚取り出し、そのカードを戦場に投下した。


「来い。『炎龍ヴァルムンク』」


『炎龍ヴァルムンク』

 召喚条件:火属性の召喚獣が一体以上戦場にいる時

 攻撃力:14000、防御力:12000

 特殊効果(灼熱円):戦場にいる火属性を持つ全ての召喚獣は攻撃力+2000。


「そして序列上の召喚獣の登場だ」


「まさか……」


 なぜ序列上の召喚獣を召喚したのか。

 ではその後に出される召喚獣とは何なのか。

 俺はそれに心当たりがあった。


 一度その召喚獣に圧倒的力を見せつけられたからこそ、俺はその召喚獣が出る、ということを予想していた。


「召喚条件、自分の序列上の召喚獣が戦場に一体以上いる時。召喚条件クリア。よってこの召喚獣を戦場に召喚する」


 一輝はある召喚獣を戦場に出現させた。


「八つの尻尾を持つ者よ。今戦場を破壊せよ。『赤月十将《壱》シロノコギツネ』」



『赤月十将《壱》シロノコギツネ』

 序列上、火属性

 召喚条件:序列上の召喚獣が一体以上戦場にいる時

 攻撃力:16000、防御力:13000

 特殊効果1(十将印):この召喚獣が持つ属性の魔法の効果は受けない

 特殊効果2:???

 必殺技:フォックスフレア



「もう引いたのか!?」


 同じ序列上の召喚獣はデッキに一枚のみしか入れられない。というのに、そのたった一枚をたった4ターンで引くなんて……。

 強運、いや超運。


「さて、序列上の召喚獣も出揃ったところだし、そろそろ本気で潰そうかな」


 師匠が直接攻撃を受けられる回数は三回。

 しかし一輝の召喚獣は四体。

『リザードマン』二体に『炎龍ヴァルムンク』、そして『シロノコギツネ』。


 それに対し、師匠の召喚獣は『火の鳥』と『リザードマン』のみ。その内『リザードマン』が仮眠状態に入って防御できない。


「とどめを刺そう。行け、『リザードマン』」


「攻撃魔法、『ダブルフレイム』」


『ダブルフレイム』

 火属性、序列中

 効果:攻撃力6000以下の召喚獣を二体破壊する。


『リザードマン』の攻撃力は6000、よって『リザードマン』二体は破壊された。


「凌いだつもりか。まあいい」


 一輝の召喚獣は二体になった。


「タイムエンド」


 次の防御のことも考えたのだろう。


 5ターン目、

 たとえさっきのターンを凌いだといっても、師匠にとっては相当厳しい戦いであることに間違いはないだろう。

 だからこそドローしてから一分ほど、沈黙を続けて考えていた。


「おいおい、もう手詰まりか?案外弱いじゃないか。師匠とやらは」


 それに対しても師匠は沈黙していた。


「まあ良い」


「戦場魔法、『炎上網』」


『炎上網』

 火属性、序列中

 効果:戦場にいる火属性の召喚獣一体につき、火属性の召喚獣の攻撃力を+1000する。


「続いて『フレイムタウロス』を召喚」


『フレイムタウロス』

 火属性、序列中

 攻撃力7000、防御力4000


「タイムエンド」


 6ターン目

 一輝は何も召喚せず、バトルタイムへ突入した。


「たくさん召喚獣を召喚したところ申し訳ないのだが、全て消えてもらうよ」


 一輝は手札から魔法を発動させた。


「『必殺技発動魔法』。発動させるのは『シロノコギツネ』の必殺技、『フォックスフレア』」


 フォックスフレアの効果、序列中、下の召喚獣全てを破壊する。

 その効果により、師匠の戦場から全ての召喚獣が消えた。


「師匠……」


 それには師匠も唖然としていた。


「『シロノコギツネ』、『炎龍』、攻撃だ」


「どちらも直接受ける」


 これで師匠が直接攻撃を受けられる回数は残り一回。

 だが師匠は一度も直接攻撃をできていない。


「弱いな。随分と弱いな」


「だが勝負はこれからだ。勝たないと、俺も俺の師匠に顔向けできない」


 そう言って師匠は7ターン目を始めた。

 最初に序列中の特殊魔法『ドロー3』を使用して手札から三枚ドローし、『フレイムタウロス』を一体召喚した。

 次に『火甲獣カッコウ』を召喚。


『火甲獣カッコウ』

 攻撃力8000、防御力5000

 効果:この召喚獣を召喚したターン、自分の召喚獣全ての攻撃力を+2000する。


 それと既に設置されていた『炎上網』により、攻撃力は+1000され、『火甲獣カッコウ』の攻撃力は11000まで上がった。


「行くぞ」


 師匠の手札は残り三枚。


「『火甲獣カッコウ』で攻撃だ。特殊魔法発動。『チェインバトル』」


『チェインバトル』

 指定した相手の召喚獣に攻撃できる。


「指定するのは『シロノコギツネ』」


「駄目だ師匠。攻撃力が足りてない」


『火甲獣カッコウ』の攻撃力は強化されても11000。

 対して『シロノコギツネ』の防御力は13000。勝てるはずがない。


「無駄死にでもするつもりか」


「そんなつもりは毛頭ない。俺は勝つためにここに来たんだよ。だから絶対に負けないんだよ」


 師匠は叫び、一枚のカードを手に取った。


「強化魔法『プラスパワー』。自分の召喚獣一体の攻撃力を+2000。この効果により『カッコウ』の攻撃力は13000」


「つまりーー」


「『シロノコギツネ』の防御力と同じだぁぁぁあああ」


 相討ち。

『火甲獣カッコウ』を犠牲にし、『シロノコギツネ』を破壊した。


 俺は歓喜する。

 だが一輝は動揺していなかった。それどころか笑っていた。


「何がおかしい」


「今から教えてやるさ。『シロノコギツネ』の特殊効果2、『八つの尻尾』の効果を」


『八つの尻尾』の効果、この召喚獣が破壊された際、自分の召喚獣を一体破壊することでこの召喚獣を回復状態で戦場に復活させる。


「全て無駄だったんだよ。『炎龍』を破壊し、『シロノコギツネ』を回復状態で復活」


「師匠……」


 師匠は静かにタイムエンドを告げた。

 そんな師匠とは裏腹に、一輝は勝利を確信し、微笑んでいた。


 8ターン目、


「『ヒノコ』を一体召喚。続けて『煉獄の巨人』を召喚」


『煉獄の巨人』

 序列上、火属性

 攻撃力10000、防御力10000


「そしてバトルタイム」


 一輝の召喚獣は二体。

 対して師匠は二体中一体が動ける。


「一体の差か……」


「攻撃だ。『ヒノコ』」


「『フレイムタウロス』で防御だ」


『ヒノコ』は破壊される。

 その刹那、師匠は残り一枚の手札から魔法を発動させた。


「防御魔法『フリーズドライ』。このターンを終了させる」


 一輝のターンは終了した。

 それには一輝はさすがに動揺していた。


 だがまだ一度も直接攻撃を受けていない。

 師匠が不利であるという状況は未だ覆らない。


 9ターン目

 師匠は手札ゼロ枚の状態からドローした。


「特殊魔法『ドロー4』。デッキから四枚引く」


『ドロー4』

 序列上、無属性


「次に『ドロー2』。二枚引く」


『ドロー2』

 序列下、無属性


 その魔法により手札を五枚まで伸ばした師匠は、戦場をじっと眺めていた。


 一輝の手札は二枚。一輝の召喚獣は二体、その内一体が仮眠状態。

 師匠の手札は五枚。召喚獣は『フレイムタウロス』と『火甲獣カッコウ』の二体。


「ここでとどめを刺す。『ヒノコ』を二体、『リザードマン』を一体召喚。続けてーー」


 何か来る。

 そう一輝も、俺も感じていた。


「出でよ。赤き紅蓮に身を包みし召喚獣『火甲火獣グレンカッコウ』を召喚」



『赤甲火獣グレンカッコウ』

 火属性、序列上

 召喚条件:自分の火属性が戦場に1体以上いる時

 攻撃力:12000、防御力:9000

 特殊効果1:この召喚獣を召喚したターン、自分の召喚獣全てを攻撃力+3000する。

 特殊効果2(紅蓮):この召喚獣の攻撃で相手の召喚獣を破壊した時、その召喚獣と序列が同じ召喚獣を破壊する

 必殺技:??



「とうとう来たか。お前の序列上召喚獣が」


「行くぞ。『グレンカッコウ』、全てを焼き払え」


「そいつの攻撃、この『シロノコギツネ』が受けて立とう」


『シロノコギツネ』の防御力は13000。『グレンカッコウ』の攻撃力は16000。


「破壊されても尚、回復して復活する。それがこの召喚獣だ」


「まだだ。『ネオファイアー』、この魔法によりヒノコを破壊する」


 だがまだ戦場には『煉獄の巨人』が残っている。その召喚獣が破壊されないことには……

 しかし師匠には勝利への道筋が見えていた。


『シロノコギツネ』が破壊される。


「特殊効果、八つの尻尾をーー」


「ーーまだだ。同じタイミングで召喚獣の特殊効果が発動される際、自分のターンだった方の召喚獣の特殊効果が優先される。今は俺のターン。よって『グレンカッコウ』の特殊効果を発動」


「特殊効果?」


「特殊効果2"紅蓮"発動。この召喚獣の攻撃で相手の召喚獣を破壊した時、その召喚獣と序列が同じ召喚獣を破壊する」


「まさか!?」


「つまりは、『煉獄の巨人』を破壊する」


 この効果により、戦場には一輝の召喚獣がいなくなった。

 そこから師匠の追い討ちが始まる。


「『フレイムタウロス』、『リザードマン』で攻撃」


 師匠が攻撃できる召喚獣は残り二体。

 だが一輝が直接攻撃を受けられる回数は残り三回。


「師匠……」


「そう情けない声を出すな。十夜。俺はここに負けに来たんじゃない。勝ちに来たんだ」


 勝利への道をなぞるように、『ヒノコ』で攻撃をする。


「直接だ」


 残り一体。


「続けて『ヒノコ』で攻撃」


 その時、一輝は微笑んだ。

 一輝は魔法を発動した。


「『ネオファイアー』。この魔法により『ヒノコ』を破壊すーー」


 その時を待っていたよ。

 師匠は手札にあった最後の一枚のカードをその魔法に対して掲げた。


「師匠より貰ったこの魔法、今使わせてもらうぞ。『サクリファイス』」


 その魔法は、巫が初めて天崎と勝負した際に使われ、とどめを刺された魔法だった。


「『サクリファイス』の効果。自分の召喚獣一体を破壊し、相手の魔法を無効化。この効果で魔法を無効化した際、破壊した召喚獣で相手に直接攻撃する。『グレンカッコウ』を破壊する」


「そんな馬鹿な……」


「とどめだ。『ヒノコ』、そして『グレンカッコウ』。敵を焼き払え」


 二体同時に召喚獣は一輝を打倒した。

 よってこの長きにわたる勝負、勝者は巫一色。

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