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Summoned Beast and Magic  作者: 総督琉
赤月プロローガー
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第10ターン『仇討ち』

 俺と一輝の戦いが始まった。


 1ターン目、俺は『泡狸』を召喚してタイムエンド。


「たった一体か」


「多く出せば良いってわけじゃないだろ。どれだけカードを温存できるか、それがこのカードゲームのコツだってお前が教えてくれたんだろ」


「そうだったか。まあ温存にもコツはいるがな」


 一輝のターン。

 一輝は『ヒノコ』を一体召喚、『リザードマン』を一体召喚した。


 師匠のデッキに似ている。

 初めてこの男と戦ったが、まさか師匠のデッキと酷似しているとは。


「バトルタイム。『リザードマン』で攻撃」


「直接受ける」


「ダイレクトで受けたか。まあ妥当な判断だ。もし『泡狸』で防御していたら、次に『ヒノコ』で攻撃した際に防御できないからね」


「『ヒノコ』の攻撃力は2000。『泡狸』は3000。だから破壊できる。そのくらいのことはわきまえている」


「そ。じゃあタイムエンド」


 3ターン目。

 まだ3ターン目だというのに、俺はなぜか緊張していた。

 この緊張の正体は一体……。

 その正体も掴めぬままカードを引いた。


「もう来てくれたか」


 俺は引いたカードを戦場に召喚する。


「来い。『結晶水竜クレスタペント』」


「それが君のお気に入りかな」


「ああ。続いてバトルタイム、『結晶水竜クレスタペント』で攻撃だ」


『結晶水竜クレスタペント』

 特殊効果(湖の主):この召喚獣の攻撃は水属性以外の召喚獣は防御できない。


「特殊効果『湖の主』のよりこの召喚獣は防御されない。つまり直接攻撃だ」


「じゃあ直接受けるよ」


 これで互いに一回ずつ攻撃を受けた。


「タイムエンドだ」


「それじゃあ次は俺か」


 相変わらず平常心にカードを引き、無心でバトルを進める。

 この男の戦闘スタイルが全く読めない。今何を考えて、そしてこれから何をしようとしているのかが全く読めない。


「それじゃあ俺も召喚しようか。『炎龍ヴァルムンク』を召喚」


『炎龍ヴァルムンク』

 召喚条件:火属性の召喚獣が一体以上戦場にいる時

 攻撃力:14000、防御力:12000

 特殊効果(灼熱円):戦場にいる火属性を持つ全ての召喚獣は攻撃力+2000。


「バトルタイム、『炎龍』で攻撃」


「直接受ける」


「続いて『リザードマン』」


「これも直接だ」


「タイムエンド」


 これで俺が直接攻撃を受けられる回数、残り二回。

 相変わらずこの男は強い。

 さすがは世界ランキング13位だ。


「俺のターン」


 5ターン目、さすがに俺は焦っていた。

 そろそろ俺も反撃に出なければ。


「『サーペント』を二体召喚。そして魔法、『特効継承陣』」


『特効継承陣』

 自分の召喚獣一体の特殊効果ひとつを自分の全ての召喚獣全てに付与する。


 この効果により、『クレスタペント』の特殊効果『湖の主』が俺の全ての召喚獣に付与された。

 これで俺の召喚獣は防御されない。

 相手が直接攻撃を受けられる回数は四回。そして俺の召喚獣は四体いる。


「勝てる。いや、勝つ」


 俺は勝利への道を進める。


「『クレスタペント』で攻撃」


 まずは確実に直接攻撃を一回できれば良い。


「お前、今油断しただろ。『特効消滅陣』」


『特効消滅陣』

 特殊魔法、序列上、無属性

 効果:相手の召喚獣一体の特殊効果を1ターンの間消滅させることができる。


「指定するのは『クレスタペント』だ」


 つまり『クレスタペント』の特殊効果『湖の主』の効果は使えなくなり、そのせいで防御されるというわけだ。


「『炎龍』、防御しろ」


「まずい……」


『クレスタペント』の攻撃力12000、『炎龍』の防御力12000。

 よって相討ち。

 これで互いの序列上の召喚獣が破壊された。


 だけどもう止まれない。


「まだだ。二体の『泡狸』で攻撃」


 たとえ『クレスタペント』の効果が破壊されようとも、効果が消されようとも、このターンのみ引き継いだ『クレスタペント』の特殊効果は消えない。

 よってこの二体の召喚獣は水属性以外の召喚獣には防御されないため、直接攻撃となる。


「直接だけなら直接受けるさ」


 これであと二回というところまで追い詰めた。だがとどめはさせなかった。


「エンドタイム」


 エンドタイム時、デッキから二枚墓地に送ることで仮眠状態だった『泡狸』二体を回復する。


「それじゃあこのターンで決めようかな」


 俺はあと二回直接攻撃を受ければ負ける。

 ここを凌ぎ、ひとまず体勢を建て直して勝つしかない。


「まずは『ウルトラサモン』。この魔法により、手札にある序列上の召喚獣一体を召喚条件を無視して召喚できる」


 序列上の召喚獣を出すつもりか……。


「八尾を持って現れよ。『赤月十将《壱》シロノコギツネ』」


『赤月十将《壱》シロノコギツネ』

 序列上、火属性

 召喚条件:序列上の召喚獣が一体以上戦場にいる時

 攻撃力:16000、防御力:13000

 特殊効果1(十将印):この召喚獣が持つ属性の魔法の効果は受けない

 特殊効果2:???

 必殺技:フォックスフレア


「そして『必殺技発動魔法』を使用」


『必殺技発動魔法』、それはデッキに一枚のみ入れられる特殊なカード。

 そのカードを使用すると、序列上の召喚獣一体の必殺技を発動することができる。


「『シロノコギツネ』の必殺技発動。『フォックスフレア』。その効果、序列中、下の召喚獣()()を破壊する」


 その必殺技により、俺の召喚獣は全て消えた。

 ただその代償として、一輝の召喚獣も多くが消え、『シロノコギツネ』一体になっていた。


「バトルタイム、『シロノコギツネ』」


「直接」


「魔法発動『回復(ヒール)』。仮眠状態の自分の召喚獣一体を回復させる。この効果により『シロノコギツネ』を回復させる。そしてとどめを刺せ」



 その時、ふと過る。


 結局、最後まであのカードだけは使えなかった。

 手札に残る一枚のカード。それだけはやはり使えない。



「直接受ける」



 負けた。

 姉の無念を晴らせなかった。

 この勝負だけはどうしても勝ちたかった。勝ちたかったのにーー


「十夜、それでは盗んだカードを返してもらおうか」


「カードなら……ないーー」


「ーーいいや。まだ勝負は終わっていない」


 ある男が一輝の前に堂々と姿を見せた。

 彼は世界ランキングで上位に入っているわけでも、別段このカードゲームが特別上手いというわけではなかった。

 中の中、そのくらいにいる男であった。


「師匠、なぜあなたがここに」


 現れたのは、巫一色であった。


「決まっているだろ。弟子の仇を討つためだ」


「へえ。今度はお前が俺と戦うのか」


「ああ。そうだ」


 赤月一輝に、師匠は挑もうとしていた。


「師匠、それだけは駄目です。あの男には敵わない」


「敵わないなんて幻想は叶わない。俺はお前の師匠だ。なら弟子の想像を上回るのが師匠の役目だ」


 だが勝敗は見え見えだ。

 どう考えても世界ランキング13位の一輝に勝てるはずがない、はずだ。


 それでも、師匠の真っ直ぐな目を見ていると、淡い期待が抱かれる。


「十夜、もう一人で戦うな。お前には俺という師匠がいるんだから。だからお前の仇、俺が討ってもいいか」


 本当は自分で討ちたかった。

 けれど、師匠になら任せられる。


「はい。お願いします」


「なら決まりだな。赤月一輝、俺はお前に勝つぞ。このデッキで」


「君が十夜の師匠か。ならその実力、とくと見せてもらおうか」

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