82話・怒り 1
僕は、装備しなおして、斧使いの後を追いかける。
だけど、すぐに分かれ道に差し掛かってしまう。
「どっちだ…」
僕ならどうするかと、考えを巡らせる。
すると、ここが5階層である事を思い出した。
「普通に逃げるより、転移板で逃げる方が早いか…」
それなら、こっちかと走り出す。
だけど、少し走り出した所で、足が止まる。
待てよ、ここからだと、転移版のある階段まで、まだ少し距離がある。
「むかう場所が分かってるなら、先回り出来るかもしれない…」
僕は、すぐにスキルを発動する。
「ダンジョン移動!!」
一瞬で、光景が移り変わり、6階層へ続く階段の転移板に移動する。
移動した先に、数名の若い冒険者がいた。
「すみません。少し、聞きたいんですけど、斧を持った冒険者がこっちに来ませんでしたか?」
すぐ近くにいた冒険者に、聞いてみる。
「い… いや、俺たちは今来た所だけど、そんな奴は見てねぇな。お前は、どうだ?」
「いや、見てないですね」
「そうですか。ありがとうございます!!」
僕は、すぐに階段を駆け上がって行く。
駆け上がった先は、少し広い空間になっている。
この先の通路は、狭い為、ここで待ち構える事にする。少しすると、息を切らしながら走ってくる斧使いが目に入った。僕の予想は、ちゃんと当たったようだ。
「ハァハァ… 何だよあのメイド… ハァ… まぁ、ここまで来れば大丈夫か…」
斧使いは、後ろを確認しながら広い空間に入ると、立ち止まり息を整え出す。どうやら、僕に気づいている様子はない。
「さて、さっさと上に戻って逃げ… !!」
斧使いは、広い空間の中央にいた僕に気付き目を見開く。
「お… おい、なぜお前が、ここにいる!!」
「当然、貴方を捕らえる為ですよ」
「何!!」
斧使いは、辺りを確認する。
「どうやら、あのメイドはいねぇようだしな。おい、空箱。怪我したくなければ、そこをどけ!!」
「…ここを、どくつもりはないです」
「ほう… なら、力ずくで通るだけだ!!」
人目もあるせいか、斧を使わずに、殴りかかってくる。僕も、聖剣を抜かずに、拳に力を込める。
斧使いの拳を顔をずらすだけで躱し、斧使いのお腹めがけて、拳を叩き込む。
「ぐぼっ!!」
斧使いは、お腹を抑えながら後ずさる。
「今のは、僕を空箱とバカにした分…」
「クソッ!! もう容赦しねぇ!!」
僕に、殴られた事で怒ったのか、斧を手に取りむかってくる。それに伴い僕も、今度は聖剣を抜く。
「死ね!!」
振り下ろされた斧を、僕は、聖剣で両断する。
「なっ!!」
斧を両断された事で、驚いている斧使いの顔めがけて、拳を振り抜く。
「ぐふっ!!」
斧使いは、ふき飛んでいく。
「今のは、皆を危険にさらした分…」
「き… ぎさま…」
斧使いは、鼻血を垂れしながら、怒り狂ったような目で僕を見てくる。