81話・種明かし
斧使いは、腕が切断された2人組や壁にぶつかったまま気絶した女を見捨てて、逃走する。
「ノーリ君、ここは私に任せて、追って下さい!!」
バレッタさんが、斧使いを追うように言ってくる。
一瞬迷うも、間接的にでもソフィアを傷つけたあいつを許す事が出来ない。
「分かりました!! ソフィア、ちょっと待っててな。」
「…うん。気をつけて、お兄ちゃん!!」
「あぁ!!」
「「ノーリ(さん)、これ。」」
ソフィアとアネモスは、聖剣とラウンドシールドを持ってきてくれる。
「ありがとう、2人とも。それじゃあ、行ってくるよ。」
「「はい!!」」
僕は、装備しなおして、斧使いの後を追いかける。
◆
「それでは、私たちも追いかけましょうか。」
バレッタが、3人を縛りながら、そう言ってくる。当然、腕の切断された2人組は、必要最低限の回復だけされている。
「バレッタ、追いかけるってどういう事?」
「そのままの意味ですよ、シャーロット様。」
「バレッタさん。ノーリさんたちが、どこに行ったのか分かるんですか?」
「えぇ。私の予想が正しければ、4階層へむかわず、6階層へ続く階段の転移版から地上へ戻るでしょうね。まぁ、どちらにせよ、この人たちを連れて地上に戻るには、転移版を使用した方が早いですから、最初からそちらへむかうつもりです。」
「そうなんですね。」
私たちは、4人+3人(バレッタによって、引きずられたまま)で、転移版のある階段へむかう。
「そう言えば、バレッタ。貴方、窪みに落ちたよね。どうやって這い上がってきたの? それに、う… 腕を切断したのも、貴方よね?」
私は、気になった事を、バレッタに聞いてみる。
「はい、そうですよ。スキルを使いました。」
「スキル?」
「はい。魔糸って言うスキルですね。」
「どういうスキルなんですか?」
私の代わりに、アネモスが聞いてくれる。
「ただ、魔法で出来た糸を作り出すスキルですね。こんな風に…」
そう言うと、目の前から来ていたゴブリンの首に、バレッタの手から伸びた糸が巻き付き、そのまま手を引くと、首と胴体がおさらばした。
「しかも、この魔糸スキルは、レベル次第で、糸の細さや強度、糸の本数を自由に変える事が出来ます。腕を切断した時は、目に見えない程の極細の糸を腕に巻き付けてました。」
「え、いつから?」
「当然、この人たちが、現れた時からですよ。」
「なら、窪みからの這い上がってきたのは…」
「糸の強度を上げてから、それを足場に戻って来ました。」
「バレッタ… 貴方は、何者ですか?」
「昔は、しがない元冒険者で、今は、シャーロット様の護衛兼侍女ですよ。」
「そう… これからも宜しくね、バレッタ。」
「はい。宜しくお願いします、シャーロット様。」
私は、バレッタを怒らせないように、そっと心に誓った。