77話・怪しい気配
「きゃ~~~~~~~~!!」
女性の悲鳴のようなものが、僕たちの耳に届いた。
「ノーリ!!」「ノーリさん!!」「お兄ちゃん!!」
3人は、揃って僕を見てくる。
「たぶん、何かあったんだと思う… 皆は、どうしたい?」
僕は、駆け出そうとする気持ちを抑え、皆に、そう尋ねる。
「「助けましょう!!」」「助けないと!!」
3人は、そう即答する。チラッとバレッタさんを見てみるが、バレッタさんは、何も言わない。確かに、3人の助けたいという気持ちは、分かる。僕も、1人だったらすぐに駆け出していたかも知れない。だけど、今は、1人じゃない。
「…皆の気持ちは、分かった。だけど、その前に、言わなければならない事がある。」
「「「?」」」
「3人とも、よく聞いて。人を助ける事は確かに、良い事だと思う。3人ともすぐに、助けようと言ってくれて、正直嬉しい… でもここは、ダンジョン内… 何が起こるか分からないし、人が簡単に死ぬ所だよ」
「「「!!」」」
3人は、目を見開く。
「これを聞いて、それでも、3人は助けに行きたい?」
僕は、改めて3人に聞いてみる。
「「「・・・」」」
3人は、即答しない。
「…確かに、ノーリの言う通りかも、知れません。だけど、私は、助けを求められたら、助けたいです!!」
「私も、シャーロットと同じ気持ちです!!」
「お兄ちゃん、私も、助けたい!!」
3人は、少し迷った結果、そう言ってくれる。
「…分かった。バレッタさん、力を貸してくれますか?」
僕は、バレッタさんにそう尋ねる。
バレッタさんは、3人を見てから、最後に僕の目を見て、少し微笑んだ後、
「大丈夫ですよ、ノーリ君。私も、微力ながらお力をお貸しします。」
「ありがとうございます、バレッタさん。なら、先ほどの順で、声のした方にむかおうか。モンスターと遭遇したら、僕が相手にするよ。それじゃあ、行くよ!!」
「「はい!!」」「うん!!」「分かりました。」
僕たちは、声のした方へ走り出す。宣言通り、道中遭遇したモンスターは、僕が倒していく。そのまま進んで行くと、分かれ道に差し掛かってしまい足が止まる。どっちに行くか迷っていると、
「右ですよ、ノーリ君。」
バレッタさんが、そう教えくれる。
「分かりました。」
僕たちは、バレッタさんの言った通り、右に進む。その後も、何度か分かれ道があったが、その都度バレッタさんの指示に従い進んでいく。すると、少し前の分かれ道から、僕たちの後をついてくる気配があった。僕たちと同じで、声のした人の元へむかっているのかとも思ったが、距離をつめてくる気配がない。少し怪しんだ僕は、
「皆、止まって!!」
皆、指示通り止まってくれる。後ろの気配も、一定の距離をとったまま止まる。どうやら、後ろの気配は、僕たちの後をついてきているようだな…
「ちょっと、話があるから、皆集まって。」
そう言うと、皆すぐに集まってくれる。
「バレッタさんは、どう思いますか?」
後ろの気配の人たちに、聞こえないように、小声で聞いてみる。
「後を、つけられてますね。」
「「「!?」」」
「やっぱり、そうですか…」
バレッタさんも、こう言うのだから、僕の思い違いではないようだ。




