74話・臨時パーティー
心の中で、2人に感謝していると、
「そう言えば、ノーリに見せたい物がありました!! 」
シャーロットは、そう言うと懐から何だが見に覚えのあるカードを取り出してから、僕たちに見せてくれる。
「そ… それって、まさかギルドカード?」
「はい、そうです!! 私たちも、冒険者登録をしたんです!!」
「そうなんだ。ん、私たちもって事は…」
アネモスの方を見てみると、
「は… はい、私も登録させて貰いました。」
アネモスも懐からギルドカードを取り出して、見せてくれる。
「本当だ… でも、なんで2人は冒険者登録したの?」
ふと、気になったので聞いてみると、
「そ… それは…」
アネモスが、口ごもる。
「ノーリと冒険したかったからです!!」
口ごもるアネモスの代わりに、シャーロットがそう答える。
「そ… そうなんだ…」
何だか、少し照れ臭くなる。
すると、自己紹介後から静かにしていたソフィアが、
「そうだ!! ならお兄ちゃん、今から一緒にダンジョンに行くってのはどう? もともと行く予定だったんだし?」
そう提案してくる。
「ダンジョンか…」
確かに、ソフィアと行く予定ではあった。それに、急にダンジョンに行ってもシャーロットたちとは、学生時代にパーティーを組んでいたので、ある程度の連携は取れなくはない。だけど、
「危なくないか?」
2人は今、普通に僕たちと会話をしてはいるけど、シャーロットは王族、アネモスも上級貴族のご令嬢だ。何かが起こった後では遅いのだ。だから、断ろうとする前に、シャーロットが口を開く。
「ノーリが、言いたい事は分かってます。だけどそれでも、私はノーリと冒険がしたいです!!」
「わ… 私も、冒険したいです!!」
「2人とも…」
2人がこう言ってくれているのは、正直嬉しい。だけど、この前あんな事があったばかりだ。それに、危ない事に代わりはない。だからバレッタさんから説得して貰おうと視線をバレッタさん移す。バレッタさんは、すぐに気付きに口を開く。
「本来なら、止めないといけないのですが…」
バレッタさんは、ちらっとだけシャーロットを見る。
「ノーリ君。シャーロット様は、言い出したら何を言っても、聞き入れてくれません。」
シャーロットがすかさず反論するも、バレッタさんは、それを黙殺する。
「だから、ノーリ君。私からもお願いします。シャーロット様たちと冒険してやって下さい。」
そう言って、バレッタさんは頭を下げる。
「あ、当然私も、同行させて貰いますよ。」
ひょいと顔を上げ、そう言ってくる。
僕はもう、説得を諦めた。
「…分かりました。でも、3人とも装備品はどうするの?」
「「持ってきてます!!」」
2人は、力強くそう答える。バレッタさんに至っては、いつの間にか、腰に2振りの短剣を装備していた。
「…準備がいいんだね。」
僕がそう言うと、2人ともそっと目をそらし、目線をあわせてくれない…
「…分かったよ。ソフィアもそれで大丈夫かい?」
「私から言った事だし、大丈夫だよ!!」
「なら、2人の準備が終わったら出発しようか?」
「「はい!!」」
こうして、僕たちは5人で臨時のパーティーを組んで、ダンジョンへむかうことになった。