7話・付与武器の効果
草や葉を踏む音が、どんどんこちらに迫ってくる。僕は握る手に力を込め、音を便りに近づいてきたゴブリンにむかって、思いっきり剣を振るった。
ザシュ
剣は、運良くゴブリンの首に当たり、そのまま首を斬り飛ばしていた。
「え…」
僕は、飛んでいく首を唖然と眺めていた。
昨日は、体重をかけてやっと斬り飛ばしたというのに、今回は、昨日と比べると抵抗少なく、首を斬り飛ばす事に成功した。
思い当たる節は、無くはない。そっと、持っている武器を見る。
「こ… これが付与武器の効果か…」
ゴブリンは、そのまま消失し、魔石だけを残す。
ふと我に帰った僕は、魔石を回収して、すぐにその場を後にしようとしたが、
ガサガサ
音がした方を見ると、既に2匹目のゴブリンが戻って来ていた。
「グギャ!!」
ゴブリンは、お怒り気味に持っていた剣を降り下ろしてくる。僕は、それを転げるように、躱す。すぐに体を起こし、剣を構える。この剣ならと、今度は自分からゴブリンに斬りかかる。だけど、振り下ろした剣は、普通にゴブリンの剣によって弾かれてしまい、逆に体当たりをくらい弾き飛ばされてしまった。
「グギャギャギャ~!!」
追撃を受けないようにと急いで立ち上がるが、ゴブリンは追撃をしようとせずに、僕を見て笑っていた。
少し頭に来たが、頭に血が上がった状態では勝てないと察した僕は、深呼吸をし、すぐに心を落ち着かせる。
心を落ち着かせた後、ゴブリンを、見てみるが、まだ、こちらを見て笑っており攻撃をしてくる様子はない。僕は、この間に、どうするのかを考える。
先ほどの攻防で、力は完全にゴブリンの方が上だし、たぶん、敏捷もむこうが上だろう。だから、何度打ち込んでも意味がないし、逃げ出す事も少し厳しいだろう。
なら、昨日と同じ手を使ってみるかと、僕はしゃがみこんで土を握りしめ、その土をまだ笑っているゴブリンの顔目掛けて投げつけながら、ゴブリンにむかって駆け出す。
「グギャ!!」
今回は、腕で顔を防がれうまく目に入らなかったようで、すぐに僕目掛けて、剣を降り下ろしてくる。
僕は、止まらず駆け出した勢いのまま体をひねり、振り下ろされた剣を躱しつつ、その回転を生かし剣を横に振り回す。
ザシュ
「グギャー!!」
腕を肩から斬り落とせた。ゴブリンは、痛みで剣を離し、地面をのたうち回る。最大の攻撃チャンスを逃す筈もなく、すぐに僕はゴブリンの上に跨がり、頭目掛けて剣を突き立て止めを刺す。ゴブリンは、少しして、消失し魔石だけを残した。
本来ならすぐにでも森を出るべきなのだが、疲れた僕は、その場に倒れこむ。倒れこむと同時に、疲れがどっと押し寄せてくる。
体が鉛のように重い。このまま眠ってしまいたい気持ちに駆られたが、息を整え、疲れた体に鞭をうち、魔石を回収して、今でる最高速度(早歩き)で、その場を後にした。
◇
森を出た時には、日はだいぶ暮れていた。
このまま川で血を洗い落としてから街に戻ると、その時には、既に門を閉められ街に入れない可能性がある。だから、血を洗い落とさずに、そのまま街へ戻った。
入り口で少し嫌な顔をされるも、門が閉まる前に何とか街へ戻れた。
街の中に入ると、ギルドで回復草の採取達成の報告を手早く済ませ、家に帰りつき簡単に血だけを拭い、部屋に戻ると、皮鎧を脱ぎ捨て、そのまま、泥のように眠りに着いた。