63話・引っ越し準備 4
僕は、ご飯の席で、ポリーナさんたちに、近日中に引っ越す事を伝えた。
「そうかい…」
「気を付けるんだよ、2人とも。」
「「はい!!」」
ご飯後、部屋に戻る前に、2人に呼び止められる。
ソフィアには、先に部屋に戻って貰う。
「どうかしましたか?」
「これを返しておくよ。」
机の上に、2つの袋が置かれる。
「これは?」
「とりあえず、開けてみな。」
僕は、言われた通り袋を開けてみる。
「…ポリーナさん、これは?」
2つとも中には、銀貨や銅貨などが入っていた。
「1つは、姉さんたちから預かったお金。もう1つは、ノーリが今まで私たちに渡してきたお金だよ。」
僕が、口を開く前に、
「ノーリ君。君が言いたい事は分かっているつもりだよ。だけど何も言わずに受け取ってほしい。」
少し考えた後、
「分かりました…」
「それでいいんだよ、ノーリ。何かあったらいつでも帰って来るんだよ。」
「はい…」
気づいたら、涙が出ていた。
結局、目を腫らしたまま部屋に戻り、そのまま床についた。
◆
~次の日~
早く目覚めた僕は、ソフィアが起きる前に、回復薬で目の腫れを治した。
朝ご飯を食べた後、ソフィアと小物など必要な物の買い物をしてから、家へとむかった。
家に着くと、門の前に誰かが立っていた。
「ソフィア、僕の後ろに!!」
「うん」
警戒しながら、進んでいくと、
「あ、やっと会えたよノーリ君!!」
「メゾンさんじゃないですか? どうかしたんですか?」
「君を探してたんだよ!!」
「僕をですか? どうしてです?」
「この前、一緒に着いていけなかったから確認の為に、何度来てみたんたけど、全然住んでる様子がないから心配してたんだよ。例の件もあるしね。」
例の件… あぁ、アコの事かな。
「すみません、メゾンさん。まだ、色々準備する事があって引っ越せてないんです。」
「そうだったんだね。まぁ、何事も無いようで安心したよ。あ、それとこれ、この前渡しそびれた物を渡しておくよ。」
メゾンさんは、そう言って小袋を渡してくる。
「何ですかこれ?」
「色魔石だよ。」
「!? 色魔石ですか!! こんな高い物貰えませんよ!!」
「大丈夫だよ、ノーリ君。この色魔石は、そんなに高い物じゃないし、もともとこの家の購入代金に含まれていた物だからね。」
「…分かりました。では、貰っておきます。」
「あ、それと、この後時間はあるかい?」
チラッと後ろをむき、ソフィアを見ると、首を縦に振る。
「大丈夫ですけど、どうかしたんですか?」
「ここの家の魔道具についての説明もしてなかったから、説明しておこうと思ってね。」
そういえば、僕もまだ魔道具の確認してなかった。
「分かりました。では、どうぞ。」
僕を先頭に、ソフィア、メゾンさんがついてきて、家の中へと入っていく。