閑話・グラディウス
私が、私用から帰ってくると、王都が現在進行形で、ゴブリンの大群に襲撃されていた。
とりあえず、私はゴブリンを叩き潰して回った。
ゴブリンやホブゴブリン、ジェネラルと潰したが、このくらいの数の統率となると、たぶんキングがいる筈だ。この場を他の者たちに任せられると判断し、私は単独でキング討伐に乗り出す。
しばらく探して回ったが、それらしき者は影も形もなかった。
捜索範囲を広げると、魔石を拾っている者に出くわした。その者の持っている魔石を見せて貰うと、それはゴブリンキングの魔石に間違いなかった。
「これは、誰が倒したの?」
気になったので、私は魔石を拾っていた者に尋ねた。
「すみませんが、そこまでは聞いてないですね。俺は、頼まれて、ここ周辺に落ちてある魔石を回収するように、頼まれただけなので…」
「誰に、頼まれたの?」
「バレッタって人からですね。」
「バレッタ…」
もしかして、あのバレッタ?
「分かったわ。ありがとう…」
私は、そう言ってから、王都へ急いで戻った。
◆
冒険者時代に、使っていたアイテムで、バレッタに連絡を取る。このアイテムは、そこまで距離がないのが欠点だが、王都内なら何とか使える。
『バレッタ、聞こえる?』
『その声は、グラディウスね。王都に帰って来てたのね。それで、今回得た情報は、どうだったの?』
『それは、デマだったね。それよりも、少し聞きたいんだけど、ゴブリンキングを倒したのは、貴方?』
『私では、ないですよ。』
『なら、誰が倒したの?』
『…どうして、そんな事をしりたいの?』
『興味があるからだね。』
『そう…』
その後も、何とかねばりその時何が起きたのかなど教えて貰った。
『有望そうな子ね… 教えてくれて、ありがとう。また、今度一緒に、飲みましょうね。』
『…機会があればとだけ言っておくわ。』
『分かったわ。それじゃあ、元気でね、バレッタ。』
『グラディウスも…』
連絡を終えた後、その冒険者について、調べた。
「ユニークスキル持ちの少年か… 次、ギルドに来たら、呼ぶように伝えておくとして、とりあえず、サブマスターの件を先に片付けるべきよね…」
何かしらのコネで、あの男は、サブマスターになった。仕事が出来ない訳ではないのだが、人をすぐ見下す傾向もあるのに、本人は弱いときている。今回も、いち早く逃げ出しているようだし、それだけならいいのだが、ギルドのお金まで持って逃げている。サブマスターは、クビにして、指名手配しないといけないわね…
はぁ… 新しいサブマスターを決めるまでは、私も外に出る訳には、いかなくなったわね…
私は、サブマスターの件を早々に片した。
◆
コンッコンッ
「マリヤです。ノーリ君を連れて来ました。」
「どうぞ。」
どうやら、例の冒険者がやって来たようだ。
マリヤの後ろから、想像よりも幼い顔の少年が入ってきた。
「すぐ終わるから、そこに座って待っててくれる? マリヤ、悪いけど、飲み物の準備をしてくれる?」
「はい…」 「分かりました。」
一段落ついたので、彼の前に座る。
「君が、ノーリ君だね。私は、ここの冒険者ギルドのギルドマスターをしている、グラディウスよ、宜しくね。」
「!?」
どうやら、驚いている。
「ノーリ君の思っている通りよ。以前は、剣聖と呼ばれていた事もあるわね。それで、君をここに呼んだ理由だけど、2つあるわ。1つ目は、君の事を、直接見てみたかったからだね。」
そう言いながら、私は、彼に対して鑑定を使う。
まぁ、私の鑑定スキルのLvは、そこまで高くないので、簡単な情報しか分からない。
この、宝箱作製ってスキルがユニークスキルね。
それにしても、本人のLVに対して、他のスキルのレベルが高いわね… 何かあるのだろうか?
「僕の事をですか? どうしてですか?」
「…君の事を、バレッタに聞いたからだね。」
「バレッタさんにですか?」
「えぇ、バレッタとは昔冒険者パーティーを組んでいたんだよ。」
「そうなんですね。」
「それで、2つ目は、これを君に渡すためだね。」
そう言って、私は魔石が入った袋を机の上に置く。
「これは、なんですか?」
「ゴブリンの魔石だね。バレッタからには、君が倒した分を回収したって聞いたよ。」
「どうする、そのまま持って帰る? それとも、このまま買い取ろうか?」
「そのまま、持って帰らせて貰ってもいいですか?」
「大丈夫よ。でも、結構な数があるけど持って帰られる?」
「大丈夫です。」
魔石の入った袋が消えた。
あれはたぶん、アイテムボックス…
やっぱり、面白い子だね。
「それじゃあ、私からの用件は以上だね。ノーリ君の活躍に今後も期待しているよ。」
「はい!! 頑張ります。」
彼らを見送った後、私は、彼の鑑定結果を思い返してみる。
名前:ノーリ 種族:人族 年齢:11 性別:男
LV: 35
スキル:剣術Lv4、宝箱作製Lv4、俊足Lv5
LVも歳の割には、高い。今後も彼のやる事に、要注目だね。そう結論付けて、残っている仕事に取りかかる。
作者より(捕捉)
鑑定スキルのLvが低いと、簡単な情報しか分かりません。
分かる情報は、名前、種族、年齢、性別、LV、もっとも高いLvのスキル3つのみです。