50話・新たな称号
玉の表面には、45と浮かび上がっていた。
もしかして、魔力量か? そう考えていると、
「お兄ちゃん、これの意味分かる?」
ソフィアが、そう聞いてくる。
「…たぶん、魔力量なんじゃないかな?」
「魔力量?」
なぜ、僕がそう思っているのかを話した。
「お兄ちゃん、そんなスキルを持ってたんだね。それにしても、魔力量かぁ… 触ったら何かなるのかな?」
ソフィアが、そう呟く。
そういえば、魔力補給をしてくれと言っていたっけ。
「ちょっと、触ってみるからソフィアは、離れていてくれる?」
「…分かった。」
ソフィアが、離れたのを確認した後、玉に触れてみる。
「!?」
僕は、すぐに手を離す。
「だ… 大丈夫、お兄ちゃん!!」
ソフィアが、すぐに近寄ってくる。
「あぁ、大丈夫。ただ、少し驚いただけだよ。」
「何があったの?」
「たぶん、魔力が吸われたんだと思う…」
「魔力を吸われたの!! お兄ちゃん本当に、大丈夫なの?」
少し体を動かして確認してみる。
「特に、変わった所はないから、大丈夫だよ。」
「良かった… それにしても、お兄ちゃんの魔力を吸ったせいか、数字が上がってるね。」
「そうだね。」
玉を見てみると、数字は46まで上昇していた。
やっぱり、この数字は魔力量で間違いなさそうだ。そう納得していると、ふと気になる事が出来た。これが、魔力量なら、何でここまで貯まってるんだ? 他の誰かが、魔力補給をしてたのか… それとも…
「…そうか」
今までの事を思い返し、ある仮説に至った。
「どうしたの、お兄ちゃん?」
「いや、原因不明の体調不良の謎が分かったような気がしてな…」
「!? 凄いお兄ちゃん!! それで何が理由だったの?」
「この玉のせいだと思う。」
「この玉の?」
2人して、玉の方を見る。
「たぶんだけど、この玉は、僕がやったみたいに触れて魔力を吸うだけでなく、周りの魔力を吸ってるんだと思う。」
「周りの魔力を?」
「そう。だから、周りの魔力が少ない場所に長時間いたせいで、体調が悪くなったんじゃないかと思う。」
「そうなんだ… やっぱり、お兄ちゃんは凄いね!!」
「ありがとう、ソフィア。」
ソフィアにお礼を言いながら、再び玉の前に立つ。
「また、魔力を吸わせるの?」
ソフィアが、不思議そうに聞いてくる。
「そうだよ。早めにこの玉の数字を上げとかないと、ちゃんと住めないかも知れないからね。それに、魔力量には、自信があるからね。」
そう言って、玉に手を置く。
触れた先から、魔力が吸われていく。数字もちゃんと、上昇していく。
「!?」
一定の数字を越えた所で、吸われる魔力量が徐々に、増えてきた。額に、汗が滲む。
「お兄ちゃん…」
ソフィアが、裾を握ってくる。
「大丈夫だよ。」
反対の手で、ソフィアの頭を撫でる。
その間も、どんどん魔力を吸われていく。
少しして、やっと玉の数字が100になった瞬間、吸われる感覚が無くなった。その瞬間、僕の魔力もギリギリだったのか、膝をつき倒れてしまう。
ソフィアの叫び声を聞きながら、意識が薄れていく。
「大丈夫… 少し疲れただけ… 」
そう言いながら、意識が途切れる前に、頭の中で、
『称号:ダンジョンマスターを入手しました』
あの時、聞いた声が聞こえたような気がしながら、僕の意識は、完全に途絶えた。




