閑話・私の勇者様
前の草むらから、数匹のゴブリンが現れていた。
「アネモスさん、イディオットさん、私が結界を張りますので、その間に魔法をお願いします!!」
「分かりました!!」 「はい…」
事前に、決めていた通り私は、結界魔法を使う。
「■■■■ ■■■ ホーリーバリア!!」
私たちを囲むように、モンスターの侵入を防ぐ、聖なる結界を張る。張った結界は、しっかりゴブリンの侵入を、防いでくれている。
「2人とも、今です!!」
2人が、同時に詠唱し、魔法を発動する。
「「■■ ■■■■■■ ウィンドカッター!!」」
2人が作り出した、風の刃が、結界を通りすぎゴブリンたちを切り裂く。
「「グギャ!!」」
しっかりと倒しきれたようで、ゴブリンは消えてしまい、魔石を残す。
魔石は、アネモスさんが拾って戻ってきてくれる。
アネモスさんに、お礼を言いながら、先程の話の続きをする。
「イディオットさん、この魔石を提出すれば、試験を達成した事になります。だから、先程言った通り、一度来た所へ戻りませんか?」
「…分かりました。」
イディオットさんの了承も得たので、私たちは来た道を戻ろうとすると、再びゴブリンが現れた。しかも、よく見ると、既に周りをゴブリンに囲まれていた。
全く、気づかなかった…
私は、すぐに聖なる結界を張った。
「■■■■ ■■■ ホーリーバリア!!」
だけど、先程のゴブリンと違い、結界に攻撃をしてくる素振りがない。少し、違和感を覚えたが、2人は二手に別れ、ゴブリン目掛けて魔法を発動する。
「「■■ ■■■■■■ ウィンドカッター!!」」
私は、そのまま先程みたいに、ゴブリンが倒されると思っていたが、そうはならなかった。
「「******** ヴィンドカッダー!!」」
「「「!?」」」
2人が発動した魔法が相殺された。
よく見ると、ゴブリンの後ろに、杖を持ってあるゴブリンが隠れていた。
ノーリさんに聞いた事がある。魔法を使うゴブリンがいると、確か、ゴブリンマジシャン…
だけど、何でこんな所に…
「あ… あああ」
突然、イディオットさんが、うろたえる。
アネモスさんも、イディオットさんの異変に気づいたようで、代わりに尋ねてくれる。
「イディオットさん、どうしたんですか?」
イディオットさんは、何も答えない…
だけど、イディオットさんの視線が固定されている事に、気付き、私たちは、イディオットさんが見ている方向をむく。
「「!?」」
そこには、ゴブリンの何倍も大きな体躯のゴブリンがそこにいた。
「な… 何ですかあれ…」
アネモスさんの呟きに答える者は、誰もいない。
その大きなゴブリンは、手に持っていた大剣を結界目掛けて投げてきた。
パリーン
「「きゃ!!」」 「うぉ!!」
私の張った結界はあっさりと壊され、私たちは、吹き飛ばされる。近くにいた、アネモスさんは私の近くに飛ばされたが、少し離れていたイディオットさんは、別の方向へ飛ばされる。
「イディオットさん、転移石の準備をして下さい!!」
私は、そう叫びアネモスさんと、共にイディオットさんのもとへむかおうとすると、イディオットさんの姿が消えた。
「ま… まさか…」
アネモスさんも、驚いている。
私も驚きはしたが、すぐに立ち直り次の行動に移す。
「アネモスさん、逃げますよ!!」
私は、驚いているアネモスさんの手をとり、比較的ゴブリンの少ない場所目掛けて、魔法を撃つ。
「■■ ■■■■■■ ウィンドカッター!!」
風の刃は、ゴブリンを切り裂き、魔石になる。
それを乗り越え、走り去る。
◆
今私は、アネモスさんに肩を貸しながら逃げている。
「シャーロットさん、私を置いて逃げて下さい!!」
「ダメです!!」
「ですが、私の足では、もう…」
ゴブリンたちは、私たちがギリギリ逃げれる速度で追いかけてくる。時折、攻撃も仕掛けてくる。
さっきも、魔法が飛んできた際、それを躱したアネモスさんが足を怪我してしまった。
「アネモスさん、あきらめたらダメです!! 絶対に助けは来ますから!!」
「シャーロットさん…」
だけど、私たちの足は止まってしまう。またしても、ゴブリンたちに囲まれてしまった。
「■■■■ ■■■ ホーリーバリア!!」
無駄だと分かっていても、私は結界を張る。
周りのゴブリンの数は、30匹を優に越えている。それに、あの大きなゴブリンも笑いながら、こちらをみている。アネモスさんを勇気づける為、あんな事を言ったが、助けなんて、ほぼ来ないだろう。もし来たとしても間に合う筈がない。私は、貰った首飾りを握りながら、助けを求めてしまう…
「ノーリ… 助けて…」
「任せろ!!」
いる筈もない彼の声が聞こえ、顔をあげると
「え…」
目の前には、彼の背中があった。