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299話・回る

 目を覚まそうとした所で、エルマーナさんに見られている事に気付く。

 その事について考えようとしたが、寝起きのせいで頭が働かず考えるのを断念し、この状況をどうするのかを先に考える事にした。

 と言っても、取れる選択肢は、起きるかこのまま寝たふりを続けるかの二択しか思い付かなかった。

 どちらを選択しても、気まずい空気になりそうなので、選びかねているとエルマーナさんが動く気配を感じた。

 もしかして部屋を後にするのかと思ったが、エルマーナさんの気配は、扉の方へいかず、クルッとベッドを回って来るように感じた。

 気付かれないよう薄目で確認すると、やっぱりベッドを回って来ていたようで、目の前にエルマーナさんの顔があった。

 そして、エルマーナさんの手が僕の方へと伸びてくる。

 起きているのがバレてしまったのではと薄目を完全に閉じる。

 目を閉じてから少しして、


 プニュ


 と頬をつつかれる。


「ふふ… ぷにぷにですね」


 エルマーナさんは楽し気に優しくツンツンと頬をついてくる。

 僕の頬なんかをついて楽しそうにしてくれるのはいいのだが、やられている身としてはやはり恥ずかしいので、


「あっ…」


 寝返りをうち再びエルマーナさんに背を向ける。

 そして、エルマーナさんが先程の位置に戻った所で今起きたふりをしようと決めかねていた選択を決める。

 じゃないと、寝たふりのままだと同じ事の繰り返しになりそうだし、ベッドの逆側にいたタイミングで起きると、何故そっち側にいたのか聞かないといけず、話がややこしくなりそうだからだ。

 そのまま背を向け待っていると、思った通り、エルマーナさんはベッドを回って元いた位置まで戻ってくる。

 よし、起きようとした所で、


 コンッコンッ


 と扉をノックする音がした。

 起きるタイミングを逃した僕は、再び寝たふりを続けながら、薄目で様子を伺う。


「!? お… お姉様!!」


 慌てた様子のエルマーナさんが振り返り、その先にいた人物を呼んだ。


「エル。ノーリ君1人起こすのにいつまでかかってるのよ」


 グラディウスさんの声音からは、少し呆れた感じが伺えた。

 しかも、それだけでなくエルマーナさんが僕の寝ている部屋にいた理由も判明した。


「あ、いや、その…」


 言い淀むエルマーナさんに、グラディウスさんは、更に言葉を連ねる。


「あ!! エル、貴方もしかして、寝ているノーリ君を襲おうとしたりしてないわよね?」


「ち… 違います!! そんな事していませんし、思ってもません!!」


 エルマーナさんは、グラディウスさんの冗談を声を荒げ否定する。

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