298話・どういう状況?
お姉様から、ノーリさんを呼びに行くよう頼まれた為、後片付けをお2人に任せてから、ノーリさんが寝ているお部屋へと急ぎ向かう。
「すーはー、すーはー…」
扉前に到着した後、すぐ声をかけるのではなく、深呼吸をし一度息を整える。
整え終えた後、
「よし… ノーリさん。エルマーナです。そろそろ夕食が出来るようなので、お呼びに来ました。」
扉の外から声をかける。
だけど、中から返事はなかった。
「あれ? ノーリさん。」
再び声をかけるが、やはり中からの反応がない。
「の… ノーリさん、入りますよ!!」
中で何かあったのではと断りをいれてから、扉を開ける。
中へと入り、すぐさまノーリさんが寝ているベッドへと駆け寄る。
そして、顔を近づけ様子を確認する。
「んん… Zzz…」
ノーリさんは、特に苦しがっている様子もなく気持ち良さそうに寝ていた。
「良かった。普通に寝ているだけのようですね…」
何事もないようで、胸を撫で下ろした。
それじゃあノーリさんを起こそうと、手を伸ばそうとしたのだが、もう少しだけ寝ているノーリさんの事を見ていたいという気持ちが芽生えてしまい、手を止めてしまう。
そして、少しだけと自分に言い聞かせ、そのままベッド横に座り込み、ノーリさんの寝顔を眺める。
「ふふ… 可愛らしい寝顔ですね。」
まだ少しあどけなさが残るノーリさんの顔を見て、自然とそう口にしてしまう。
そのまま眺めていると、
「んん…」
「!?」
ノーリさんが寝返りを打ち、向こうをむいてしまった。
まだ見たりなかった私は、心の中でこっちを向いてくれるよう念を送った。
◆
何か聞こえたような気がして目を覚ます。
「…て。…いて。」
気のせいかと思ったが、やはり後ろから声がする。
何を言っているのか聞く為、耳を澄ます。
「こっちをむいて。」
小声だけどしっかりそう聞こえた。
『確かこの声は…』
声の主が誰なのか気づき、それを確認する為、寝返りを打つと、案の定そこにはエルマーナさんがいた。
「あ、こっちむいてくれた!!」
しかも、何故かベッド横に座り込んで、僕の事を見ていた。
『あ、えっと、どういった状況なんだこれ?』
再び寝返りを打ち、そこにいたエルマーナさんに背を向ける。
どうしてエルマーナさんが部屋の中にいるのか、どうして僕の事をみているのか、次から次へと色々な疑問が浮かんでくるのだが、寝起きの為か脳が上手く働かず、混乱するだけだった。だからもう、思い浮かんだ疑問を頭の端へと追いやり、今この状況をどうするのかを先に考える事にした。
と言っても、起きるかこのまま寝た振りを続けるかの2択しか思い付かなかった。