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297話・苦手

 ナニーさんの放った言葉は、容赦なく私を攻撃し、私の胸に見えない矢が突き刺さったような感じがする。


「あぁ…」


 確かにそうですねと言いたげに、エルが私を見てくる。


「えっとその、料理はあまり得意じゃないから、邪魔しちゃ悪いと思って黙ってただけよ…」


 その視線に、何か答えておかないといけないと思い、そう答える。


「そ… そうでしたね。お姉様は、確か料理が苦手でしたね…」


「グラディウス、その気持ちよく分かるわ。」


 エルはそれに納得し、ラウム様は同意してくれる。


「ふふ…」


 それを見てたナニーさんが堪えきれずに笑いだした。

 私はジロッとナニーさんを睨み付ける。


「ごめんね、ぐーちゃん。私の言い方が悪かったわ。だから許して頂戴。」


 睨み付けられた事に気づいたナニーさんは、自分の顔の前で両手を合わせ、謝ってくる。


「はぁ… 分かりました。許します。」


 睨みはしたが、ナニーさんが何を言いたかったのか何となく理解しているし、そこまで怒っている訳ではないので、すぐ許す。


「ありがとう、ぐーちゃん。じゃあ、私たちは行くから、えっちゃんは、本当に気にしないでゆっくりしててね頂戴ね。」


「はい、分かりました。では、お言葉に甘えさせて貰います。」


「えぇ、そうして頂戴。じゃあ、アリー行きましょうか。」


「畏まりました。」


 ナニーさんは、そのままアリーを連れて部屋を出ていった。


「なら私たちは、もう少し話をしていましょうか。」


「そうですね。では何の話をしましょうか。」


「そうね… なら、これなんてどうかしら。あれはね…」


 その後、3人で会話を楽しんだ。



 ◆



 話が一区切りした所で、


「えっちゃん。そろそろ準備が終わるから、そっちの片付けをお願い。」


 ナニー先生が、戻ってきてお姉様にそう頼まれる。


「はい、分かりました。」


 お姉様は、言われた通り、私たちの飲んでいたカップを片付けようとする。


「あ、お手伝いします。」


 だからそれを手伝おうとするのだが、


「あ、ちょっと待ってエル。ここは、私が手伝うよ。片付けくらいなら私でも出きるからね。」


 ラウムに止められ、そのまま持っていた自分のカップを取られてしまう。


「あ、えっと…」


 やる事がなくなり、どうしようかと思った時に、


「ならエルは、ノーリ君を呼びに行ってくれない?」


 お姉様からそう頼まれる。


「お任せて下さい!! すぐ行ってきますので、後片付けは宜しくお願いします!!」


 私は、片付けをお2人に任せてから、ノーリさんが寝ているお部屋への急ぎ向かう。

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