296話・グサッ
話終えると、フーリッシュの件について、エルが自分のせいと捉えたようなので、私やナニーさん、ラウム様で、しっかり否定しておく。
すると、エルの表情が和らいだ所で、ナニーさんが話を変えてくれたので、すぐその話に乗っかる。
そして、お母さんから渡されていた手紙をエルに手渡す。
「お母様からですか?」
「えぇ、そうよ。お父さんとはちょっと会えなかったからお母さんだけ悪いんだけど、預かってきたの。」
「そうなんですね。ありがとうございます、お姉様。」
「いいのよ別に。それに、いつになるか分からないけど、今度は、お父さんからの手紙も受け取ってくる予定だから待っててね。」
「はい、分かりました。」
エルが先程よりも笑顔になったので、改めて手紙を書いてくれたお母さんに感謝する。
「あ、それでナニーさんには、エルの事をもう少しお願いしたいのですが宜しいですか?」
「自分からやっているんだから、お願いされるような事じゃないけど分かったわ。任せて頂戴。」
「ありがとうございます、ナニーさん。アリーも頼むわね。」
「はい、お任せ下さい。これからも、全身全霊で当たらせて貰います。」
「ありがとう、アリー。」
「私からも、改めて宜しくお願いします、ナニー先生、アリー。」
「えぇ宜しくね、えっちゃん。」
「宜しくお願いします、エルマーナ様。」
私からの話は終わったので、その後はエルから、自分が寝ていた間の事を知りたいと言われたので、エルが気にやまないように、面白おかしくあった事を話してあげた。
◆
私だけでなく、ラウム様もどんな事をされていたのかを話しているうちに時間は過ぎ、
「それじゃあ私は、そろそろえっちゃんの快気祝いの準備をしてくるわね。」
そう言って、ナニーさんが立ち上がった。
「あ、では私もお手伝いします!!」
それに続き、エルも立ち上がる。
「手伝いはいいから、えっちゃんは座って話を続けていて大丈夫よ。」
「え、ですが…」
「えっちゃん。今回の主役はえっちゃんなんだから、座って待ってていいのよ。それに、ほら見てえっちゃん。」
そう言って、ナニーさんは、何故か私を指差してくる。
何故このタイミングで指を指されるのか分からなかったが、口を挟まず様子を伺う。
「お姉様がどうかされたんですか?」
「こういう場合は、普通ぐーちゃんの方が手伝いを申し出る筈なのに、それすらないんだから、えっちゃんが気にする必要はないわ。」
グサッ
「うっ…」
私の胸に見えない矢が突き刺さったような感じがした。




