293話・話 4
グラディウスさんとの転移結晶の話が終わりはしたのだが、先程の僕のあげます発言について、少しの間説教を受けてしまった。
「ふぅ… つい熱くなっちゃったわね。ごめんなさい、ノーリ君。」
説教を終えたタイミングで、申し訳なさそうに謝ってきた。
「あ、いえ。僕の為に言ってくれているのは理解していますから、僕はそんなに気にしていないので、グラディウスさんも気にしないで下さい。」
それに、前にも感じたし、少し恥ずかしくて直接グラディウスさんに伝える事はしないけど、少し懐かしい感じもあるから、本当に気にしていない。
「そう言って貰えると助かるわ。なら、私はこれで失礼する… あれ?」
話も終わったので、部屋を出ようと立ち上がろうとしたグラディウスさんが、立つ途中でピタリと止まった。
「ん? どうかしましたか?」
何かあったのか尋ねる。
「そう言えば何だけど、戻って来てすぐに転移結晶に気をとられて聞くのを忘れてたんだけど、ノーリ君はどうして部屋に1人でいるの? 他の皆はどうしたの?」
どうやら転移結晶に意識がいってしまっていたようで、今更その事について疑問を持ったみたいなので、
「あぁ、その事ですか。他の皆さんは、食べ終えた後の食器を洗ってくれていると思います。僕の方は、少し眠そうにしていたら、皆さんの好意で休ませて貰える事になったんです。そして、部屋に戻って休もうとしていた所に、グラディウスさんがやって来た感じになります。」
皆が何しているのか、僕がどうしてここにいるのかを説明する。
「…そうだったのね。て事は、ノーリ君は今から寝るのよね?」
「まぁ、そうなりますね。」
「そうよね… 寝るのを邪魔しちゃって、本当にごめんね。」
先程謝ったよりも、申し訳なさそうに謝ってくる。
「寝ようとしただけで、寝ていた訳じゃないので、謝らなくても大丈夫ですよ、グラディウスさん。」
「そう、ありがとうね… なら、今度こそ本当に部屋を出ていくから、ゆっくり休んで頂戴。」
「あ、はい。ありがとうございます。」
出ていくグラディウスさんを見送ってから、ベッドに横になる。
「ふぅ…」
転移結晶の事がバレた瞬間はとても焦ったが、何とか乗りきった。
ただ今回は、運良く乗りきっただけだと思うから、アイテムを取り扱う時は、注意しないといけない。
「ふぁ…」
そんな事を考えていたら、バレた焦りから吹っ飛んでいた眠気が再び襲ってきた。
僕は、それに逆らう事なく夢の中へと旅立っていった。