287話・ぷくー
ノーリ君は、大きな声を出し驚きながらも、手に持っていた物を後ろに隠す。
ノーリ君の行動に、内心くすりと笑みを溢しながら、あれが転移結晶で間違いないなと確信しつつ、もう手遅れであることを伝える。
◆
~時は少し遡り~
グラディウスさんのいないなか、昼食が始まった。
昼食の際、帰ってくるのが遅くなった理由を尋ねられたり、朝食時に聞けなかったエルマーナさんたちの話をしたりして昼食を食べ終えた。
そして、食べ終えてすぐ、
「ふぁ…」
大きな欠伸が出た。
先程眠っていのたが、お腹が膨れた事もあってか、再び眠気が襲ってきた。
「ふふ大きい欠伸ね。ノーリ君は、昨日はあまり眠れなかったの?」
僕の欠伸を見たナニーさんがそう尋ねてくる。
"はい、そうです"と正直に答えて、変になにかを勘ぐられても困るので、
「いえ、そんな事ないですよ。たぶん、お腹一杯になったからだと思います。」
そう答えておく。
「そうなのね。なら、片付けは私とアリーでやっておくから休んできていいわよ?」
「あ、いやそれは…」
それは何だか悪いと思い、断ろうとした所で、
「そうですよ、ノーリさん。私もナニー先生たちのお手伝いをしますから、どうぞゆっくり休んでいて下さい!!」
エルマーナさんは、両手を胸の前で力強く握りしめながら、そう言ってくる。
「そ… そう? なら、お言葉に甘えて、部屋で休ませて貰いますね。もし、何か用事がある際はいつでも呼んで下さい。」
ここまで言われて、逆に断るのもよくないと思い、休ませて貰う事にした。
「分かったわ。何かあったら頼ませて貰うわね。」
「はい。その時は任せて下さい。では、これだけ片付けて休ませて貰いますね。」
ささっと自分が食べた分の食器を重ねて、台所まで持っていく。
後ろで、エルマーナさんが何か言ったような気がしたが、流石にこれくらいはさせて貰わないと、申し訳ないので、聞こえないふりをして片付ける。
食器を片してから戻ってくると、ナニーさんらは笑っており、エルマーナさんは、ぷくーと頬を膨らませていた。
「もうノーリさん!! 私が片付けようと思ったのに!!」
「ごめんごめん。流石に全部やって貰うのは悪いと思ったから。」
本気で怒っている訳ではないと思うが、謝っておく。
「全くもう… でも、それがノーリさんらしいですね…」
「ん? 何か言った?」
最後、ボソッと何か言ったような気がした為、聞き返す。
「何でもないです。さ、ノーリさんは休んで下さい。」
「あ、ちょっと、分かったから背中を押さないで。」
エルマーナさんに、背中を押されて、食堂から追い出された。