閑話・フーリッシュ 3
外に出たからといって、私のかけた呪詛が解呪されるとは思わないが、エルマーナが外に出たのか、国に残っているのかどうかくらい知っておいた方がいいと判断し、少し調べてみる事にする。
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調べてみた結果、どうやら城の中にはいないようだった。
それに関係ありそうな話で、帰ってきた娘の話があった。城に入ったのは確認されたのだが、出た形跡がないのに、城の中にいないというものだ。
こうなってくると、予想になるのだが、あるとされている秘密の抜け穴を通り、エルマーナを連れて国から出た可能性が高くなった。
「目的は、やはり私のかけた呪詛の解呪だろう。だが…」
そう呟きながら、実験結果が書かれてあるメモへと目を落とす。
実験結果
・ 単体を呪う事に特化しており、その分複数人にかけるものよりも呪詛の効果が強い。
・ 呪詛の進行速度は、かけた対象によって異なる。ただ、他の呪詛と比べると進行は緩やかである。
・ 呪詛の効果が強い為か、解呪のポーションの効き目はなかった。
・ 回復魔法による解呪も、効き目なし。
・ 第1段階、徐々に起きている時間が短くなる。
第2段階、完全に、目が覚めなくなる。
最終段階、徐々に身体機能が低下し、最後には、心臓が止まる。
「これに書いてある通りなら、解呪はほぼ不可能な筈だ。だが、念には念を入れて、父の二の舞にならないように、対策をしておくか…」
突如として不審死した父の後を継ぎ、バタバタした生活を送っていた。その生活も落ち着いた所で、偶然発見した本棚の仕掛けで、地下の存在を知り、父の不審死した原因を察する事が出来た。
私は、メモを持ったまま、本棚に近寄り、例の仕掛けを作動し、地下へ下りてから、呪詛返し対策の魔道具を身に付けてから、メモを元の位置に戻し上へと戻った。
◆
呪詛対策の魔道具を身に付けてから、早数日が経過した。
「今の所、何もなしか…」
魔道具が反応した様子がない事から、私がかけた呪詛はまだしっかりと継続していると判断出来る。
「ふふっ。やはり、あれが解呪される事はなさそうだな。」
ニヤリと口角を上げながら、私のかけた呪詛は完璧であると自画自賛する。
作者より(捕捉)
フーリッシュの父は、実験目的で呪詛を使用した際に、運悪く呪詛返しを受けてしまい、フーリッシュに様々な事を教える前に、亡くなってしまいました。
そして、運良く地下の存在を知ったフーリッシュは、そこで見つけた父の手記で、父のやっていた事を知りました。
知った後は、誰にも報告せず、今後の自分の役に立つと判断したフーリッシュは、時間がある際に、地下に置かれている物などを自分なりに調べて今に至ります。