閑話・フーリッシュ 1
~時は遡り、とある邸宅~
「クソ!!」
ドンッ
机を叩きつけ、怒りの感情をぶつける。
コンッコンッ
「どうかなされましたか?」
扉をノックし、外に控えていた執事が声をかけてくる。
「何でもない。気にするな!!」
「かしこまりました。何が用がございましたら、いつでもお声かけ下さい。」
「あぁ。」
返事をしてから、椅子に深く腰かける。
「この私が、婚約者として名乗り出たと言うのに、虚仮にしやがって…」
先ほどの事を思いだし、沸々と更に怒りが沸いてくる。
この怒りをどう沈めようか考えているとある名案が思いついた。
私はそっと立ち上がり、扉の外にいる執事に、今から誰も書斎にいれないよう命令する。
執事がその事を伝えに、部屋の前から離れたのを確認してから、本棚へと近づき、ある本を引き抜く。
そして、引き抜いて出来た隙間に手をいれ、その奥にあったボタンを押す。
すると、本棚は静かに横にずれ、扉が現れる。
その扉を開き、すぐ横に開けてあったランプに灯りをともしてから、地下へと続く階段を下りていく。
階段を下りきると、また扉があり、その中へと入っていく。
この部屋は、先々代より集めた様々な物が置かれていたりする。隠すように置いてある事から、普通でない物しか置いていない。
早速、部屋の中を物色していく。
「あったあった。これだ。」
目的の物はすぐ見つかった。
殴り書きで書かれている取り扱い説明書のような物と一緒に、見つけた物をもって、上へと戻ってくる。
本棚を元の位置に戻し、椅子に腰かけ、持ってきた物を改めて確認する。
「さて、これを誰に使うか…」
手元にあるこれは、過去に別の物を使用した時に、たまたま出来た副産物で、複数人に効果を及ぼす事は出来ないが、その分単体を呪うのに適しているようだ。
これをマリク本人に使うのも、それはそれで面白そうではあるが、それよりも、他の奴に使った方が、よりあいつは絶望するだろう。
「となると、あいつの娘のどちらかだな…」
どっちにかけてやろうか考えながら、夜は更けていった。
◆
呪う相手は、エルマーナに決めた。
そして、必要な物を集め終えたので、呪うときがやってきた。
人払いをしてから、1人地下へと降りて、準備をしていく。
準備を終わらせ、呪詛を発動する。
発動した瞬間、確かな手応えを感じた。
「成功だな…」
端から失敗するとは思っていなかったが、無事成功すると達成感があった。
「さて、あいつらはどんな顔をするのだろうね…」
その光景を思い浮かべ、自然と口の端が上がっていた。
作者より(捕捉)
以前、エルフの国で起こった出来事は、フーリッシュの父親がやった出来事になります。
そして、その時に出来た副産物は複数ありましたが、それを試す実験をし、最後に残ったのが、フーリッシュが使った物になります。