閑話・報告
「てか、お母さん。言った事を信じてくれるのは有り難いけど、そもそも娘の事を疑わないでよ。」
少し呆れぎみに、お母さんにそう言ってしまう。
「私やマリクだって疑いたくはなかったわ。でも、このタイミングで貴方が戻ってきたら、何かしら関係があると思ってしまうのは仕方ないわ。それは、自分でも感じているでしょ?」
「いやまぁ、そうかもしれないけどさ…」
リリーの時もそうだったが、納得したくはないが、納得してしまう自分がいる。
「でしょ?」
「でも、それだと私が言った事をそんなに簡単に信じてよかったの?」
「どういうこと?」
「だって、私が嘘ついている可能性もあるじゃない?」
「確かに、その可能性はなくはないでしょうね。でも、グラディウスは嘘をついている訳じゃないんでしょ?」
「まぁ、そうだけど…」
「それに、これでも貴方の母親よ。嘘をついているかどうか見抜く目は持っているつもりよ。それに、グラディウスは、昔はいたずらっ子だったでしょ。だから、それで自然と鍛えられて、よりいっそうグラディウスが嘘をついているかどうか分かるようになったのよ。」
「何か、ごめん…」
今更だけど、迷惑をかけていたなと、自然と謝っていた。
「何で謝るのよ。今は、立派にやってるんだから、胸を張りなさい。」
お母さんは、ニコリと笑いながら、そう言ってくれる。
「うん… ありがとう、お母さん。」
立派だと誉められ、少し照れながらも、お礼の言葉を伝える。
コンッコンッ
「リリーが戻って来たみたいだから、開けてくるね!!」
お母さんの返事を聞かずに、すぐ立ち上がり、扉へむかう。
扉の前で一呼吸おき、
「合言葉を、『森』」
「『エルフ』です。」
鍵を開け、ティーワゴンを押して戻ってきたリリーを中へと招く。
リリーは、中へと入ってこず、私の顔を凝視する。
「どうかしたの、リリー?」
「グラディウス様、顔が少し赤いようですが、どうかなさいましたか?」
「え、な… 何もないわよ。さ、早く入って!!」
「そうですか。分かりました。」
首を傾げるリリーを今度こそ中へと招き入れる。
鍵をかけ、私も自分の席につき、スッと差し出された紅茶を飲み、一息つく。
「じゃあ、そろそろグラディウスが戻ってきた理由を教えてくれる?」
お母さんも、紅茶を一口飲んだ後、私がここに来た理由を聞いてくる。
私は姿勢を正し、お母さんの目をしっかり見ながら、
「はい。結果から言うと、エルマーナの目が覚めました。」
ここに来た理由を報告する。