閑話・事実
誤って、お母さんのネックレスを壊してしまったが、それを隠してすぐにその場を後にした。
あの場には、私以外誰もいなかったから、私がやったとはバレていない筈なのに、どうしてリリーがその事を知っているのか尋ねてみる。
「はて、何の事でしょうか?」
「今リリーが言った事についてよ!!」
惚けるリリーに対し、声を荒げてしまう。
「ネックレスの件の事ですか?」
「そう、それ。どうしてリリーが、あの事を知ってるの?」
改めて尋ねる。
「あの時、グラディウス様は、お気づきになられていないようでしたが、部屋の近くにいて、レジーナ様のお部屋から慌てた様子で飛び出したのを見ていたからですね」
「!?」
確かにあの時は、子供ながらにすぐその場から離れないといけないと思い、周りを確認しないで、慌てて自分の部屋へと戻った記憶がある。
「あれを見てたのね… ん? でも、それだけだと私がやったとは結びつかない筈よね?」
まさか、逃げる所を見られていたとは思わなかったが、それだけだとネックレスを壊した犯人が私であると結びつけるのは難しいと思い、そう聞いてみる。
「確かにそれだけでしたら、ネックレスを隠した犯人が、グラディウス様だと決めつけるのは難しいですね。ですが、グラディウス様が部屋を出ていった時、どうして私がレジーナ様のいない部屋近くにいたと思いますか?」
「え? そう言えばそうね。あ!! もしかして、掃除?」
それだと、私が隠したネックレスが見つかってしまったのも頷ける。
「ハズレです。正解は、レジーナ様の用事で、お部屋の方に用があったからです」
「え? お母さんの用?」
「はい、そうです」
「? それだと、最初の話に戻らない?」
「そうですね。では、レジーナ様の用とは何だと思いますか?」
「分からないわ。もう、いい加減答えを教えて、リリー」
回りくどい話に、少し嫌気がさし、答えを教えてくれるよう頼む。
「分かりました。レジーナ様からは、化粧台の上に置いてあるネックレスを取りにいくよう言われました」
「あー…」
タイミングの悪いお母さんの用事に、この後の展開を察した。
「それで、化粧台の上にネックレスが置いておらず、探した結果、ベッド下の端に隠すように置いていたネックレスを見つけました。それで、慌てて出てこられたグラディウス様と隠すように置いていたネックレスを結びつけ、隠した犯人が、グラディウス様だと判断致しました」
「まぁ、そうなるわよね…」
リリーじゃなくても、少し考えれば分かる内容に、当時の私の行動に呆れる。




