280話・質問
顔を直視する事が出来ず目をそらし、そこで初めてノーリさんに肩を支えられている事に気づいた。
気づいたからか、服越しであるのに、その手の温もりが伝わってくる。
「そう、なら良かった。それで、エルマーナさん、体を起こせる?」
「え、あ、はい!! すみません、すぐに退きます!!」
言われてみれば、今だ私はノーリさんの上にいるのだったと、すぐ体を起こし、横にずれ座り直す。
その際、体を起こすのに、ノーリさんの体に触れてしまったのは、不可抗力である。
ただ、触れてみて初めて気づいたのだが、ノーリさんは、優しげな見た目によらず、かなりがっしりとしていた。
◆
今度は、エルマーナさんの肩をしっかりと支えた。
今一度、大丈夫かどうかを確認し、無事を確認できたので、とりあえず僕自身、この体勢のままだとかなり恥ずかしいので、動いて貰うよう声をかける。
エルマーナさんは、慌てた様子で体を起こし、横にずれてくれたので、僕も体を起こし、座り直した。
「の… ノーリさん。度々、ご迷惑をかけてしまい、すみません。それに、助けて下さり、ありがとうございました。」
エルマーナさんは、今度は、座ったまま頭を下げてくる。
「エルマーナさん。今助けられたのは、たまたまですから、何度も言うようですが、そんなに気にしない… 「たまたまでも、助けて貰った事には変わりありません!! それに、そのお陰で私は怪我1つ負ってないのですから、やはりお礼を言うのは当然の事です!!」
僕が言い終わる前に、エルマーナさんは、言葉を被せてくる。
「…恐れ入ります。」
口にはしないが、やはりエルマーナさんは、少し頑固な性格だなと密かに思いながら、今度は僕の方が、軽くペコリと頭を下げる。
「じゃあ、話を元に戻しましょうか?」
そして、顔を上げ、この話を掘り返させないように、話を進める。
「あ、そうでした。ただその前に、少しお聞きしたい事があるのですがいいですか?」
エルマーナさんは、未だに顔を少し染めつつ、何故か、僕から少し視線をそらしながら、そう聞いてきた。
先程のあれがエルマーナさんも恥ずかしいのだろうと自己完結し、
「構いませんよ。何ですか?」
その質問を尋ねる。
「ノーリさんは、どうして私を助けた事を隠しているんですか?」
「その事ですか…」
まぁ、聞きたい事と言われた時、それを聞かれるんじゃないかなと思っていたが、案の定それを聞いてきた。
「それは…」
ラウムさんにも話した内容をエルマーナさんにも伝える。




