279話・赤くなる顔
以前、ラウムと話していた場所で、今度はノーリさんと一緒に座る。
ノーリさんの指摘した通り、肩と肩がぶつかってしまい、自然と体温が上昇するのを感じる。
そちらの方に注意がいかないように気を付けながら、話を切り出してくれたノーリさんの質問に答え、あまり時間をとらせるのも悪いので、すぐに本題に入った。
それに対し、ノーリさんは否定するが、私がそう思い至った理由を話すと、今度は認めてくれた。
私は、ノーリさんにぶつからないように気を付けながら立ち上がり、感謝の意を示し、お礼をする事を伝える。
だけどノーリさんは、あの時同様に、助けた事をひけらかす事なくそれを断ってしまう。
やっぱり、この人があの人である事を強く感じながら、私の方も、強引だとは思うけど、本当に感謝している為、こればかりは折れる訳にはいかない。
だから、再度お礼をする事を伝えると、渋々といった感じで、ノーリさんの方が折れてくれた。
内心、ホッとしながら、座るよう言われたので、そうしようとした所で、足元を滑らせてしまい、ノーリさんの方へと倒れ込んでしまう。
ノーリさんが、倒れる私を受け止めようとしてくれたが、間に合わずに、ノーリさん共々倒れ込んでしまった。
私はすぐに、反射的に閉じてしまっていた目を開き、状況の確認をしようとした所で、口に触れる柔らかな感触と目の前にあるノーリさんの顔に驚き、顔が熱くなるのを感じる。
しかも、どういう訳か、ノーリさんの腕が私の腰へと回っており、ギュッと抱き締められているせいで、ノーリさんの胸に手を置き、顔を少し上げる事しか出来なかった。
更に顔が熱くなってしまいながら、腰に回っていた手がほどけていくのも感じ、少し残念な気持ちが沸き上がる。
「エルマーナさん、大丈夫ですか? 怪我などはしてないですか?」
ノーリさんより話しかけられたが、別の事を考えていたせいで、よく聞き取れず、言葉をつまらせながらも、どうしたのか尋ねる。
優しいノーリさんは、私の怪我の有無を聞いてくれた事に、温かい気持ちになりつつも、大丈夫である事を伝えたが、顔が赤くなっている事を指摘され、私は咄嗟に顔を隠そうとしてしまう。
だけど、支えていた手を動かしたせいで、体勢を崩してしまい、またしても目を閉じてしまう。
「大丈夫ですか?」
恐る恐る目を開くと、目と鼻の先にノーリさんの顔があった。
「え、あ、だ… 大丈夫です…」
顔を直視する事が出来ず目をそらし、そこで初めてノーリさんに肩を支えられている事に気づいた。




