278話・赤い顔
嬉しげな表情のまま、何故か急にその場に立ち上がり出す。
「助けて下さり、本当にありがとうございました!!」」
いったいどうしたのかと聞く前に、立ち上がったエルマーナさんは、僕に深々と頭を下げてきた。
「ですから是非、ノーリさんに、お礼をさせて下さい!!」
チラッと顔をあげたかと思ったら、そう言いながら、再び頭を下げる。
「頭を上げて、エルマーナさん。僕が勝手にやった事なんだから。それに、お礼が欲しくてやった訳じゃないから、そこまで気にしないでもいいよ。」
そう言ってみたのだが、
「それでも、助けて頂いた事に変わりはありません。だから、どうかお礼をさせて下さい!!」
エルマーナさんの意思が固いようで、頭を上げる事なく、全く譲る気はないようなので、
「分かりました。何かしらのお礼は受けとりますから、とりあえず、座って話しませんか?」
僕の方が折れる事にした。
理由としては、王女様であるエルマーナさんに、これ以上頭を下げさせ続けるのが悪いと思うし、狭いこの場で、これ以上エルマーナさんの顔が近い事が恥ずかしいという気持ちもあったからだ。
「はい、分かりました。」
僕が折れた事で、今度は話を聞いてくれた。
顔が離れた事で、ホッとしたのもつかの間、
「きゃ!!」
座ろうとしたエルマーナさんから悲鳴があがり、何があったのか確認しようとした瞬間、エルマーナさんが僕の方へと倒れてくる。
咄嗟の事で、受け止めようと行動に移す事までは出来たが、結局受け止める事が出来ず、更に、踏ん張る事も出来なかった為、そのまま一緒に倒れ込んでしまう。
「いててて… エルマーナさんは、大丈夫ですか?」
打ちつけた頭をさすりながら、エルマーナさんの安否を確認するが、
「・・・」
何故か返答がなかった。
「エルマーナさん?」
再度声をかけつつ、エルマーナさんの様子を伺うと、すぐ目の前にエルマーナさんの顔があり、その顔は、真っ赤に染まっていた。
「エルマーナさん、大丈夫ですか? 怪我などはしてないですか?」
視線を少しそらしながら、三度確認すると、体を起こし、
「え、あ、ど… どうかされましたか、ノーリさん?」
吃りながらも、今度は反応があった。
「? いやだから、怪我とかはしてないですか?」
「け… 怪我ですか? だ… 大丈夫です!!」
「本当? 顔が赤くなってるけど?」
そう教えると、
「え、赤く…」
エルマーナさんは、バッと自分の体重を支えていた手を離したせいで、体勢が崩れてしまうが、今度はしっかりと肩を支える。