275話・肩
帰りも、行きと同様に話をしながら戻る。
花畑に差し掛かった所で、
「の… ノーリさん。もう少しだけ、私とお話しませんか?」
そうエルマーナさんが言ってきた。
「僕と話を?」
「は… はい!!」
ライアさんに食事は運び終えたし、この後の予定も特にないので、
「構わないよ。」
と了承する。
「ありがとうございます、ノーリさん!!」
「気にしないで、エルマーナさん。じゃあ、早く戻ろうか?」
もう少しで帰りつくから、戻ってから話すものと思い、そう言ったのだが、
「あ… あの、あちらの方に、座って話せる場所があるので、そこで話をしませんか?」
エルマーナさんの指差す方を見てみると、確かに座れそうな場所があった。
「もしかして、あそこ?」
「は… はい!!」
だけどそこは、肩を寄あって、2人がギリギリ座れそうな広さしかないように見える。
「えっと、あそこだと、肩があたりそうだけど、大丈夫?」
「え… あっ!!」
エルマーナさんは、今頃気づいたのか、顔を真っ赤にさせる。
だけど、エルマーナさんは、そのまま、
「わ… 私なら、だ… 大丈夫です…」
吃りながらも、そう言われる。
「…そっか。なら、行こうか。」
僕の方も、少し恥ずかしいが、エルマーナさんがいいのならいいかと、声をかける。
「はい、行きましょう。行きましょう!!」
顔がまだほんのり赤いようだが、あまり見られたくないからか、エルマーナさんが、先に歩き出した。
僕もすぐその後に続き、着いたところで、
「お… お先にどうぞ!!」
先に座るよう勧められたので、
「じ… じゃあ、座らせて貰うね。」
座り込み、横にずれる。
「で… では、し… 失礼します!!」
少し声を上ずらせながら、エルマーナさんも腰掛ける。
すると、案の定、肩と肩がぶつかってしまう。
肩に意識がいかないよう、気を紛らわす為に、僕から話しかける。
「そ… そう言えば、どうしてこんな綺麗な花畑に、こんな場所があるの?」
「あぁ、それは、私がまだ寝込む前の事になるんですが、ラウムとここにあった花を植え替えて、天気のいい日に、ここで話をしてたんです。」
「へぇ、そうなんだ。」
「はい。だから、久しぶりにここで話をしたいなぁと思いまして… 後、ノーリさんと2人きりで、聞きたい事もありましたので。」
「僕に聞きたい事? なんですか?」
「えっと…」
エルマーナさんは、そこで一呼吸置いてから、先程のほんのり赤い顔から一変、とても真剣な表情で、
「ノーリさんって、夜中に私を助けてくれた人ですよね?」
そう聞いてきた。