270話・涙の理由
僕は、エルマーナさんの方へと体をむける。
「だから、エルマーナさん。僕と友達になってくれないかな?」
誰かからのお願いなんかじゃない、僕の本心からの気持ちを伝える。
「・・・」
あれ?
エルマーナさんからの返答がない。
もしかして、聞こえていなかったのかともう一度口にしようとした所で、エルマーナさんの目から涙が溢れる。
「どうしました、エルマーナさん。大丈夫ですか!!」
突然の事で、僕は慌ててしまう。
「だ… 大丈夫です。すみません、突然泣いてしまって…」
「あ、いえ、それはいいんですが、いったいどうしたんですか? あ、もしかして、僕と友達になるの嫌だったり… 「そんな事ありません!!」」
もしかしてと言った事に対し、エルマーナさんは食いぎみで否定してくれる。
それに対して、内心、ホッとするが、
「では、いったいどうしたんですか?」
それなら、何故涙を流すのか理由が分からなかったから、聞いてみる。
「ノーリ君。エルは、たぶん嬉しくて泣いているのよ。」
僕の問いに、エルマーナさんではなく、グラディウスさんが答えてくれる。
それが本当なら、僕としても嬉しい。
だから、答えてくれたグラディウスさんから、エルマーナさんへと視線を移すと、まだ少し目元を濡らしたままのエルマーナさんと目が合い、今度は顔を少し赤くしながら、こくりと頷いた。
今の一連の行為で、グラディウスさんが言った事が本当であったと思うと同時に、少し大袈裟ではないかとも思ってしまう。
「そんな事で泣くなんて大袈裟じゃないかって顔をしてるわね、ノーリ君。」
「えっと、その…」
内心を当てられ、ドキッとしてしまう。
「実を言うと、さっき、エルには友達が少ないと言ったけど、私の知っている範囲では、エルに友達と呼べる相手は、ラウム様しかいないの。」
言葉に詰まった事に対し、何か言われる事はなく、突然、グラディウスさんがそう言い出す。
「ノーリ君は、エルフの出生状況については知ってる?」
「エルフの出生状況ですか?」
またしても話が変わり、グラディウスさんが何を言いたいのか分からないが、
「確か、長寿種であるエルフは、そこまで子供を作らないと見た覚えがあります。」
一応聞かれた事に答える。
「その通りよ。だから、私の時は、リーベがいたけど、エルの時は、運悪く、身近な所では誰も生まれなかったの。まぁ、それだけのせいと言う訳じゃないけど、そんな訳で、エルからしたら、友達が出来ると言うのは、それ程の事なの。」
「そうだったんですね…」
大袈裟じゃないかと思った自分が、いかに浅い考えだったと少し後悔する。