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268話・もう1つのお願い

 エルマーナ様からのお願いは、敬語を止めてほしいという、本当に難しいお願いではなかった。だけど、何と答えていいか分からなかったので、グラディウスさんに視線をむける。

 すると、ニヤニヤしながらこちらを見ているグラディウスさんと目が合い、そのニヤニヤ顔のまま、


「ノーリ君。私からも、お願いしてもいいかな?」


 グラディウスさんも、そう言われる。


「僕なんかがいいんでしょうか?」


「構わないと思うわよ。ね、エルマーナ?」


「はい、構いません!! ですから、お願いします、ノーリさん。」


 本人が良いと言うのならと、


「分かり… いや、分かったよ。」


 了承する。


「ありがとうございます、ノーリさん!!」


 僕がそう言うと、エルマーナさんは、先程の不安げな顔からとびきりの笑顔へ変わる。

 それを見ただけでも、了承して良かったと思えた。


「ありがとう、ノーリ君。後私からも、1つお願いしたい事があるんだけどいい?」


「グラディウスさんからもですか?」


 このタイミングで、何かお願いされるような事があったかなと考えるが、特に思い浮かばなかった。


「私からのお願いも、とても簡単な事よ。」


「簡単な事ですか… いったい何なんですか?」


 グラディウスさんは、簡単な事だと言うが、ニヤニヤ顔はそのままだったので、少し嫌な予感を感じながら、何のお願いなのかを聞いてみる。


「ノーリ君。エルマーナと友達になってくれないかな?」


 そう言った瞬間、


「お… お姉様!!」


 もの凄い早さで、グラディウスさんの方をむきながら、エルマーナさんが声を出すが、


「ほら、今は私とノーリ君が話しているんだから、エルマーナは、少し黙っててね。」


 そう言って、エルマーナさんを静かにさせ、


「それで、ノーリ君どうかな? エルマーナと友達になってくれるかな?」


 もう一度聞いてきたグラディウスさんは、先程のニヤニヤ顔から一変し、その顔からは真剣さが伺えた。

 何で、そんな事を頼むのか分からなかったので、一応理由を聞いてみる。


「理由を聞いてもいいですか?」


「構わないわ。理由は、エルマーナの友達が少ないからだね。それが、姉として心配だから、信用しているノーリ君に是非エルマーナの友達になってほしいの。」


 真剣さは変わらないが、その目には、エルマーナさんに対しての慈愛や優しさが伺える。


「そうなんですね…」


 友達が少ないか…

 確か、シャーロットも自分の身分のせいで、交友関係の構築に苦労していたと聞いた事があるから、エルマーナさんも、同じ理由だろうと予想出来た。

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