267話・普通に
エルマーナ様に頭を上げて貰い、僕も自己紹介し、エルマーナ様に習って、今度は僕が頭を下げる。
「はい、ノーリ様ですね。よろしくお願いします。それで、ノーリ様も頭をお上げ下さい。」
「分かりました。こちらこそ、よろしくお願いします。それで、紹介が終わってすぐで申し訳ないのですが、お1つお願いしたい事があるのですが、宜しいですか?」
「はい、何でしょうか!! 何でも仰って下さい!!」
エルマーナ様は、先程よりも声を上げ、距離をつめてきた。
しかも、何故か僕の手を握りしめながら。
「あの、えっと…」
突然の事で驚いた僕は、お願いを口に出来ずに、掴まれている自分の手に目がいってしまう。
エルマーナ様は、不思議そうに首を傾げた後、僕の視線が下にいっているのに気付いたのか、僕と同じように、視線を下に下げる。
「!?」
自分がしていた事に気付いたのか、エルマーナ様は、顔を真っ赤にしながら、バッと手を離した。
「す… すみません!! 私ったら、突然…」
「あ… いえ、少し驚いただけですから、気にしないで下さい。」
「…分かりました。それで、ノーリ様。お願いとは何なのでしょうか?」
「えっと、それです。」
「それ、ですか? いったいどれの事なんでしょうか?」
やはり、それだけだと伝わらなかったので、詳しく話す。
「エルマーナ様は、僕の事を様と呼んでいますよね?」
「はい。」
「僕は、様と呼ばれるような人ではないですし、そのような呼ばれ方されると少し恥ずかしいので、出来れば、普通に呼んでくれませんか?」
「そ… 事… のに…」
「あの、何か言われましたか?」
何か言われたような気がしたが、よく聞き取れなかったので、聞き返す。
「あ、いえ、何でもありません。それで、様呼びですが、人を呼ぶ際の私の癖みたいなものなので、大丈夫です。では、これからは、ノーリさんと呼ばせて貰っても宜しいですか?。」
「はい、大丈夫です。お願いを聞いてくれて、ありがとうございます。」
「いえ、お礼を言われるほどの事ではありません。ただ私からも、お願いしたい事があるのですが、宜しいですか?」
「お願いですか? 僕が出来る事なら構いませんが、いったいどのようなお願いなんでしょうか?」
「そこまで難しい事ではありません。ただ、私と話す際に、敬語を止めてくれませんか?」
「敬語をですか?」
エルマーナ様からのお願いは、本当に難しい事ではなかったが、何と答えていいか分からなかったので、グラディウスさんに視線をむける。